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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第33話 悪役令嬢、ドレス姿で王子を黙らせます

数日後、午後。


私は王妃の衣装室へ連行されていた。


広い室内には鏡が並び、壁一面にドレスが掛けられている。


淡い水色。

上品な薄桃色。

深い紺。

純白に近い銀色。


眩しい。


「逃げたい顔をしているわね」


王妃セレナが優雅に笑った。


「顔に出ていましたか」


「ええ、とても」


隠す気力もない。


侍女たちはすでにやる気満々である。


「アメリア様はお肌が綺麗ですから淡色もお似合いです!」


「髪はゆるくまとめましょう!」


「絶対可愛いです!」


逃げたい。


私はじりじり後退した。


「厨房に戻っても」


「却下」


王妃の即答だった。


強い。


私は着せ替え人形のように捕獲され、数着試着させられた。


ふわふわ。

きらきら。

ひらひら。


落ち着かない。


そして最後に、王妃が一着を手に取った。


淡い青銀色のドレス。


夜明けの空のような色合いで、胸元には控えめな刺繍が入っている。


「これね」


「派手すぎませんか?」


「あなたが着るとちょうどいいわ」


意味が分からない。


半ば強制的に着替えさせられ、鏡の前へ立たされた。


そこに映っていたのは――


少しだけ、見知らぬ自分だった。


「……誰ですか、この人」


「あなたよ」


侍女たちが歓声を上げる。


「素敵……!」


「お姫様みたい!」


「元令嬢です」


思わず訂正した。


その時、扉が開いた。


「母上、署名した書類を――」


アルフレッドだった。


私は固まる。


王妃はにっこり笑う。


「ちょうどいいところに来たわ」


「……何をしている」


アルフレッドはいつもの無表情で部屋へ入ってきて――私を見た瞬間、足を止めた。


沈黙。


長い沈黙。


王妃と侍女たちが息を潜める。


私は耐えきれず口を開いた。


「な、何か言ってください」


「……」


「似合わないならそうと」


「違う」


即答だった。


アルフレッドはわずかに視線を逸らし、低く言った。


「その……似合っている」


部屋がざわついた。


侍女たちが無言で抱き合っている。


「奇跡……」


「喋った……」


失礼である。


私は顔が熱くなるのを感じた。


「そ、そうですか」


「……ああ」


アルフレッドの耳が赤い。


珍しすぎる。


王妃は満足げに頷いた。


「では決まりね」


「何がですか」


「舞踏会当日は、その姿でアルフレッドの隣に立つの」


私の心臓が変な音を立てた。


アルフレッドは私を見たまま、静かに言う。


「……悪くない」


「何がですか」


「想像しただけだ」


やめてほしい。


想像しないでほしい。


いや、少ししてほしい。


混乱する。


そこへルシアンが勢いよく飛び込んできた。


「兄上ー! って、うわあああ!」


私を見るなり目を輝かせる。


「アメリア、すごく綺麗!」


「ありがとうございます」


「兄上、今すぐ求婚しなよ!」


「ルシアン」


「痛い痛い痛い!」


本日も耳を引っ張られている。


私は吹き出してしまった。


その笑顔を見たアルフレッドが、ふっと目を細める。


ほんの一瞬、優しい顔だった。


その表情に、また胸が跳ねる。


ずるい。


本当にずるい。


こうして悪役令嬢は、ドレス一着で冷徹王子を黙らせてしまったのだった。

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