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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第57話 冷徹王子、朝食の席で嫉妬を隠せません

その日の朝食の席。


私はいつも以上に落ち着かなかった。


理由は明白である。


――厨房でのあの一言だ。


『私がいる』


思い出すたびに顔が熱くなる。


しかも料理人全員の前で言う必要がどこにあったのか。


私はトレイを持ちながら、小さくため息をついた。


本日の朝食は、焼きたての丸パン、季節野菜のスープ、卵料理、果物の盛り合わせ。


完璧だ。


……私の心以外は。


食堂の扉を開けると、既に王族たちが揃っていた。


王妃セレナは優雅に紅茶を飲み、ルシアンは何かを企んでいそうな笑顔でこちらを見ている。


そしてアルフレッドは、いつも通り無表情で席についていた。


耳までいつも通りだ。

少し残念である。


「おはようございます」


私が一礼すると、王妃様がすぐに微笑んだ。


「おはよう、アメリア。今日は頬が赤いわね」


「気のせいです」


「厨房が朝から賑やかだったと聞いたけれど?」


情報が早い。


「誰からですか」


「全員から」


終わった。


ルシアンが身を乗り出す。


「兄上、聞いたよ! ついに“私がいる”って言ったんだって?」


「ルシアン」


「何?」


「黙れ」


今日も通常運転である。


私は急いで配膳を始めた。


この話題を終わらせたい。


「スープをどうぞ」


アルフレッドの前へ器を置こうとした、その時。


「アメリアさん!」


明るい声が食堂へ響いた。


振り向くと、若い騎士が立っていた。


最近配属された近衛騎士、レオンだ。


真面目で爽やか、礼儀正しい青年である。


「厨房長から、追加のパンを預かりました!」


「あ、ありがとうございます」


彼はにこっと笑う。


「今日のパン、すごくいい香りですね。あとで私の分も残っていますか?」


「ええ、もちろんです」


「やった!」


爽やかだ。


とても爽やかだ。


……食堂の温度が急に下がった気がした。


視線を感じる。


ゆっくり振り向くと、アルフレッドがレオンを見ていた。


氷点下の目で。


「……誰だ」


低い。


怖い。


レオンは背筋を伸ばした。


「し、失礼いたしました! 近衛騎士レオンです!」


「用件は終わったな」


「は、はい!」


「なら戻れ」


「はい!!」


レオンは風のような速さで去っていった。


すごい退場だった。


ルシアンが肩を震わせて笑っている。


「兄上、今の顔すごかったよ」


「何のことだ」


「嫉妬の顔」


「違う」


王妃様も扇子で口元を隠しながら楽しそうだ。


「まあ。近衛騎士にまで焼いてしまうなんて」


「母上」


「何かしら?」


「黙っていてください」


今日は全方向に強い。


私はパン籠を持ったまま固まっていた。


「……殿下」


「何だ」


「今、怒っていましたか?」


「別に」


「でもレオン様に」


「別に」


「目が怖かったです」


「気のせいだ」


絶対違う。


私は少し考えてから、焼きたての小さなパンを一つ皿へ載せ、彼の前に置いた。


「これは何だ」


「機嫌直しです」


「悪くない」


即答だった。


ルシアンが吹き出す。


「兄上ちょろい!」


「黙れ」


王妃様が笑う。


私はつい笑ってしまった。


アルフレッドはパンを一口食べ、少しだけ表情を緩める。


そして誰にも聞こえないほど小さな声で言った。


「……他の男に笑いすぎるな」


私は目を見開く。


「え?」


「何でもない」


もう遅い。


しっかり聞こえた。


顔が熱くなる私を見て、王妃様は満足そうに紅茶を飲んでいた。


こうして冷徹王子は、朝食の席でも嫉妬を全く隠せていなかったのだった。

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