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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第23話 冷徹王子、政務では一切容赦がありません

翌朝。


私はいつものように王城厨房で朝食の準備をしていた。


焼きたてのパン。

野菜たっぷりのスープ。

ふわとろのオムレツ。


平和である。


……と思っていたら、王妃セレナが現れた。


「アメリア、少しお願いがあるの」


「なんでしょうか」


「アルフレッドに軽食を届けてちょうだい」


私は手を止めた。


「殿下に、ですか?」


「朝から政務会議なのよ。どうせ食事を後回しにしているわ」


それはありそうだ。


「侍女ではなく私が?」


王妃はにやりと笑った。


「あなたが行けば、少しは素直に食べるでしょう?」


絶対それが本命である。


私はサンドイッチと温かい紅茶を盆に載せ、執務棟へ向かった。


王城の奥にあるその建物は、厨房とは空気が違う。


静かで、張りつめていて、行き交う文官たちの足取りも早い。


(なんだか緊張する……)


案内された会議室の前まで来た時、中から低い声が響いた。


「この予算案は却下だ」


アルフレッドだった。


私は思わず足を止める。


扉の隙間から見えた彼は、いつもの朝の姿とはまるで違った。


長机の中央に座り、書類を手に鋭い視線を向けている。


「ですが殿下、貴族街の噴水改修は伝統ある事業で――」


年配の貴族が反論する。


アルフレッドは一切表情を変えなかった。


「民の井戸修繕が遅れている中、飾りの噴水を優先する理由を述べろ」


「そ、それは……」


「述べられぬなら終わりだ」


室内が静まり返る。


別の文官が慌てて口を開いた。


「南部街道の整備案は進めております」


「進捗が遅い」


「人手不足で……」


「言い訳は要らん。必要人員を本日中に再編しろ」


短く、的確で、容赦がない。


けれど誰一人、反発はしていなかった。


皆、恐れているのではなく――信頼しているのだと分かった。


この人は、本気で国を良くしようとしている。


(……かっこいい)


思わずそう思ってしまい、私は慌てて首を振った。


何を考えているの、私。


その時、扉番の騎士に気づかれ、中へ通された。


「軽食をお持ちしました」


会議中の視線が一斉に集まる。


いたたまれない。


だがアルフレッドだけは、ふっと表情を緩めた。


「そこへ置いてくれ」


さっきまで氷のようだった声が、少しだけ柔らかい。


文官たちがざわつく。


「殿下が笑った……」


「今、笑ったな?」


聞こえてますよ。


私は急いで盆を置いた。


「ちゃんと食べてください。朝食抜きは集中力が落ちます」


「命令か」


「助言です」


「……後で食べる」


「今です」


会議室がまた静まった。


誰も第一王子にそんな口をきかないのだろう。


アルフレッドは私を見つめ、やがて小さく息をついた。


「五分休憩」


文官たちがどよめく。


「休憩!?」


「奇跡だ……」


私は少し勝った気分になった。


アルフレッドはサンドイッチを一口食べ、眉を上げる。


「うまい」


「当然です」


「お前が作ったものだけは安心する」


心臓が跳ねた。


なぜこの人は、真顔でそういうことを言うのか。


周囲の文官たちは、完全に何かを察した顔をしていた。


私は真っ赤になって視線をそらす。


その時、会議室の奥の扉が開く。


重厚な衣をまとった壮年の男性が現れた。


場の全員が一斉にひざまずく。


「父上」


アルフレッドが立ち上がった。


私は息をのむ。


――国王陛下だった。


王は私と盆を見比べ、にやりと笑う。


「ほう。これがお前の機嫌を直せる娘か」


最悪のタイミングである。


こうして私は、ついにこの国で最も偉い人物と対面することになったのだった。

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