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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第58話 悪役令嬢、王妃様に恋の作戦会議へ呼び出されます

朝食の騒動から一時間後。


私は厨房で生地をこねながら、まだ落ち着かない心をどうにか誤魔化していた。


『他の男に笑いすぎるな』


……思い出してはいけない。


手元の生地に力が入りすぎる。


「アメリア、それはパンか? 武器か?」


料理長の冷静な指摘が飛んだ。


「すみません」


「今日はやたらと生地が怯えてるぞ」


そんなこと言われても困る。


その時、厨房の扉が開いた。


現れたのは王妃付き侍女のミラだった。


「アメリア様」


「ミラさん?」


「王妃様がお呼びです」


嫌な予感しかしない。


「……何のご用件でしょうか」


「とても楽しそうなお顔で“恋の作戦会議よ”と」


帰りたい。


料理長が即座に言った。


「行ってこい」


「助けてください」


「無理だ」


裏切られた。


私は観念して王妃様の私室へ向かった。


扉を開けると、そこには優雅にお茶を楽しむ王妃セレナの姿。


そして机の上には何故か大量の紙束が並んでいた。


「いらっしゃい、アメリア」


「失礼いたします……」


「座ってちょうだい」


笑顔が美しい。


そして怖い。


私は恐る恐る席についた。


「さて」


王妃様は一枚の紙を持ち上げる。


「これは何だと思う?」


見れば、見覚えのない文字がずらりと並んでいる。


「……名簿、ですか?」


「お見合い候補者一覧よ」


私は紅茶を吹きかけた。


「誰のですか!?」


「もちろんアルフレッドの」


心臓に悪い。


王妃様は涼しい顔で続ける。


「各貴族家や他国から、昔から山のように届いているの」


「はあ……」


「でも本人が全部断っているわ」


少しだけ安心してしまった自分が悔しい。


「ですが、なぜ私にそれを?」


王妃様はにっこり笑った。


「嫉妬は恋の自覚を早めるからよ」


帰りたい(二回目)。


「今朝の様子、とても良かったわ」


「よ、良くありません!」


「近衛騎士を睨みつけるアルフレッド、最高だったもの」


見ていたのか。


「そこで相談よ」


嫌な言い方だった。


「今度、庭園でお茶会を開くわ」


「はい」


「若い騎士や文官も何人か呼ぶ予定よ」


「はい……?」


「アメリアにも参加してもらうわ」


「嫌です!」


即答してしまった。


王妃様は楽しそうに笑う。


「大丈夫よ。ただのお茶会ですもの」


絶対ただではない。


「殿下も来られるのですか?」


「もちろん」


終わった。


「母として、息子の感情表現を育てたいの」


「教育方針がおかしいです」


すると王妃様は少しだけ真面目な顔になった。


「アメリア」


「……はい」


「あの子は昔から、欲しいものを欲しいと言えない子だった」


私は黙る。


「王子として、立場を優先してきたの。だから今、自分の気持ちに戸惑っている」


その言葉は、胸に静かに落ちた。


確かにアルフレッドは、いつも言葉が足りない。


でも不器用なだけで、優しさは誰より分かりやすい。


王妃様はふっと微笑む。


「だから少しだけ、背中を押してあげたいのよ」


私は視線を落とした。


「……私で、いいのでしょうか」


「あなた以外、だめよ」


即答だった。


ずるい。


私は観念してため息をつく。


「お茶会、参加いたします」


「ありがとう」


王妃様は満足そうに頷いた。


その時、扉の外から声がした。


「母上、いるか」


アルフレッドだ。


王妃様の目がきらりと光る。


「ミラ、入れてちょうだい」


「かしこまりました」


私は逃げようと立ち上がった。


「座りなさい」


「はい」


終わった(三回目)。


扉が開き、アルフレッドが入ってくる。


彼は私を見るなり眉をひそめた。


「……なぜここにいる」


「恋の作戦会議です」


私がやけになって答えると、王妃様が吹き出した。


アルフレッドの耳が、みるみる赤くなっていく。


こうして悪役令嬢は、王妃様の手によって新たな騒動へ巻き込まれていくのだった。

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