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対面式が終わると、各クラスごとに自教室へと戻る。あの部活発表の後、しばらく生徒がその話題で持ちきりだったのは言うまでもない。現に今も、同じクラスの生徒達がそれについて話し合っている最中だった。うん、いいね。アオハルって感じ!


入部希望の紙が全員に配られ、そのままお昼の時間になった。提出期限は来週までなのか、まだ少し余裕がある。そのまま紙を丁寧に折り畳んで鞄に入れると、反対に今朝、母親から渡された弁当の包みを引っ掴んだ。そう、今日の俺が一番楽しみにしていた、雫ちゃんとのランチの時間がとうとうやってきたのだ!!


ルンルン気分で雫ちゃんの元へ向かおうと踵を返した時、クラスの中を伺うような形でこちらを覗き込む雫ちゃんと目が合う。あ、俺に向かって手振ってる。

俺は慌てて雫ちゃんの元へ駆け寄った。




「雫さん、もういらっしゃってたんですね」


「うん、昨日来てもらったから、今日は私から来ちゃった!」


お弁当を持って立っている雫ちゃんが笑い掛けてくれる。

あ~、今日も可愛いな~。癒されるな~。

全身にマイナスイオンを感じる。



「すみません、わざわざ来て頂いてしまって」


「ううん、今日まだ一回も伊織ちゃんと会えてなかったから…私が早く会いたくて」


我儘でごめんね、と笑いながら言われてしまった。…えっと、これ天然でやってるんですよね?冗談とかじゃないですよね?!




そろそろと2人で歩き始めると、俺は「暖かいですし、今日は中庭で食べませんか」と提案してみた。外の方が解放感あって良いよね。テーブルや椅子もある事を教えると、雫ちゃんも快く賛成してくれた。



移動の時に見た噴水は、近くで見ると中々迫力があって圧倒されてしまう。近くには芝生も植えられていて、その上で食事をしている生徒もいれば、テーブルで食事をしている生徒もいる。やっぱり中庭は人気スポットのようだ。

俺達は日差しのキツくない場所を探して、椅子に座った。



「あ、伊織ちゃんもお弁当なんだね」


「はい、母の手作りが一番好きなので」


包みを開き、小ぶりな二段の弁当箱を分けて置くと、それを見た雫ちゃんが問いかけてきた。弁当はやっぱり少数派なのかな?

雫ちゃんの弁当箱も大体俺と同じくらいで、ウサギ柄が可愛い黄色の弁当箱だ。



そのまま2人とも両手を合わせ「頂きます」と呟く。




「伊織ちゃんのお弁当、彩りが凄く綺麗!お母さん、とってもお料理上手なんだね」


「はい、母は料理がとても上手なんです。でも、雫さんのお弁当だってバランスが良くて見た目も綺麗ですよ」


「本当? 有難う! 私、自分で作ってるからとっても嬉しいな」



ええ、ソレは知っていましたよ、勿論。ゲームの中でお弁当渡すイベント何度かあるからね!

知ってたけど、やっぱり本当に上手なんだな。そりゃあもう、こんなに可愛いくてその上料理上手なんて、引く手あまたなのも頷けるってもんだよ。



「そうだったんですか? 学業もこなしながら、その上お料理まで……素晴らしいです」


「えへへ、照れちゃうなあ……あ、そうだ!伊織ちゃん、何かおかず交換しない?」



お弁当といえば、ですよね! 待ってました!!

一大イベント”おかず交換の儀” これより執り行いたいと思います。

男同士ではほぼ無いと言っても過言ではない、女子特有イベントだ。


まさか、そっちから提案してくれるとはね、有難い限りですよ全く。

俺は嬉しくなり「い、良いのですか?」と前のめり気味に聞いてしまったが、雫ちゃんは特に気にも留めず「全然良いよ!」と答えてくれた。


じゃ、じゃあ……。


「私、卵焼きが好きなので、い、頂いても宜しいですか?」


自分で言うのもなんだが、ちょっと気持ち悪い感じに聞いてしまった。ごめん、嬉しさを押さえきれなかった…。

雫ちゃんは天使なので、これまた全然気にしてなかったけど。「それじゃあ私はアスパラ炒め貰ってもいい?」なんて聞いてくれてる。全然構いません!有難う!


俺は弁当箱の蓋にその卵焼きを慎重に置いてもらった。

ゴクリ。

緊張して、喉が大きく上下する。し、雫ちゃんの手料理。ダメだ、手が震えてきた。

俺は震える手で箸を持ち、卵焼きを掴もうとしたその時だった――。





「こんな所にいたのか」






俺と雫ちゃんのテーブルに、一つの影が伸びる。

何だろう、凄く嫌な予感がする。ゾワリとした悪寒が一瞬で背中を駆け抜けた。

本気で見たくなかったが、恐る恐るその陰の主を見上げると……。







「昨日ぶりだな、西原伊織」


ニヤ、と悪魔のような笑みを携えた、天逢坂が立っていた。









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