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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第27話 悪役令嬢、突然の縁談に動揺します

翌朝。


私はいつものように王城厨房で朝食の準備をしていた。


焼きたてのパン。

具だくさんのスープ。

本日は蜂蜜入りのふわふわ卵焼きである。


平和だ。


……と思っていた。


「アメリア様、大変です!」


侍女が勢いよく駆け込んできた。


「今度は何ですか。鍋なら焦げていませんよ」


「違います! ローゼリア公爵家から使者が!」


私は手を止めた。


ローゼリア公爵家。


――私の実家である。


胸の奥が、わずかに冷える。


婚約破棄の後、ほとんど連絡はなかった。


都合の悪い娘として、静かに切り捨てられたと思っていたのに。


「使者は何と?」


侍女は言いにくそうに口を開く。


「……ご令嬢に、新たな縁談が決まったと」


厨房の空気が止まった。


「は?」


間抜けな声が出た。


「先方は北方の名門伯爵家ご嫡男。近日中にご返答を、と……」


意味が分からない。


私は今、王城で厨房係として働いている。


しかも本人の意思確認ゼロで縁談とは何事か。


「ずいぶん急ですね」


「それが……“王城で妙な噂が立つ前に”と」


私はにっこり笑った。


「なるほど。実家、燃やしましょうか」


侍女が震えた。


その時だった。


入口から低い声が響く。


「何の話だ」


振り向けば、アルフレッド。


今日も無駄に顔がいい。


だが今朝は、それ以上に目つきが怖い。


「おはようございます」


「挨拶はいい。何の話だ」


怖い。


私は手紙を差し出した。


アルフレッドは無言で目を通し――紙を握りつぶしかけた。


「殿下、紙が可哀想です」


「北方伯爵家……聞いたことがある」


「名門らしいですよ」


「三男だ」


「詳しいですね」


「以前、遊興費で領地財政を傾けた」


ろくでもない情報が追加された。


私は乾いた笑いを漏らす。


「実家、やっぱり燃やします?」


「待て」


アルフレッドの声が低い。


その背後で、厨房の者たちがそっと距離を取った。


怒気が見える気がする。


「返事はしたのか」


「していません」


「するな」


即答だった。


「ですが私、立場的には断れるほど強くないのでは?」


「断れる」


「なぜそう言い切れるんですか」


アルフレッドは一歩近づいた。


朝の厨房なのに妙に空気が張りつめる。


「お前は王城勤めだ。勝手に引き抜けると思うな」


「引き抜き商品扱いですか」


「……違う」


珍しく言葉に詰まる。


そこへルシアンが飛び込んできた。


「何これ何これ!? 修羅場!?」


「帰れ」


「朝から楽しそう!」


全然空気を読まない。


ルシアンは手紙をひったくり、目を丸くした。


「えー! アメリア結婚しちゃうの!?」


「しません」


「させない」


私とアルフレッドの声が重なった。


厨房が静まり返る。


ルシアンがにやりと笑った。


「兄上、今のすごくよかった」


「黙れ」


私は顔が熱くなるのを感じた。


何なの、この流れ。


アルフレッドは私を見つめ、真剣な声で言った。


「この件は私が預かる」


「殿下が?」


「ローゼリア公爵家には、こちらから話を通す」


「でも――」


「お前は何も心配するな」


低く、強い声だった。


その一言だけで、不思議と胸のざわめきが少し静まる。


ずるい人だ。


ルシアンがにこにこしながら囁く。


「兄上、完全に婿ムーブだね」


「黙れ」


本日二度目である。


こうして私は、突然届いた縁談話と――それ以上に機嫌の悪い第一王子に振り回される朝を迎えたのだった。

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