第149話 弟王子、返事一通で幸せになります
数日後。
王宮の朝。
私は朝食会場へ向かっていた。
その時だった。
「失礼いたします」
使用人が一通の封筒を持って入ってくる。
そして。
「ローゼリア家より、お手紙です」
その瞬間。
「僕が持っていく!」
ルシアンが立ち上がった。
早い。
あまりにも早い。
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「……ルシアン様」
「な、何?」
「まだ差出人を確認していませんよね?」
固まった。
完全に図星だった。
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王妃様が扇子で口元を隠す。
「まあ」
国王陛下は静かに紅茶を飲んでいる。
アルフレッドだけが平然としていた。
「分かりやすいな」
「兄上うるさい!」
即答だった。
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数分後。
ルシアンはソファへ座り、手紙を読んでいた。
……にやにやしながら。
隠せていない。
全然隠せていない。
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「……ルシアン様」
「え?」
「顔が緩んでいます」
慌てて真顔を作る。
だが遅い。
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王妃様はもう限界だった。
「ふふっ……!」
「母上、笑いすぎ!」
「だって、あまりにも可愛らしいのですもの」
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私は思わず吹き出した。
「何て書いてあったんですか?」
ルシアンは少しだけ視線を泳がせる。
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「……クッキー、美味しかったって」
小さな声。
だが。
その後も続いていた。
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『魚の形が一番可愛かったです』
『またお話ししたいです』
『ありがとうございました』
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ルシアンの耳まで真っ赤になる。
分かりやすすぎる。
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「良かったですね」
私が言う。
すると。
「だから違うって!」
全然違わない。
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その時だった。
「次はいつだ」
アルフレッドが突然言った。
「え?」
「次に会うのは」
ルシアンが固まった。
図星らしい。
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「……まだ決まってない」
「気になっているんだな」
「兄上うるさい!」
即答だった。
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王妃様が楽しそうに頷く。
「若いわねぇ」
「母上まで!」
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朝食会場に笑いが広がる。
その時。
私はふと手紙を見る。
そこには最後に小さく、
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『また、お会いできる日を楽しみにしています』
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と書かれていた。
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「……良かったですね」
私はもう一度そう言った。
今度は少しだけ優しく。
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ルシアンは数秒黙り、
それから小さく笑った。
「……うん」
その笑顔は、
いつもより少しだけ幸せそうだった。
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その時。
アルフレッドが静かに言う。
「では次は失敗するな」
「何を!?」
「魚の形以外だ」
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ルシアンが固まる。
私は吹き出した。
王妃様は肩を震わせている。
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どうやら弟王子の恋は、
まだまだ始まったばかりらしい。
こうして悪役令嬢は――
今日もまた、新しい恋の行方を温かく見守るのだった。




