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悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


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159/160

第159話 悪役令嬢、新しい家族を迎えます

季節は巡り。


出産予定日を迎えていた。


その日。


王宮は朝から慌ただしかった。


「アメリア様!」


エマが駆ける。


助産師たちも忙しそうだ。


いよいよだった。



部屋の外。


アルフレッドは落ち着かない様子で立っていた。


座る。


立つ。


また歩く。


落ち着かない。


本当に落ち着かない。


「兄上」


ルシアンが苦笑する。


「大丈夫だから」


「分かっている」


即答だった。


だが。


全く分かっていない顔だった。



「殿下」


王妃様が声を掛ける。


「アメリアなら大丈夫よ」


「……ああ」


短く答える。


だが。


握り締めた拳には力が入っていた。


心配なのだ。


誰よりも。



その時だった。


部屋の中から。


元気な泣き声が響く。


「――――っ!」


アルフレッドが顔を上げた。


皆も息を呑む。


そして。


扉が開いた。


助産師だった。


満面の笑みを浮かべている。


「おめでとうございます」


皆が固唾を呑む。


助産師は嬉しそうに言った。


「元気な男の子です」


静寂。


そして。


「本当!?」


王妃様だった。


早い。



「アメリアは」


アルフレッドが尋ねる。


「お母様もお元気です」


その言葉に。


アルフレッドは大きく息を吐いた。


ようやく安心したらしい。



部屋へ入る。


ベッドの上にはアメリア。


少し疲れている。


だが。


幸せそうに笑っていた。


その腕の中には。


小さな命。


「殿下」


アメリアの声が震える。


「生まれました」


「ああ」


アルフレッドも笑った。


普段は滅多に見せない。


優しい笑顔だった。


「頑張ったな」


その一言に。


アメリアの瞳から涙がこぼれる。


嬉しくて。


幸せで。


涙が止まらなかった。



「抱いてみますか?」


助産師が尋ねる。


アルフレッドが固まった。


珍しい。


本当に珍しい。


「……大丈夫か」


「大丈夫ですよ」


皆が少し笑う。


アルフレッドは恐る恐る腕を伸ばした。


そして。


そっと。


本当にそっと。


男の子を抱き上げる。


まるで世界で一番大切な宝物のように。


「小さいな」


静かな声だった。


男の子は小さな手を動かす。


アルフレッドの指に触れた。


その瞬間。


アルフレッドの表情が柔らかくなる。


「やっと会えたな」


ぽつりと呟く。


「待っていた」


そして。


愛おしそうに男の子を見つめる。


「よく来てくれた」


「ありがとう」


その言葉に。


アメリアはまた涙をこぼした。



「きゃああああ!」


王妃様だった。


「可愛いわぁぁぁ!」


涙が止まらない。


「母上」


「だって可愛いんだもの!」


国王も小さく笑った。


「元気そうだな」


「はい」


アルフレッドが頷く。


その顔はどこか誇らしげだった。



「義姉上!」


ルシアンだった。


「おめでとうございます!」


セシリアも嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます」


「絶対可愛がります!」


「まだ抱っこもしてませんよ」


アメリアが笑う。


皆も笑った。



知らせは王宮中へ広がった。


厨房では。


「アメリア様、おめでとうございます!」


見習いたちが大喜び。


料理長も目を細める。


エマは嬉しそうに涙を拭っていた。



そして。


王都の人々も歓声を上げる。


王太子夫妻に男の子が生まれた。


その知らせは。


春風のように国中へ広がっていった。


「おめでとう!」


「健やかに育ちますように!」


祝福の声が溢れる。


王宮の外では。


子どもたちが笑いながら走り回っていた。


市場の人々も。


商人たちも。


誰もが嬉しそうだった。


愛される王太子夫妻に生まれた、


新しい命。


皆がその誕生を祝福していた。


窓の外から聞こえる歓声に。


アメリアは我が子を抱きしめた。


たくさんの人に愛されている。


この子はきっと幸せだ。


そう思いながら。


アメリアは幸せな涙を流したのだった。


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