第158話 悪役令嬢、家族に支えられます
妊娠が分かってから数日。
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私の周りは、
少しずつ変わっていた。
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「アメリア様」
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エマだった。
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「それは私が持ちます」
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「でも」
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「駄目です」
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即答だった。
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いつになく真剣である。
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「少しくらいなら」
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「少しでも駄目です」
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強かった。
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私は思わず笑う。
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「分かりました」
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すると。
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エマはほっとした顔をした。
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◇
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厨房でも同じだった。
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「アメリア様!」
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「重い鍋は私たちがやります!」
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「味見だけお願いします!」
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「立ちっぱなしは駄目ですよ!」
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見習いたちまで張り切っている。
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「ありがとうございます」
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そう言うと。
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皆が嬉しそうに笑った。
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料理長も腕を組む。
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「厨房は我々に任せてください」
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「でも」
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「無理は禁物です」
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有無を言わせない声だった。
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どうやら味方はいないらしい。
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◇
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「アメリア!」
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勢いよく扉が開く。
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王妃様だった。
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「体調はどう?」
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「大丈夫です」
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「ちゃんと食べてる?」
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「食べています」
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「寝てる?」
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「寝ています」
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王妃様は満足そうに頷いた。
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だが。
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それだけでは終わらない。
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「今日は少し冷えるわね」
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次の瞬間。
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ふわり。
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肩にショールが掛けられた。
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「母上」
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アルフレッドが呆れたように言う。
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「何か問題あるかしら?」
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「ない」
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即答だった。
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どうやら共犯らしい。
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◇
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昼食の時間。
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「生ものは駄目よ」
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王妃様。
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「無理も駄目」
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王妃様。
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「冷えも駄目」
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王妃様。
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「寝不足も駄目」
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王妃様。
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「母上」
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アルフレッドが口を開く。
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「何だ」
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「私も同じことを言った」
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「なら安心ね!」
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全く反省していなかった。
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ルシアンが吹き出す。
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「兄上と母上、同じこと言ってる」
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「当然よ」
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王妃様は胸を張った。
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「大事なんだから」
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◇
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その後。
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私は思わず笑ってしまう。
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「皆さん心配しすぎです」
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すると。
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王妃様が優しく微笑んだ。
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そして。
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そっと私の手を握る。
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「当たり前でしょう?」
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「あなたも」
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「お腹の赤ちゃんも」
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「私たちの大切な家族なんだから」
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その言葉に。
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胸がじんわり温かくなる。
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◇
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その時だった。
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「そうだな」
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低い声。
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アルフレッドだった。
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いつの間にか隣へ来ている。
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私は思わず笑った。
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「殿下まで」
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「心配性ですね」
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「そうか?」
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「そうですよ」
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アルフレッドは少し考えた。
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そして。
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私のお腹へそっと手を添える。
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優しく。
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壊れ物を扱うように。
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「大事だからな」
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静かな声だった。
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私は目を瞬く。
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「お前も」
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「お腹の子も」
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「私にとって大切だ」
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胸の奥が温かくなる。
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「ありがとうございます」
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私は幸せそうに微笑んだ。
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◇
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周りを見渡す。
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エマ。
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料理長。
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見習いたち。
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王妃様。
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ルシアン。
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セシリア。
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そして。
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アルフレッド。
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たくさんの人が支えてくれている。
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たくさんの人が、
生まれてくるこの子を待ってくれている。
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私はそっとお腹を撫でた。
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この子は幸せだ。
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まだ生まれていないのに。
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こんなにも愛されているのだから。
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春の陽射しが窓から差し込む。
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穏やかで。
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優しい時間だった。




