表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/48

第35話 冷徹王子、恋敵に大人気なく張り合います

その翌日。


舞踏練習室には、朝から妙な緊張感が漂っていた。


理由は明白。


エレノアが今日もいる。


「姿勢が甘いですわ、アメリア」


「朝一番で厳しいですね」


「甘やかして伸びるタイプではありませんもの」


失礼である。


私は足運びを繰り返しながらため息をついた。


なぜ恋敵に指導されているのか。


だが昨日より確実に上達しているのも事実だった。


「視線は下げない!」


「はい!」


「胸を張って!」


「はい!」


鬼教官、今日も絶好調である。


その時、扉が開いた。


「……何をしている」


低い声。


アルフレッドだった。


今日も無駄に格好いい。


だが目が少し冷たい。


エレノアはにっこり笑う。


「見て分かりませんの? アメリアの特訓ですわ」


「必要ない」


即答だった。


「必要ですわ。殿下の指導ではアメリアが赤くなるばかりで進みませんもの」


私はむせた。


「ちょ、ちょっと!」


アルフレッドの空気がさらに冷える。


怖い。


「……なら私がやる」


「は?」


今度は私とエレノアの声が重なった。


アルフレッドは当然のように部屋中央へ進む。


「アメリア、来い」


「い、嫌な予感しかしません」


「来い」


命令口調である。


私はしぶしぶ近づいた。


彼は私の手を取り、腰へ手を回した。


また心臓に悪い距離だ。


エレノアが扇子をぴくりと動かす。


「ずいぶん積極的ですこと」


「指導だ」


「へえ」


信じていない顔である。


音楽もない静かな部屋で、一歩、二歩。


昨日より足が自然に動く。


「視線を上げろ」


「……はい」


目が合う。


近い。


無理である。


「顔が赤い」


「殿下のせいです」


「そうか」


少し嬉しそうなのが腹立つ。


エレノアが口を開いた。


「殿下、回転の誘導が雑ですわ」


アルフレッドの眉が動く。


「何だと」


「女性を美しく見せる角度を分かっていませんの」


「必要ない」


「必要ですわ」


火花が見える。


私はそっと離れようとしたが、二人同時に言った。


「動くな」


なぜ。


結局その後、


エレノアが姿勢を指摘し、

アルフレッドが手本を見せ、

私は二人に挟まれて振り回された。


地獄である。


一時間後。


私は椅子に崩れ落ちていた。


「……疲れました」


「よく頑張りましたわ」


エレノアがタオルを差し出す。


「飲め」


同時にアルフレッドが水を差し出した。


気まずい。


私は恐る恐る両手で受け取った。


「仲良くしてください」


「断る」


声が重なった。


なぜそこだけ息ぴったりなのか。


ルシアンがいつの間にか入口から覗いていた。


「兄上、子どもみたい」


「ルシアン」


「逃げろー!」


走って去っていった。


私は笑いをこらえきれなかった。


するとアルフレッドが私を見て、ふっと表情を緩める。


エレノアも肩をすくめた。


「……まあ、その笑顔が出るなら本日は及第点ですわ」


「何の採点ですか」


「女の魅力です」


やはり勝てる気がしない。


こうして冷徹王子は、恋敵相手に大人気なく張り合い――私はその板挟みで今日も心臓を削られるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ