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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第43話 悪役令嬢、王子の婚約宣言未遂に心臓がもちません

二曲続けて踊らされた後。


私は大広間の隅で、半分ほど魂が抜けていた。


「……疲れました」


「体力不足だ」


「殿下が連続で連れ回したからです」


「誉れと思え」


横暴にもほどがある。


私は椅子に腰かけ、扇子でぱたぱたと風を送った。


セシリアが心配そうに覗き込む。


「お姉様、お水を……!」


「ありがとう、セシリア」


本当に天使である。


その時、場内にざわめきが走った。


赤い絨毯の先、玉座前に国王陛下が立ち上がったのだ。


堂々たる威厳。

鋭い眼光。

それでいてどこか豪放な笑み。


王国の頂点に立つ人。


「皆、楽しんでおるか!」


低く響く声が広間を包む。


貴族たちが一斉に礼を取った。


私も慌てて立ち上がる。


陛下は満足そうに頷き、ふとこちらを見た。


嫌な予感がした。


とても嫌な予感である。


「今宵、最も目を引く者がいるな!」


やめてください。


「我が愚息アルフレッドと――」


やめてください!


「その隣に立つアメリア嬢だ!」


会場の視線が一斉に刺さる。


逃げたい。


床になりたい。


アルフレッドは無表情を装っているが、耳が少し赤い。


陛下は豪快に笑った。


「見事な舞であった! 余も若ければ奪っていたぞ!」


「父上」


アルフレッドの声が低い。


「冗談だ!」


絶対半分本気である。


王妃セレナが扇子で笑いを隠している。


共犯だ。


陛下はさらに声を張った。


「アメリア嬢!」


「は、はい!」


条件反射で返事をしてしまった。


「そなた、我が家に来ぬか!」


会場が凍った。


私も凍った。


父も母も凍った。


セシリアだけ「きゃあ……!」と頬を押さえている。


陛下は満面の笑みで続ける。


「料理良し、気立て良し、度胸も良し! これほどの娘、王家に欲しい!」


「父上」


アルフレッドの声がさらに低くなる。


危険信号である。


「な、何だ」


「それ以上はおやめください」


会場中がざわつく。


第一王子が国王を止めた。


陛下は面白そうに目を細めた。


「ほう?」


「……本人の意思もあります」


「ふむ」


「軽々しく口にすべきことではありません」


立派な正論である。


だが耳は真っ赤だ。


陛下はにやりと笑った。


「では、お前が正式に言えばよかろう」


「父上」


「まだ言っておらぬのだろう?」


私は固まった。


え?


何を?


アルフレッドまで固まった。


珍しいものを見た。


王妃が扇子の陰で肩を震わせている。


ルシアンは腹を抱えて笑っていた。


「兄上まだなんだー!」


「ルシアン」


「ひっ」


いつもの流れである。


陛下は満足げに頷いた。


「若者のことに口出しはせぬ! だが、余は楽しみにしておるぞ!」


絶対口出ししていた。


会場には笑いと拍手が広がる。


私は顔が熱くてたまらない。


隣を見ると、アルフレッドが深いため息をついていた。


「……散々ですね」


私が小声で言うと、彼は低く返した。


「全部父上のせいだ」


「少しだけ違う気もします」


「違わない」


その顔は珍しく本気で困っていた。


私は思わず笑ってしまう。


すると彼がじっとこちらを見る。


「……笑うな」


「無理です」


「覚えていろ」


何を覚えるのかは知らない。


ただ、その目が真剣すぎて、心臓がまた忙しくなった。


こうして悪役令嬢は、王子の婚約宣言未遂に――心臓がもちそうになかったのだった。

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