1/10
プロローグ
妖怪は、人を喰う。
だから斬る。
白姫は、それだけを教えられて育った。
夜の路地裏。
妖怪の死体が転がっている。
猪みたいな顔に、人間の腕が何本も生えた異形。
さっきまで暴れていた。
でも今は動かない。
死んだからだ。
白姫は、自分の腕についた血をぼんやり見ていた。
「さすが半妖だな」
役人の男が言う。
「普通の人間なら死んでいた」
周囲の人間たちは、白姫から少し距離を取っていた。
怖がっている。
白姫はその理由が分からない。
妖怪を斬ったのに。
役に立ったのに。
男は白姫を見る。
「次の任務だ」
白姫は静かに顔を上げた。
「深川の森に、西洋妖怪が現れた」
その瞬間。
白姫はまだ知らなかった。
その妖怪と出会った時。
自分が“独りだった”ことを、初めて知ることになる。




