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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第54話 悪役令嬢、城中の噂と妹の急接近に驚かされます

夕暮れ。


私たちを乗せた馬車は、王城の裏門へ静かに到着した。


市場の賑わいが遠ざかり、見慣れた石壁と庭園の景色へ戻ってくる。


……なのに、胸の鼓動だけはまだ落ち着かない。


原因は明白だった。


髪飾り。

鐘楼。

手を繋いだままの帰り道。


思い出すだけで顔が熱い。


「降りるぞ」


アルフレッドが先に馬車を降り、当然のように手を差し出す。


「自分で降りられます」


「知っている」


「ではなぜ」


「出せと言われた気がした」


意味が分からない。


私は小さくため息をつき、その手を取った。


温かい。


悔しい。


裏門をくぐった瞬間――妙な静けさに気づいた。


使用人たちが並んでいる。


侍女も侍従も、庭師までいる。


全員、にこにこしていた。


嫌な予感しかしない。


「……お帰りなさいませ!」


一斉に声が揃う。


私はびくっと肩を跳ねさせた。


「な、何事ですか」


ミラが最前列から一歩進み出る。


「お忍び外出、いかがでしたか?」


「なぜ知っているの」


「王妃様が昼食時に全員へお知らせくださいました」


「なぜそんなことを!?」


アルフレッドが深くため息をつく。


「母上……」


完全に仕組まれていた。


侍女たちの視線が私の髪飾りの包みへ集まる。


「まあっ」


「贈り物ですって!」


「殿下、ついに!」


「違います!」


即座に否定したが、誰も聞いていない。


その時、奥から明るい笑い声が響いた。


「おかえりー!」


ルシアンだった。


その隣には――セシリア。


二人並んで焼き菓子を食べている。


私は固まった。


「……何してるの?」


セシリアがにこにこ笑う。


「お茶していました」


ルシアンも満面の笑みだ。


「妹ちゃん、面白い!」


「妹ちゃん言わないでくださいませ」


と言いながら、既に仲が良い。


どういうことだ。


「お姉様たちが外出されている間、第二王子殿下が城内をご案内してくださいましたの」


「勝手に“デート帰りの二人を待とう会”もしたよ!」


「何その会」


聞きたくなかった。


ルシアンは胸を張る。


「僕たち、兄上とアメリアを全力応援する同盟を結んだから!」


「結んでません」


「結びましたわ」


セシリアが真顔で頷いた。


妹よ。


裏切りが早い。


アルフレッドが額を押さえる。


「ルシアン、お前は暇なのか」


「今日は忙しかったよ? 兄上たちの進展予想で」


「黙れ」


一喝された。


だが全く効いていない。


セシリアが私へ近寄り、小声で囁く。


「お姉様」


「な、何」


「鐘楼の鐘、城まで聞こえました」


私は停止した。


「……え?」


ミラがにっこり微笑む。


「ええ、とても大きな音で」


侍女たちが一斉に頷く。


終わった。


完全に終わった。


私は顔を覆う。


「違うの、あれは景色を見るためで」


「鐘を?」


セシリアの追撃が鋭い。


「二人で?」


ミラまで乗ってきた。


「やめてください……」


穴があれば入りたい。


その横でアルフレッドだけは無表情を貫いていた。


……耳が赤いが。


ルシアンがにやにやしながら兄へ言う。


「兄上、次は指輪?」


「黙れ」


「次は正式交際宣言?」


「黙れ」


「次は結婚式?」


「黙れ!!」


本日最大音量だった。


城中に笑い声が広がる。


私は恥ずかしさで溶けそうになりながら、それでも少しだけ笑ってしまう。


帰る場所が、こんなにも賑やかで温かいなんて。


こうして悪役令嬢は、城中の噂と――いつの間にか妹まで味方につけた第二王子に、完全包囲されるのだった。

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