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悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


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151/160

第151話 悪役令嬢、久しぶりに実家へ帰ります

保存食プロジェクトが動き始めて数日後。


私は王宮の馬車へ揺られていた。


---


「緊張していますね」


向かいに座るエマが静かに言う。


---


「……分かりますか」


---


「顔に出ています」


---


最悪である。


---


今日は久しぶりの帰省だった。


王太子妃になってから初めて。


結婚してから初めて。


そして――


アルフレッドと一緒の帰省だった。


---


「そんなに緊張することか」


隣から低い声。


---


「します」


---


即答だった。


---


「実家ですよ?」


---


「だからだ」


---


意味が分からない。


---


だが。


アルフレッドはどこか落ち着いていた。


---


「父上たちは喜ぶだろう」


---


「そうだと良いのですが」


---


本当は分かっている。


きっと喜んでくれる。


でも。


少しだけ照れくさかった。


---


馬車が屋敷へ到着する。


懐かしい門。


庭。


屋敷。


何も変わっていない。


---


その時だった。


---


「お姉様ー!!」


---


勢いよく飛び出してきたのはセシリアだった。


---


「わっ」


---


そのまま抱きつかれる。


相変わらず元気である。


---


「お帰りなさいませ!」


---


「ただいま」


---


思わず笑ってしまう。


---


その後ろから。


母ヴィクトリアが現れた。


---


「ああ……アメリア……!」


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涙ぐんでいる。


早い。


---


「お母様」


---


「元気そうで良かったわぁ……!」


---


まだ何も話していない。


---


父レオナルドも姿を見せた。


---


「帰ったか」


---


短い言葉。


でも。


どこか安心したような声だった。


---


「はい」


---


「そうか」


---


それだけだった。


だが。


胸の奥が少し温かくなる。


---


応接室。


紅茶が並ぶ。


---


セシリアはどこか落ち着かない様子だった。


---


「そういえば」


---


私は少しだけ笑う。


---


「ルシアン様からのお手紙は?」


---


セシリアが固まった。


---


分かりやすすぎる。


---


「……来ましたわ」


---


小さな声。


---


「魚の形のクッキー、美味しかったです」


---


今度は私が笑う番だった。


---


「そう」


---


「とても嬉しかったです」


---


顔が少し赤い。


---


その様子を見ているだけで、なんだか嬉しくなる。


---


夕食後。


女性陣が別室へ移動した後。


応接室には、レオナルドとアルフレッドだけが残っていた。


---


暖炉の火が静かに揺れている。


---


レオナルドはしばらく火を見つめていた。


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やがて。


静かに口を開く。


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「……今日のアメリアは幸せそうでした」


---


アルフレッドは黙って聞いている。


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「正直、安心しました」


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小さく息を吐く。


---


「昔のあの子は――」


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一拍。


---


「強がりな子でした」


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「困っていても大丈夫だと言う」


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「苦しくても平気だと言う」


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「本当は誰かを頼れば良いのに、それができなかった」


---


暖炉の火が揺れる。


---


アルフレッドは静かに頷いた。


---


「分かります」


---


短い返事。


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レオナルドは少しだけ目を細める。


---


「ですが」


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「最近は違いますな」


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「笑うことが増えた」


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「肩の力も抜けた」


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「誰かを頼ることも覚えた」


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そして。


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「何より」


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静かな声。


---


「幸せそうです」


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しばらく沈黙が続く。


---


やがて。


アルフレッドが静かに口を開いた。


---


「それなら良かった」


---


迷いのない声だった。


---


レオナルドは小さく頷く。


---


「……ありがとうございます」


---


父としての言葉だった。


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そして。


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「娘を頼みます」


---


以前も言った言葉。


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だが今度は違う。


---


本当に送り出した後の言葉だった。


---


アルフレッドは真っ直ぐ答える。


---


「お任せください」


---


「必ず幸せにします」


---


レオナルドは小さく笑った。


---


「それなら十分です」


---


窓の外では。


夕暮れが静かに庭を染めていた。


---


こうして悪役令嬢は――


変わらない家族の愛に包まれながら、


新しい未来を歩いていくのだった。

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