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「まさか」
シャオは、おもわず母国語を呟いて、口元を抑える。
「無策でやってきたとか、思っていないよね」
鼻先につけられた切っ先を前にして、にやりと笑う。
「まっ、こうなった時点で考えることをやめたのだから、こうなることも予想できないようね」
呪符に囲まれた骸骨。
僅かにうまれた隙間を縫って、伸ばした凶刃でさえ皮膚一枚切り裂くことはあたわない。
「観念することね。もう、万事休すでしよ?」
骨にも、まとった布地ですら、呪符は触れていない。
それでも、骸骨は動かない。動けない。
「流石は、と褒めたくはないけれど」
彼女の父親が日本政府から受け取ったこの土地。
どんな手をつかったのかは分からないが、得体の知れない者が地面の下でうごめくような気配が常にしている。
異邦人のシャオは、知ることがない。
ここが、かつて、国を2つに分かつほどの勢力が血で血を洗うような血なまぐさい争いで成り立っていたところであることを。穢れ果てたような、手もつけられない土地を持て余した新政府が、得体の知れない者ガイジンに二束三文で売り払ったことなど。
「土地の力を使わせてもらったわ。そりゃ、あなたみたいな怨念が凝るようなものを平気でうろつかせているようなところだもの、これくらいの力があっても当然よね」
結界術。生え揃った竹を支えにして、呪符を張り巡らせ、骸骨を囲む。シャオの合図一つで、効力を発揮させて、骸骨をはめたのだ。あとは、結界の効力を狭め、強度をあげるだけ。
骸骨に触れることもないため、燃やし尽くされることもない。
印を構えた手を崩さず、骸骨を睨むシャオ。
一通りの技は習得したが、集中を強めなければ上手くいかない。
本土にいたとき、彼女が苦手としていた術なのだから。
いまも、足元からこみ上げてくる力をどうにか制することに集中している。
結界が狭まるに連れて、骸骨がきしむ音がする。
見えない圧力が骸骨を蝕んでいる。術が効いている証だった。
みしみしと、音を立て、空っぽの眼窩がシャオはを見据える。
刀身が徐々に揺れていく。
涼しかったよるが熱くなる。シャオの身体が熱を持つ。
(??)
シャオは違和感を持つ。どうにも、土地からもらう力が強まっているような気がするのだ。作り上げた結界が予想以上の力を持ち、骸骨を締め上げるかのようだ。
(このままじゃ…)
呪符に骸骨が触れたら、一瞬で灰になる。そうしたら、今までの苦労は水の泡。触れるか触れないかの距離で押さえ込もうとしていた彼女の目論見が一気に崩れる。
とはいえ、行使した術がすぐに止まるわけもない。
込めた力を緩められるわけでなく、引きづられていくようだ。
こんなこと、上海ではなかったのに。
手綱を振り払った結界が、シャオ一人ではどうにもならなくなっていく。




