第147話 悪役令嬢、子どもたちとパン耳ラスクを作ります
数日後。
私は再び孤児院を訪れていた。
「アメリアお姉ちゃんー!」
「きたー!」
元気いっぱいの声。
小さな足音が一斉に駆け寄ってくる。
私は思わず笑ってしまう。
「今日は、おやつを一緒に作りましょう」
「おやつ!?」
「やったー!!」
一気に歓声が上がった。
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孤児院の小さな厨房。
私は冷凍庫を開ける。
すると。
「……ありました」
中には、袋いっぱいのパンの耳。
以前、みんなで厚焼き卵サンドを作った時に残しておいたものだった。
「パンの耳だー!」
「覚えてる!」
子どもたちが嬉しそうに声を上げる。
「捨ててなかったんですね!」
年上の女の子が驚いたように言う。
私は小さく笑った。
「まだ美味しく食べられますから」
その時。
「……アメリアらしいな」
低い声。
振り向く。
アルフレッドだった。
今日も当然のように来ている。
子どもたちはすっかり慣れていた。
「王子さまも作る!?」
「見ているだけだ」
即答だった。
だが。
誰も信じていない。
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「まずは自然解凍します」
私は冷凍されていたパン耳をお皿へ広げる。
「重ならないように置くのがポイントです」
「なんでー?」
「水分が抜けやすくなるからです」
子どもたちが真剣に聞いている。
可愛い。
しばらくして。
「見てください」
私はパン耳を持ち上げる。
「少し水分が出ています」
「ほんとだ!」
「これを、そのまま焼くとベチャっとしやすいんです」
私はキッチンペーパーで優しく押さえる。
「こうやって、水分を取ります」
「トントンするんだ!」
「はい」
子どもたちも真似し始めた。
小さな手が、一生懸命パン耳を押さえている。
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次は空煎り。
「まずは水分を飛ばします」
私はフライパンへパン耳を並べる。
「油は入れません」
「えー!?」
子どもたちが目を丸くした。
「先にカリカリへ焼くと、後からバターを絡めた時にザクザクになるんです」
カサカサ。
軽い音がし始める。
「いい匂いー!」
「パンの匂い!」
子どもたちが目を輝かせる。
私は思わず笑った。
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しばらくして。
「はい、ここからがお楽しみです」
私は大きな袋を取り出した。
「シャカシャカタイムです」
「シャカシャカ!?」
一気に盛り上がる。
空煎りしたパン耳を袋へ入れる。
そこへ、溶かしたバター。
「まずはこれを振ります」
「やりたい!」
「ぼくも!」
小さな手がいっぱい上がった。
「順番ですよ」
子どもたちが交代で袋を振る。
シャカシャカシャカ!
厨房へ楽しそうな音が響いた。
その後。
砂糖を投入。
再び――
「シャカシャカー!!」
大盛り上がりだった。
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「できたー!」
子どもたちが一斉にラスクを受け取る。
細長いパン耳ラスク。
小さな子でも持ちやすい形だった。
「カリカリするー!」
「甘い!」
「ザクザク!」
夢中で頬張る子どもたちを見て、私は思わず笑ってしまう。
「いっぱい噛むと、美味しいですね」
すると。
「もう一本食べたい!」
「ぼくも!」
小さな手が次々伸びる。
「順番ですよ」
私は笑いながら、出来上がったラスクをお皿へ並べていった。
その時。
「……確かに止まらんな」
低い声。
振り向く。
アルフレッドだった。
いつの間にか、普通に二本目を食べている。
「王子さま、いっぱい食べてる!」
子どもたちが笑い出す。
アルフレッドは平然としていた。
「問題ない」
「それ便利ですね」
私は思わず吹き出す。
すると。
「また作りたい!」
小さな女の子が、ラスクの入った袋を大事そうに胸へ抱えながら言った。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
私は小さく頷いた。
「簡単ですから、ぜひ作ってみてください」
甘い香りと、子どもたちの笑い声が、孤児院いっぱいへ広がっていった。
その時。
「……美味しいものって、嬉しいね」
小さな男の子がぽつりと呟く。
私は静かにその言葉を聞く。
すると。
アルフレッドが隣で小さく目を細めた。
「お前らしいな」
低い声。
でも。
どこか誇らしそうだった。
私は少しだけ照れながら笑う。
「……もったいないですから」
すると。
「そこが好きなんだろうな」
アルフレッドがぽつりと呟いた。
「え?」
「何でもない」
絶対何か言いましたよね。
だが。
その横顔は少しだけ優しかった。
こうして悪役令嬢は――
子どもたちと一緒に、小さな“美味しい幸せ”を作っていくのだった。




