始まり
(また…あの時の夢か…)
(あの時からもう何回も見てるな…)
(一目惚れか…我ながら恥ずかしい…)
黒髪の少年――「秋峰陽」は大きなため息を吐く。
「お兄ちゃん!起きてるんでしょ!今日から新学期でしょ!」
「分かってる!すぐ用意するって!」
(そう、今日から新学期か)
(ま、いつも通りだろうけど…)
いつも通り過ごせるかな?
「…何かこのナレーションうざいな」
「お兄ちゃん、早くしてよ!ご飯冷めちゃうよ!」
少年は怒られた。
「(イラッ)まぁいいや…下行こ…」
文句を言いながらもボサボサの頭を掻きながら、一階に降りていく。
一階のダイニングに向かうと美味しそうな料理がテーブルの上に置かれている。
「あ、お兄ちゃんやっと起きたんだね?」
「おう」
「じゃあ早く朝食済ませて、支度してね」
「わかってる」
このしっかり者の少女は智海。
小学生のくせに俺よりもしっかりしてる。
テーブルの上の料理を口の中に運ぶ。
料理も俺より美味いしな。
「あー、ちょっと!ちゃんといただきますって言った!?」
「ひたたきまふ」
「んもー!」
そんないつものやり取りをしながら、食事を済ませる。
「食器そのままでいいから、着替えてきて」
「へいへーい」
二階に上がり、自室に戻り、制服に着替える。
ネクタイを締め、鞄の中にキューブを入れたことを確認する。
キューブとはなにか。ま、その内わかるさ。
鏡に向かい最終チェック。
「ネクタイ大丈夫だよな?」
誰に聞いてるんだ。
「自分に確認してんだよ!」
陽は何かに向かって叫んだ。
「…はぁ…」
陽は大きなため息をして、鞄を手に取って部屋を出た。
そのまま、階段を降り、玄関を勢いよく…
「あだっ!」
開られずに頭をぶつけ…ぷふっ!
「笑うな!」
鍵を開けて…くくっ…玄関を…出よう…ぷっ…とした。
「笑いこらえてんじゃねぇ!まったく…」
「いつまでも一人言してないでよ、早く行かないと遅刻しちゃうよ!?」
「へいへーい、行ってきますよ」
act:通学路
家から出て数分後…
「ふぁ~ぁ…」
大きな欠伸をしながら、変わり映えのしない通学路を歩いて学校へと向かう。
「おーっす、陽!」
「ぐはっ!」
誰かにタックルされて、大きく吹っ飛ばされて地面とキスをする羽目に…
「おいおい、このくらいで吹っ飛ぶなんて弱いな~。足腰ちゃんと鍛えてんのか?」
このタックルした少女は…
「なにすんだよ!このバカ鍵!」
…そう、この少女は…
「なにって…、朝の挨拶?」
…
「地面とキスさせることが挨拶かよ!痛い挨拶だな!」
「滅多にできる挨拶じゃなくてよかったな!」
「確かに……、ってそうじゃないだろ!」
今だ!
このポジティブで元気な少女は「東雲鍵」。
男のような名前で男らしい喋り方だが、彼女は女だ。間違いなく。
尚、この二人は幼なじみである。仲は…悪くないはず。
「陽は朝から元気だな~」
「誰のせいだよ!」
「誰のせい……?もしかしてあたしのおかげなのか!?いや~、照れるな~!」
「褒めてねぇし、照れんな!はぁ、まったく……お前と居ると疲れるな…」
「あっはっはっは!そうがっかりすんなって~!」
act:同時刻―通学路5km後方
「…!あいつが近くにいる!」
「えっ、ちょ……ちょっと!どこに行くんですか!?」




