47ー防衛戦2
「何故?魔法が…」片目男が呟く。
確かに魔法が飛んでくるのは不自然だった。ゴブリン共に魔法が使えるのならば幾らでも使う機会があったはずだし、ゴブリン共に魔法が使える情報は入ってなかった。
思案中も、ゴブリンキングとサザンの戦いは、続いていた。
サザンがキングの剣を抑えていたのだが、キングが咆哮をあげると剣が炎を纏うようになった。その影響か、キングの剣を抑え込む事ができずにサザンが距離をとった。
「これはいかん!」片目男が弓を捨て、腰の剣を抜きながらサザンの元に走っていく。
その様子を見ながら、俺は魔法を放ったと思われる人物を探し始めていた。
探知を使い、魔力の大きい奴を探したのだ。前方のキングとサザンは極めて大きく分かりやすかったが、その他はバラツキがあり、特定は出来ない。
周りの戦闘音が激しさを増す中、俺はまだ魔法を使った人物の特定をしている。それは、この戦闘におけるキーマンがそいつだと思ったからに他ならない。キングを倒せば勝利なのだが、キングのサポートをしている人物を倒さなければ、あのキングに勝てる気がしなかった。
片目男がキングとの戦闘に参加したおかげで、2対1での戦いになっているが、炎の剣で戦っているキングが優勢に見える。
キングは、炎の纏った剣を振り回し、サザンを釘付けし、片目男を誘う動きを見せる。キングの周りで戦っていた冒険者達は、親衛隊らしきゴブリンをいなしてはいたが、徐々に捕まり始めて均衡が破れそうのなっていた。弓での援護でかろうじて持っている状況だ。
その様子がわかっているサザンと片目男はサザンが、突撃という形で行動に移した。
サザンがキングの剣を鍔迫り合いの形に強引に持っていく、サザンからは、皮が焼ける匂いが立ち込め始める。その横を片目男が抜けながらキングの腹に一閃した。キングからは血が噴き出すが、致命傷になっていない。片目男はキングの背後から再度、斬りこむそぶりを見せた時、探知の反応が大きくあった。
俺はその方向を向き、弓で標準を合わせた。そいつは、ゴブリンだった。
正確には、ゴブリン共が担いでいる人間だった。昔、戦国時代に黒田官兵衛が戦場に出た際、担がれているようなものに乗っている。何故、今迄わかなかったんだと思ったが、そいつは普段は下に降ろされて隠れているのだろう。どうでもいいが、兎に角、標的を見つけた。俺は迷わず矢を放つ。
魔法の行使中は、集中力がいるのだろう、矢が飛んできている事に気づく事もなく、俺の矢がそいつの腹に刺さる。そいつは、驚いた表情でこちらを向いたが、再度キングの方向に魔法を放った!
俺はキングの方を見る事もなく、再度、そいつに矢を放つ!その矢は、そいつの肩に深々と刺さり、体制を崩したのか、担がれていた板から落ちた。その様子を見て、キングの方を確認した。
その様子は、何とも言えない状態だった…
既に片目男の姿を確認する事はできず、サザンは片手を失って立っているのがやっとの状態に見える。
キングは勝ちを確信したのか、サザンに近寄り、剣を振り落とす。サザンはその剣をまともに受け、肩口から入り、胸の辺りで止まった。
「勝てないのか…」俺はその様子をみて負けを確信したのだが…
サザンは、その状態で剣を掲げたのだ。「何を?」と思った時、その剣に稲妻が疾る!
サザンが持っていた剣から稲妻が疾り、サザンとキングは凄い光を発していた、その光が収まったとき、誰かが「援軍だ!騎士団がきた!」と声が聞こえる。
サザンとキングの状態はわからないが、あれ程、統制がとれていたゴブリン共の動きが鈍っている、鈍るというより、混乱状態に陥っている、前に前にと来ていたゴブリンが、左右前後に移動し始めるものだから、収集がつかなくなっていた。そこに騎士団が突撃をかけてきた!冒険者達も騎士団の出現に士気が上がり、追随し、残党狩りの様子を見せ始めた。
サザンとキングは黒焦げになった状態で立っている。それを見て、「ギルド長のおかげで勝てたもんだな…」と俺は呟いた。
そのあとは騎士団が残党狩りをし、冒険者達は負傷者を街に担ぎこみ、治療を優先している。俺も戻った。
夕日が差し込む頃には、今回の戦闘の内容がわかってきた。内容は冒険者達の損失率が実に40%を超えていたのだ、ギルド長のサザンを始め、サザンのパーティーメンバーだった片目男を含め、4人全員が死亡。
盾部隊はおよそ半分死亡、全員負傷と今回の戦闘の激しさを表していた。
その内容を聞いて、シャルとイリーが心配だったが、2人とも負傷はしていたが、歩ける状態だったので、安堵した。
「シャル、イリー、良く無事だったね、本当に良かった!」俺は座り込んでいる2人を見て抱きついてしまった。
「なんだい、ハヤミにしては大胆だね〜」とシャル
「ゴブリンはしばらく見たくないわ」とイリー
「兎に角、無事で良かった、立てるかい?」2人は立つのが辛そうだった為、片腕ずつ貸して真ん中で2人を支えながらギルドに向かった。
ギルド内では、スタッフが忙しく動いている、騎士団の代表の方らしき人達が、スタッフに指示を出していた。
「騎士団にいいとこ取られちゃったね〜」イリーはそういったが、正直、騎士団があのタイミングで来なければ冒険者達は全滅していたのではないかと思う。
「イリー、素直になれって、街が守れたんだからさ〜」と俺は諌めた。
「わかってるわよ…ただ、ギルド長の事を考えるとね…もっと早く来てもらいたかったの…」
「そうだな…」
ギルド内の椅子に座って、待っていると続々と冒険者達がギルドに帰って来ていた。
全員とはいかないが、ある程度戻ったと判断したのであろう、騎士団の代表が、声を上げた。
「冒険者達、諸君!、君達のお陰でこの街は魔物から守られた!本当に感謝する、ありがとう!」
ギルド内にいる騎士団全員が頭を下げた。
「騎士団さん、やめてくれよ〜俺らは冒険者だ、当然なことをしただけだぜ、なあみんな〜」陽気な男が、冒険者達に向かってそう言うと『おうよ!』と声を出す。
「そういって貰えると助かる、今回の戦闘は本当に激戦だった、生き残れなかった者達には哀悼の意を示し、祈るとしよう。戦闘の経緯はおよそ聞いているが、ゴブリンが魔法を使ったと聞いた!これについてわかる奴がいたら教えてくれ!」
俺は、手を上げ、説明した。
魔法を使ったのは、ゴブリンを操っていた人間である事、そいつに矢を放ち、負傷させたが、死んだかは確認できていない、そいつの顔は覚えているので確認はできる事などだ。
「そうか、ありがとう、テイマーの可能性があるが、正直わからないな、君!明日で構わないから、もう一度、話を聞かせてくれ!」
「わかりました」
その後、報酬の話になり、南門の防衛に当たった冒険者は1人辺り、金貨1枚という報酬を貰う事になった、これが高いのか、安いのかはわからないが生きて帰れたという事で冒険者達は全員満足な表情をしていたのが印象的だった。
代表の話だとゴブリンの総数は約2000匹位いたらしく、現在でも騎士団が殲滅活動を行っていて夜まで出来る限り討伐するということだ、キングは、ギルド長のサザンが掲げた剣に向けて集中魔法と言う殲滅魔法を撃ったらしい、それがあの稲妻のような魔法だった訳だ。最後の切り札だったと魔法部隊の方々が言っていた。
それぞれ報酬を貰い、宿に帰宅しようとしている際、先程の騎士団の代表が「明日、頼むな」と声をかけてきた。
「はい!明日、朝一番で伺いますよ」
と答えたのだが、
その騎士団の代表に会う事は、もうない事を俺はまだ知らない。
字誤・脱字 お許しください。
・殲滅魔法
魔法陣を使っての魔法行使、複数人の魔術師が必要とされている。




