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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第64話 冷徹王子、庭園で返事を聞いて固まります

その日の夕方。


私は王宮庭園の小道を、何度も深呼吸しながら歩いていた。


昨日は告白された側。


今日は返事をする側。


たったそれだけで足が震える。


「落ち着いて、私……」


落ち着けるわけがない。


好きだと言われた。


しかも相手はアルフレッドだ。


冷徹王子で、完璧で、でも不器用で、たまにずるい人。


……好きにならない方が難しい。


噴水のそばまで来ると、彼はもう待っていた。


夕暮れの光の中、背筋を伸ばして立つ姿は相変わらず絵画のようだ。


私に気づくと、静かに視線を向ける。


「来たか」


「お待たせいたしました」


「いや」


短い返事。


だが、どこか落ち着かないようにも見える。


珍しい。


私は彼の前まで歩き、止まった。


沈黙。


噴水の水音だけが響く。


何か言わなければ。


でも言葉が全部飛んでいく。


「……昨夜は」


やっと声が出た。


「その、逃げてしまって申し訳ありません」


「気にしていない」


「嘘です」


「……少しは気にした」


正直だった。


私は思わず笑ってしまう。


すると彼は眉を寄せた。


「笑うな」


「すみません」


「謝るな」


忙しい人だ。


緊張が少しだけほどけた。


私はぎゅっと手を握りしめる。


「殿下」


「何だ」


「私、ずっと自分のことばかりでした」


彼は黙って聞いている。


「悪役令嬢と呼ばれた過去も、婚約破棄されたことも、厨房で生きることも……それで精一杯で」


喉が少し震える。


「誰かを好きになるなんて、考えたこともありませんでした」


本音だった。


彼に会うまでは。


「でも」


私は顔を上げる。


真っ直ぐに彼を見る。


「殿下がいる朝は、少し楽しみで」


彼の目がわずかに揺れる。


「厨房へ来ない日は、落ち着かなくて」


一歩、彼が近づいた。


「他の方との婚約話を聞いた時……すごく嫌でした」


そこで私は、ようやく笑った。


「それで分かりました」


心臓がうるさい。


でも、もう逃げたくない。


「私も、殿下が好きです」


風が止まった気がした。


アルフレッドは動かない。


瞬きもしない。


まるで時が止まったように固まっていた。


「……殿下?」


返事がない。


「聞こえておりますか?」


反応なし。


私は慌てて手を振った。


その瞬間、彼は私の手首をそっと掴んだ。


「もう一度」


低い声だった。


「……はい?」


「今の言葉を、もう一度言え」


そんな無茶な。


「い、嫌です」


「なぜだ」


「恥ずかしいからです!」


「私も言った」


確かに言った。


ずるい。


私は真っ赤になりながら視線を逸らした。


すると彼は珍しく少し焦ったように言う。


「……今のは夢ではないな?」


私は吹き出してしまった。


「夢ではありません」


「本当に?」


「本当です」


すると彼はゆっくり息を吐き、額に手を当てた。


「……そうか」


「殿下?」


「少し待て」


「何をですか」


「嬉しすぎて、うまく立てない」


私は目を丸くした。


あのアルフレッドが。


冷徹王子が。


嬉しすぎて固まっていたらしい。


次の瞬間、思わず笑ってしまった私を、彼はむっとした顔で見た。


「笑うな」


「無理です」


「……お前のせいだ」


そう言いながらも、彼は確かに嬉しそうだった。


やがてそっと私の手を取り、指を絡める。


「これで、お前は私の恋人だ」


「言い方が強引です」


「嫌か」


「……嫌ではありません」


すると彼は初めて、安心したように微笑んだ。


その笑顔に、今度は私が固まる番だった。


こうして冷徹王子は、返事を聞いて固まり――そしてついに、恋人になったのだった。

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