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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第24話 国王陛下、悪役令嬢の実力を試します

会議室に現れた国王陛下は、堂々たる威厳と妙に楽しげな笑みを同時にまとっていた。


金の刺繍が施された深紅の外套。

鋭い眼光。

そして、よく通る声。


「そう固くなるな。余が人を食うわけではない」


いや、空気は食っています。


私は慌てて礼をした。


「アメリア・フォン・ローゼリアにございます」


「知っておる」


国王は面白そうに私を眺めた。


「最近、息子の機嫌を直す者が現れたと聞いてな」


「父上」


アルフレッドの声が低くなる。


「黙っておれ。今は余が話している」


一蹴された。


強い。


ルシアンなら笑っているところだろう。


国王は机の上のサンドイッチをつまみ、一口食べた。


数秒、沈黙。


周囲の文官たちまで息を止めている。


やがて王は、にやりと笑った。


「うまい」


空気が一気に緩んだ。


「パンは柔らかく、鶏肉の火入れも絶妙。朝の会議用に重すぎず軽すぎぬ」


食レポまで的確だった。


「ありがとうございます」


「だが料理だけでは王城では生き残れぬ」


私は背筋を伸ばす。


来た。


試される流れである。


国王は椅子に腰を下ろし、肘をついた。


「問おう。王族に仕える者に最も必要なものは何だ?」


会議室が静まり返る。


文官たちの視線も集まる。


私は少し考え、答えた。


「相手を満たすことです」


「ほう?」


「空腹を満たすだけではありません。疲れた心、焦る気持ち、不安も和らげること。料理人でも侍女でも、それは同じかと」


国王の片眉が上がる。


「面白い答えだ」


アルフレッドは腕を組んだまま、どこか誇らしげだった。


やめてほしい。恥ずかしい。


国王はさらに問いを重ねる。


「では、アルフレッドに最も足りぬものは?」


会議室中が凍った。


本人もいる。


なんて危険な質問だ。


私は慎重に口を開いた。


「……甘み、でしょうか」


「甘み?」


「厳しさも必要ですが、苦い薬ばかりでは人はついてきません。時々は飴も必要です」


文官たちが全力でうなずいている。


「聞いたか、アルフレッド」


「聞こえている」


「皆も同意しておるぞ」


「あとで覚えていろ」


文官たちが青ざめた。


私は少し申し訳なくなった。


国王は豪快に笑い、立ち上がる。


「よい。実に良い」


そして私の前まで来ると、まっすぐ見下ろした。


「気に入った」


「……は?」


「頭も回り、肝も据わっておる。料理もできる。何より、余の息子に物怖じせぬ」


「父上」


アルフレッドのこめかみに青筋が浮かぶ。


国王はまるで気にしない。


「アメリアよ」


「は、はい」


「今夜、晩餐を任せる」


突然すぎる。


「余の好物で勝負してみよ」


「お断りしても?」


「できぬ」


即答だった。


横暴である。


だが王の目は楽しそうに輝いていた。


「成功すれば褒美をやろう」


「失敗したら?」


「もう一品作ってもらう」


逃げ道がない。


私は深く息を吸い、礼をした。


「……承りました」


国王は満足げにうなずき、去っていく。


室内に残された私は、どっと疲れた。


すると隣でアルフレッドが低く言った。


「すまない」


「陛下って、いつもあんな感じなんですか」


「今日はかなり機嫌がいい方だ」


「恐ろしいですね、この国」


思わず本音が漏れた。


アルフレッドがわずかに笑う。


「だが気に入られた」


「嬉しくありません」


「私は嬉しい」


さらりと言われ、心臓がまた跳ねた。


本当にこの人は油断ならない。


そして私は、その夜“国王陛下の胃袋を掴む”という新たな試練に挑むことになったのだった。

【新登場人物】


✦エドワード・ルミエール

この国の国王陛下。威厳と包容力を持ち、家族や王宮を温かく見守る存在。

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