48ー燃える街
俺達は、森の中を歩いていた。
「シャル、イリー大丈夫か?」
『うん、なんとかね』
「もう少しで森を抜けられるそれまで頑張ってくれ」
2人が頷いたのを確認したのち、探知を使いながら森を歩いていく。暗闇の中、森のざわめきが聴こえる…
3時間前くらいであろう…
俺達はギルドにて報酬を貰い、宿に帰った。シャルとイリーは治療を受けて歩けるようになったのだが、体力までは回復できないし、何よりも疲れていたので他の冒険者達から飲みに誘われたが、断って宿で寝る事にしたのだ。
結果としてこれが良かったというのはわからないが、俺は真夜中に目を覚ました。
何故?目が覚めたのか、それは危険回避スキルが発動したのだ、俺は部屋を確認したが特に異常も見られない、なんなんだ?と窓を開けて外を見てみた時、その異常さが確認できた。
街が燃えていたのだ。北側の方面が燃えている。
魔物が攻めてきたのか?と思い、とにかく部屋を飛び出し、隣のシャルとイリーの部屋に飛び込んだ。
「シャル!イリー!起きろ!」シャルを揺さぶり起こす。
「ハヤミ〜今日は疲れているから寝せておくれよ」シャルはまだ寝ぼけているのでイリーも揺する。
「ん〜ハヤミ、私を抱きたくなった?ん〜まだ心の準備ができてないからダメ」イリーは勘違いしている。
「2人とも!頼む!起きてくれ!街が大変なんだ!」2人を再度揺さぶると流石にわかったのか起きてくれた。
「どうしたんだい?こんな真夜中に」
「なんだ?シャルも一緒に寝るのかい?」
「2人とも聞いてくれ!街が燃えている!準備をしてくれ、時間がない」
『街が燃えてる?』
「原因はわからないが、昨日の今日だ、街の防衛能力は著しく落ちている、そこを狙われたかもしれない」
「わかったよ、ハヤミ、準備するから待ってて」シャルがイリーを急かしながら動き始めた。
それを見て、俺も戻って準備をする。情報が足りない今、急ぐ必要を感じていた。火事の規模はわからないが、この時代での火事は延焼が早いと思ったのだ。
「ハヤミ、出来たよ」2人は準備を終えて部屋から出てきた。
「行こう」俺達は階段おり、宿屋の主人に話をした。
「ご主人、北側で火災が起きています、ここまで火災が来るかはわかりませんが、逃げるよう準備をしたほうがいいと思います、俺達は原因を探ってきます」
「北側で火災?気づかなかったな、鐘の音が鳴らない訳がないのだが…とにかくありがとう」主人はそのまま他の部屋の人を起こしに行った。
「シャル!火災が起きると鐘を鳴らすのか?」
「そうだよ、火災を知らせる鐘は時間に関係なく鳴らすからね」
「そうか…」俺は火の手が上がっている北側を見ながら呟いた。
「空が赤い、本当に火災が起きてるんだね」イリーはシャルに抱きついて言っている。
「2人とも聞いてくれ!この火災が起きた原因はわからないが、この街は危険だ、俺は街を出ようと思っている、ついてきてくれないか?」
「街を出るだって?火災の原因を調べるんじゃないのかい?」
「私は、ハヤミについていくわ」
「シャル!だいぶこの辺も騒がしくなってきた、みんなが起き始めたんだろう、火災現場に俺達が行って役に立つかわからないし、火災というのは火が怖いんじゃない!煙が怖いんだ、空があれ程、赤くなっている現場に向かうのは自殺行為だと思う…わかって貰えないか?」
「…わかったよ、どうするんだい?」
「すまない、住人が通常避難するなら、東か西か、どっちかな?」
「両方いくと思うよ」
「じゃ南は?」
「南は行かないと思うよ、魔物も多いし、そもそも行っても街はないからね」
「そうだよな、じゃ南門からでよう」
「なんでそれを聞いて南から出るの?」
「南は混乱してないと思ったからだよ、東と西は避難する人々でごった返しているはずだ、それでは街の中で死んでしまう。」
「そういう事ね、冷静だね」
「うんうん、ハヤミについていくわ」
「とにかく、街を出ることを優先する、南門に行こう」
『あいよ』
途中で避難する人々とすれ違う、やはり西か東の方向を目指しているようだ。しかし昨日の非常事態の件があったといえ、本来鳴るはずの鐘が鳴らないのは腑に落ちなかった。何かおかしい、魔物が攻めてきたとしてもこの街には現在、騎士団も在中しているんだ、相当な事がなければどうにかなるはずだ。
となると相当な事があったと見るほうが自然に見える、内容はわからないが、この街は危険の事は確かだ。
考えながら歩いていると南門に着いた。
南門は、門番もいない状況だった。おそらく北側の空を見て誰も連絡をよこさないので見に行ったのであろう。
俺達は大きな門ではなく、その隣の小さな門を開けて外に出た。
南門の周辺は、まだ血の匂いが立ち込めていて、ついさっきまで戦っていたのだなと今日の戦闘が蘇る。
「出れたけどどうするんだい?」シャルは不安そうな顔をしていた。
「ここからは、出てくる奴は全て敵だと思ってくれ、俺が先頭で進むから2人とも着いてきてくれ」
『了解』
暗闇の中、歩いていく。ゴブリンの死体の山が周りに幾つもある。
俺は探知をしながら南の森に歩いていったが森の近くに探知が引っかかる。
「警戒しろ、探知に反応が2ある」
俺は腰の剣を抜き、両隣にシャルとイリーがつく。夜に弓は撃てないからね、この探知の動きは魔物じゃないなと思いつつ腰をかがめて探知に近くの死体の山に近づく。
「誰だ?」山の向かうから声がかかる。
「冒険者ですけど、こんなところに何故いるんです?」俺はそう答える。
「冒険者?何故この時間に街を出ている?」探知に反応がある。こちらに向かってきている。
「こちらの質問に先に答えて貰いたいのですが?」2人の兵士の姿を確認出来た。
「やかましい!こちらの質問が先だ!」兵士の1人が怒鳴った。
「わかりました。依頼を受けたんですよ、騎士団からね、聞いてませんか?兵士さん」
2人の兵士は顔を合わせてこう言った。
「俺らは騎士団の部隊ではないのでな、それでなんの依頼を受けたんだ?」
兵士は俺達が剣を抜いているのが気になるのか、腰の剣の柄を持ちながら聞いてくる。
俺は兵士の反応を見ながらこう言った。
「街の周りに怪しい奴らがいないか確かめてくれと言われたんですよ」
兵士の2人は俺の言葉に剣を抜いて反応した。
「シャル!イリー!」
2人はその兵士の動きを受けて素早く反応していた。イリーが大剣を横に薙ぎはらうと兵士は剣で受け止めたに見えたが、剣ごと兵士の腹まで刺さっている。
シャルの方は低い姿勢から剣を上に放つと兵士が反応できずに両手が宙に飛んだ。兵士はそのまま仰向けに倒れたがシャルは冷静にトドメを刺して動かなくなった。
「2人ともお疲れ様」シャルとイリーをねぎらい、死んだ兵士を見てみる。
月明かりでハッキリとは見えないが、兵士がきている鎧はこの辺りで見かける鎧とは形が違うように見える。
「何者だい?こいつら」
「こいつら、オーランド王国の兵士じゃないよ、シェラード王国のもんだね」イリーは兵士の鎧についている紋章を見て教えてくれた。
「シェラード王国は20年前に滅んだはずなんだけど…」
「ハヤミ、よく敵だと気付いたね」シャルは兵士の死体をゴブリンの死体の山に放り投げて言った。
「いや、剣を抜くまでわからなかったんだよ、だからそう動いてくれるように誘導したんだけどね、これで今回の火災の原因がハッキリよ、この街はシェラードという滅んだ国に攻められている事がね」
「街に戻って教えなきゃ!」シャルが街を見ている。
「ダメだ!ここが南門だから見張りの兵士がこれだけだったんだ、街に戻るのは危険すぎるし、多分、もう間に合わないと思う…」
バンガードの街の火災の状況が先ほどよりも激しく燃えているのが確認出来た。街からは悲鳴のような音や色々な音が聞こえ始めていた。
「ここはできるだけ街から離れるしかない、急ごう!敵は近くにまだいるかもしれない」
2人は、街を見るのをやめて俺の後をついてきた。
月明かりに、俺達の歩いている影が映る。その影を覆うように暗闇がかかった。
バンガードの街が燃えている。
その煙が月まで届くのではないかと思うほど、空高くまで登っていた。
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