表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
147/160

第147話 悪役令嬢、子どもたちとパン耳ラスクを作ります

数日後。


私は再び孤児院を訪れていた。


「アメリアお姉ちゃんー!」


「きたー!」


元気いっぱいの声。


小さな足音が一斉に駆け寄ってくる。


私は思わず笑ってしまう。


「今日は、おやつを一緒に作りましょう」


「おやつ!?」


「やったー!!」


一気に歓声が上がった。


---


孤児院の小さな厨房。


私は冷凍庫を開ける。


すると。


「……ありました」


中には、袋いっぱいのパンの耳。


以前、みんなで厚焼き卵サンドを作った時に残しておいたものだった。


「パンの耳だー!」


「覚えてる!」


子どもたちが嬉しそうに声を上げる。


「捨ててなかったんですね!」


年上の女の子が驚いたように言う。


私は小さく笑った。


「まだ美味しく食べられますから」


その時。


「……アメリアらしいな」


低い声。


振り向く。


アルフレッドだった。


今日も当然のように来ている。


子どもたちはすっかり慣れていた。


「王子さまも作る!?」


「見ているだけだ」


即答だった。


だが。


誰も信じていない。


---


「まずは自然解凍します」


私は冷凍されていたパン耳をお皿へ広げる。


「重ならないように置くのがポイントです」


「なんでー?」


「水分が抜けやすくなるからです」


子どもたちが真剣に聞いている。


可愛い。


しばらくして。


「見てください」


私はパン耳を持ち上げる。


「少し水分が出ています」


「ほんとだ!」


「これを、そのまま焼くとベチャっとしやすいんです」


私はキッチンペーパーで優しく押さえる。


「こうやって、水分を取ります」


「トントンするんだ!」


「はい」


子どもたちも真似し始めた。


小さな手が、一生懸命パン耳を押さえている。


---


次は空煎り。


「まずは水分を飛ばします」


私はフライパンへパン耳を並べる。


「油は入れません」


「えー!?」


子どもたちが目を丸くした。


「先にカリカリへ焼くと、後からバターを絡めた時にザクザクになるんです」


カサカサ。


軽い音がし始める。


「いい匂いー!」


「パンの匂い!」


子どもたちが目を輝かせる。


私は思わず笑った。


---


しばらくして。


「はい、ここからがお楽しみです」


私は大きな袋を取り出した。


「シャカシャカタイムです」


「シャカシャカ!?」


一気に盛り上がる。


空煎りしたパン耳を袋へ入れる。


そこへ、溶かしたバター。


「まずはこれを振ります」


「やりたい!」


「ぼくも!」


小さな手がいっぱい上がった。


「順番ですよ」


子どもたちが交代で袋を振る。


シャカシャカシャカ!


厨房へ楽しそうな音が響いた。


その後。


砂糖を投入。


再び――


「シャカシャカー!!」


大盛り上がりだった。


---


「できたー!」


子どもたちが一斉にラスクを受け取る。


細長いパン耳ラスク。


小さな子でも持ちやすい形だった。


「カリカリするー!」


「甘い!」


「ザクザク!」


夢中で頬張る子どもたちを見て、私は思わず笑ってしまう。


「いっぱい噛むと、美味しいですね」


すると。


「もう一本食べたい!」


「ぼくも!」


小さな手が次々伸びる。


「順番ですよ」


私は笑いながら、出来上がったラスクをお皿へ並べていった。


その時。


「……確かに止まらんな」


低い声。


振り向く。


アルフレッドだった。


いつの間にか、普通に二本目を食べている。


「王子さま、いっぱい食べてる!」


子どもたちが笑い出す。


アルフレッドは平然としていた。


「問題ない」


「それ便利ですね」


私は思わず吹き出す。


すると。


「また作りたい!」


小さな女の子が、ラスクの入った袋を大事そうに胸へ抱えながら言った。


胸の奥が、じんわり温かくなる。


私は小さく頷いた。


「簡単ですから、ぜひ作ってみてください」


甘い香りと、子どもたちの笑い声が、孤児院いっぱいへ広がっていった。


その時。


「……美味しいものって、嬉しいね」


小さな男の子がぽつりと呟く。


私は静かにその言葉を聞く。


すると。


アルフレッドが隣で小さく目を細めた。


「お前らしいな」


低い声。


でも。


どこか誇らしそうだった。


私は少しだけ照れながら笑う。


「……もったいないですから」


すると。


「そこが好きなんだろうな」


アルフレッドがぽつりと呟いた。


「え?」


「何でもない」


絶対何か言いましたよね。


だが。


その横顔は少しだけ優しかった。


こうして悪役令嬢は――


子どもたちと一緒に、小さな“美味しい幸せ”を作っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ