表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

その時だった。

骸骨が四方八方から竹に貫かれたのは。

「えっ?」

何が起きたのかわからないシャオ。

あれほど、制することすら難しくなっていた結界がいつの間にか消えていた。

代わりに、竹が骸骨にとどめを刺したようだった。

骸骨が切り伏せた竹の幹。完全に上下真っ二つの切り口を見せたそれが、急に伸びたのだった。

まっすぐ伸びていたはずの竹の幹が骸骨に向かって、その背丈を曲げる。

無理矢理な姿をとがめられたように、無数の竹がしなり、笹の雨を降らせる。

ぽかん、とシャオはその様を眺めていて。

骸骨の行方を目でおった。

骸骨は宙に吊り下げられていた。無数の竹に胴を貫かれながら、肋骨の内側に潜り込んだそれが、隙間をぬってまた外へと飛び出していていると思えば、骨盤の隙間も竹が貫く。

タロットカードにでも出てきそうな、吊り下げられた姿。

ぶらり、ぶらりと揺られる姿は、滑稽を通り越して哀れみさえ覚えるようだ。

「決着がついたみたいね」

そう言いながら、シャオは冷や汗をかいていた。

植物が急に成長するとは予想しなかった。

さらに、それが幹を切り払った骸骨にとどめを刺すように、伸びたことも。

「どう? 串刺しにされた気分は」

鬱々と生い茂る竹林で、己が切り伏せた竹の幹によって胴体を串刺しにされた骸骨。

戒めから抜け出そうともがく。が、骨の隙間にねじ込まれた竹から逃れることはできない。肉を失った、骨格だけの身体がただむなしく、がちゃがちゃと煩わしい音を立てる。

空っぽの眼窩がシャオを見下ろす。その表情から感情を読み取ることはできない。

「喋れたら、恨みつらみでも吐き捨てていた?」

ぐったりと関節がはずれたかのように垂れ落ちた腕。

それでも、刀を取り落とすことはない。

重みからなのか、意志なのか、ゆらゆらと刀が円を描いている。

落ちくぼんだ眼窩にこれでもかと目を凝らし、空っぽの頭蓋骨の中身を見つめる。

がちがちと震わす顎関節の音に耳を澄ます。

「さて、これからどうしようかしらね?」

囁くようにいった言葉も、空っぽの頭蓋を通り越して消えゆくだけなのだけれど。

「向こうでやってたみたいに、払うこともできるのだけれども」

肉が削げ落ち、骨だけとなった怨念に伝わる言葉などない。

吐き出した空気が眼窩を通り、いつかどこかで拡散されるだけ。

最近流行り始めた機械と同じで、感情がない。

ただ、同じ行動を、同じ理由をあてもなく繰り返すだけの何かに成り下がっただけ。

「様子見、も面白いかもしれない。どちらにせよ、ここの力にくくりつけられたのだから、あなた自身の力ではもう、どうすることもできない。仮に逃れたとして、力尽きた体力で、私の呪符を破ることもできないでしょう?」

がちがちと、骨を震わせていた骸骨が静かになる。空っぽの眼がシャオに向けられ続けている。

「怨念はずっと怨念のままなのかしらね。永遠に続く、恨みもずっと興味深いけれど」

シャオは自然と笑みを浮かべていた。「人の感情はいつまで保ち続けるのか?永遠に消え去ることがないのか? それは私もとてもとても興味があるから」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ