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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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19/65

第19話 悪役令嬢、王子と囮役になります

翌日。


王妃主催の午後の茶会が開かれることになった。


名目は、春の夜会成功を祝う小規模な集まり。


実際は――黒幕をあぶり出すための囮作戦である。


(胃が痛い)


私は鏡の前でため息をついた。


淡い桃色のドレスに着替えさせられ、髪まで丁寧に結い上げられている。


厨房係の扱いではない。


「逃げたい……」


「無理です」


侍女が即答した。


最近みんな返事が早い。


「本日のあなたは主役ですから」


「そういうのが一番苦手です」


そこへ扉がノックされた。


「入るぞ」


低い声。


アルフレッドだった。


今日も無駄に顔がいい。


濃紺の礼装姿で現れた彼に、侍女たちが一斉に頬を染める。


私は別の意味で心臓が痛くなった。


「準備はできたか」


「気持ち以外は」


「十分だ」


何が十分なのか分からない。


アルフレッドは私を見て、一瞬だけ言葉を止めた。


「……似合っている」


「え?」


「その格好だ」


「また褒めています?」


「二度言わせるな」


前にも同じ流れがあった気がする。


私は顔を赤くしながら視線をそらした。


その時、ルシアンが勢いよく飛び込んできた。


「わー! 二人とも婚約発表みたい!」


「違います!」


「違う」


声が重なった。


ルシアンがにやにやする。


「息ぴったりー!」


本当に黙っていてほしい。


やがて茶会の会場、中庭のガゼボへ向かう。


春風が花の香りを運び、白いテーブルクロスの上には色とりどりの菓子が並んでいた。


王妃セレナは上機嫌だ。


「まあ、絵になるわね」


「何がですか」


「こちらの話よ」


絶対ろくでもない。


招かれた貴族夫人や令嬢たちが次々と集まる。


視線の多くは、私ではなくアルフレッドへ向いていた。


だが、私を見る目の中には明らかな敵意も混ざっている。


(怖い……)


その瞬間、アルフレッドが何も言わず私の椅子を引いた。


「座れ」


「……ありがとうございます」


「離れるな」


「ここ座ってるんですが」


「そういう意味ではない」


近い。


声も距離も近い。


私は平静を装って席についた。


やがてエレノアも現れた。


今日も完璧に美しい。


「ごきげんよう、アメリア様」


「ごきげんよう」


「殿下」


彼女が微笑むと、アルフレッドは軽くうなずいた。


それだけで胸がちくりとする。


(またこれ……)


嫉妬だと知ってしまった今、以前のように胃もたれとは言えない。


茶会が始まり、会話と笑い声が広がる。


その時、侍女が私の前へ新しい紅茶を置いた。


私は何気なく手を伸ばしかけ――


「待て」


アルフレッドがカップを押さえた。


室内が静まる。


彼は紅茶の表面を見つめ、眉をひそめた。


「色が違う」


「え?」


王妃が立ち上がる。


「誰が淹れたの」


侍女は青ざめ、震え始めた。


「わ、わたくしは運んだだけで……!」


その背後、人混みの中で誰かが素早く身を翻した。


黒いドレスの裾。


「逃がすな!」


アルフレッドが叫ぶ。


同時に私の手を取り、走り出した。


「え、ちょ、待ってください!」


「離れるなと言ったはずだ」


「こういう意味だったんですか!?」


私はドレスの裾を押さえながら、王子に手を引かれて中庭を駆け抜けた。


貴族たちの悲鳴とざわめきが背後で遠ざかる。


黒幕との距離は、ついにゼロへ近づこうとしていた。

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