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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第65話 悪役令嬢、朝食の席で恋人だと全員に見抜かれます

恋人になった翌朝。


私は人生最大級の緊張とともに、朝食会場の扉の前に立っていた。


理由は明白である。


昨夜、私はアルフレッドと恋人になった。


つまり今日から、顔を合わせれば昨日までとは違う。


……何がどう違うのか自分でも分からないが、とにかく違うのだ。


「アメリア様、大丈夫ですか?」


侍女ミラが心配そうに覗き込む。


「だ、大丈夫です」


「顔色が大丈夫ではありません」


やめてほしい。


私は深呼吸をして、朝食会場へ入った。


長いテーブルには、すでに王妃様と国王陛下、ルシアンが着席している。


そして、その隣にはアルフレッド。


目が合った。


……終わった。


胸がうるさく鳴る。


「おはようございます」


なんとか挨拶すると、王妃様がにっこり笑った。


「おはよう、アメリアさん。今日はずいぶん可愛らしい顔色ね」


「え?」


「真っ赤で」


ぶふっ、とルシアンが吹き出した。


「母上、朝から飛ばしすぎ!」


「だって分かりやすすぎるのですもの」


私はその場で消えたくなった。


国王陛下は紅茶を飲みながら苦笑している。


「若い者はよいな」


「陛下まで!?」


思わず声が出た。


アルフレッドは平然と席についている。


なぜこの人だけ平気なのだ。


「アメリア、こちらへ座れ」


彼が当然のように自分の隣の席を引いた。


ざわり、と空気が揺れた気がした。


そこ、昨日まで私の席ではない。


「え、ですが……」


「恋人だろう」


静かに爆弾を落とさないでほしい。


王妃様が扇子で口元を隠しながら震えている。


ルシアンは机を叩いて笑っていた。


「兄上、言ったー!」


私は視界が白くなりながら席に着いた。


アルフレッドの隣。


近い。


近すぎる。


「では朝食を」


料理長の合図で料理が並べられる。


焼きたてのパン、卵料理、野菜のスープ、果物の盛り合わせ。


いつもなら落ち着く香りなのに、今日は味がしそうにない。


「アメリア」


「は、はい」


「ジャムを取ってくれ」


手を伸ばす。


同時に彼の手も伸び、指先が触れた。


びくっと肩が跳ねた。


「……騒がしいな」


「誰のせいですか!」


小声で抗議すると、彼は少しだけ口元を上げた。


笑った。


この人、楽しんでいる。


王妃様が満面の笑みでこちらを見る。


「昨夜はどちらでお話しされていたの?」


「っ……!」


「鐘楼です!」


ルシアンが元気よく答えた。


「ルシアン!」


「途中から聞いてた!」


「最悪です!」


王妃様が椅子にもたれて笑い出した。


国王陛下まで肩を震わせている。


「なるほど。鐘楼か」


「父上まで面白がらないでください」


アルフレッドだけが淡々とパンを切っていた。


そして何事もないように言う。


「次は庭園だ」


私はパンを落としかけた。


「次!?」


「返事をもらった場所だ」


「皆さまの前で言わないでください!」


「事実だ」


そうだが。


そうだが恥ずかしい。


朝食会場は完全にお祭り騒ぎだった。


やがて王妃様が満足そうに頷く。


「よろしい。今夜はお祝いです」


「何のお祝いですか」


「決まっているでしょう?」


扇子がぱたりと開く。


「王宮公認、恋人誕生祝いです」


嫌な予感しかしない。


アルフレッドは小さくため息をついた。


「母上、騒ぎすぎです」


「あなたが二十年近く恋愛に興味を示さなかったのが悪いのです」


言い返せず黙る王子を初めて見た。


私は思わず吹き出してしまう。


その瞬間、アルフレッドがこちらを見た。


柔らかい視線だった。


「……笑っている方がいい」


また心臓が跳ねる。


本当にこの人は油断ならない。


こうして悪役令嬢は、恋人になった翌朝――朝食の席で全員に見抜かれ、王宮中へ噂が広がっていくのだった。

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