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悪役令嬢ですが、冷徹王子の胃袋を掴んだら溺愛されました  作者: 星乃茶々


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第16話 冷徹王子、公衆の面前で守ります

夜会は再開された。


音楽も戻り、貴族たちは何事もなかったかのように談笑している。


けれど、空気の奥には張りつめたものが残っていた。


私は新しい料理台の確認をしながら、小さく息を吐く。


(まだ終わっていない)


そんな気がしてならない。


「アメリア」


低い声とともに、アルフレッドが隣へ立った。


今日も無駄に顔がいい。


しかも護衛のようにぴたりと離れない。


「本当に離れる気がないんですね」


「言ったはずだ。そばを離れるな」


「命令口調は減点対象です」


「……頼む。離れるな」


言い直された。


しかも少しだけ不器用に。


心臓に悪い。


その時、給仕係の一人が私の前へグラスを差し出した。


「お疲れでしょう。果実水をどうぞ」


「ありがとうございます」


受け取ろうとした瞬間――


ぱしっ、と強い音が響いた。


アルフレッドが横からグラスを払い落としたのだ。


床で砕け散るガラス。


会場が凍りつく。


「殿下!?」


給仕係が青ざめる。


アルフレッドの瞳は氷のように冷たかった。


「誰に渡された」


「な、何のことで……」


「その手が震えている」


給仕係の手は、確かに小刻みに震えていた。


私は背筋が寒くなる。


「……まさか」


アルフレッドは床に散った液体を見下ろし、近くの侍医を呼ぶ。


「調べろ」


侍医は匂いを確かめ、顔色を変えた。


「これは……眠り薬が混ぜられています」


ざわっ、と会場が揺れる。


王妃セレナの笑みが消えた。


「誰の指示?」


給仕係は膝から崩れ落ちる。


「し、知りません……! 侍女から“アメリア様へ渡せ”とだけ……!」


「その侍女は」


「もう姿が……!」


逃げたのだ。


私は息をのんだ。


もし飲んでいたら、夜会の真ん中で倒れていたかもしれない。


恥をかかせるだけではない。


明確な悪意だ。


アルフレッドは一歩前へ出て、私を背にかばうように立った。


その姿勢に、会場中の視線が集まる。


「聞け」


低く響く声に、誰もが黙った。


「アメリアに害をなす者は、私に刃を向けるのと同じだ」


静まり返る広間。


私は目を見開いた。


「今後、彼女に手を出す者は容赦しない」


有無を言わせぬ王子の宣言だった。


ざわめきが走る。


「第一王子殿下が、あそこまで……」


「まるで婚約者のようでは……」


「いや、婚約破棄したはずでは?」


やめてほしい。


色々とややこしい。


私は顔が熱くてたまらなかった。


ルシアンだけが楽しそうに拍手している。


「兄上、かっこいいー!」


「黙れ」


「でも顔赤いよ?」


「黙れ」


本当に少し赤い。


私は思わず吹き出しそうになった。


その時、アルフレッドが振り返る。


「無事か」


「……はい」


「怖かったか」


「少しだけ」


そう答えた瞬間、彼の表情がわずかに和らいだ。


「なら、もう大丈夫だ」


その声は驚くほど優しかった。


胸の奥が熱くなる。


昨日まで“胃もたれ”と言い張っていた感情が、もう誤魔化せないほど大きくなっていた。


王妃は満足そうにうなずき、扇子で口元を隠す。


「これはもう時間の問題ね」


「何がですか」


「いいえ、こちらの話」


絶対ろくでもない。


夜会は続いている。


けれど私にとって、この夜の主役は料理でも陰謀でもなかった。


冷徹王子が、公衆の面前で私を守ってくれた。


その事実だけで、胸がいっぱいだった。

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