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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第2話 冷徹王子、ふわとろ朝食に並びます

王城厨房は、朝から妙な緊張感に包まれていた。


理由は明白だ。


昨日、婚約破棄された悪役令嬢が使用人を助け、第一王子にスープを食べさせた。


その噂が、たった一晩で城中に広まったのである。


「本当に来ると思う?」


「来ないだろ、殿下だぞ?」


「でも昨日、“また作れ”って言ったらしいよ」


ひそひそ声が飛び交う中、私は黙々と卵を割っていた。


(うるさいわね)


追放待ちの身なのだ。

できれば静かに料理だけしていたい。


今日は朝食向きに、ふわとろオムレツサンドを作ることにした。


卵をよく溶き、牛乳を少し加えてなめらかにする。

バターを溶かしたフライパンで、半熟になるまで素早く火を通す。


焼きたてのパンに、ふるふるのオムレツを挟み、香草を散らす。


切った瞬間、とろりと黄身があふれた。


厨房の者たちが一斉に息をのむ。


「な、なんですかそれ……!」


「朝食です」


「朝食の域を超えてます!」


その時だった。


「……何をしている」


低く整った声が入口から響く。


全員の背筋が伸びた。


第一王子アルフレッドである。


今日も無駄に顔がいい。


「朝食作りですが?」


「私の分はあるのか」


開口一番それである。


厨房中が静まり返った。


私は腕を組んだ。


「追放される令嬢に、当然のように朝食を要求しないでください」


「要求ではない」


「では?」


「確認だ」


意味はほぼ同じである。


私はため息をつき、一皿差し出した。


「熱いうちにどうぞ」


アルフレッドは無言で受け取り、一口かじった。


ふわり、とろり。


普段感情を見せない王子の目が、わずかに見開かれる。


周囲が固唾をのんで見守る中、彼は静かに言った。


「……うまい」


昨日と同じ、たった一言。


だが厨房の空気は一気にざわめいた。


「殿下がまた褒めた……!」


「奇跡では?」


「失礼ですね」


私は胸を張った。


「当然です」


アルフレッドはもう一口食べる。


そして迷いなく言った。


「……もう一つだ」


「え?」


「聞こえなかったか」


「王子が朝からおかわり要求ですか?」


「要求ではない」


「確認ですか?」


「追加だ」


新しい単語が増えた。


私は吹き出しそうになりながら、二皿目を用意した。


その時、厨房の扉が勢いよく開いた。


「兄上だけずるい!」


銀髪の少年が駆け込んでくる。


第二王子ルシアンだった。


「僕にもください!」


「なぜ来た」


「美味しい匂いがしたから!」


私は額を押さえた。


(面倒なのが増えた)


こうして私は、第一王子に加え、第二王子にまで目をつけられた。



【新登場人物】


✦ルシアン・ルミエール

この国の第二王子。明るく人懐っこい性格。兄アルフレッドとアメリアの仲を面白がりながら応援している。

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