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悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


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141/160

第141話 悪役令嬢、恋する妹を見守ります

噴水祭りの翌朝。


私は朝から、なんとなく予感していた。


「……静かですね」


厨房でパンを並べながら呟く。


すると。


「誰がですか?」


見習いが首を傾げた。


「セシリアです」


昨日の夜から、妙に静かだった。


嫌な予感しかしない。


---


その時だった。


「お、お姉様……」


小さな声。


振り向く。


そこにはセシリアが立っていた。


……分かりやすすぎる。


「寝不足?」


即答だった。


セシリアがびくっと肩を跳ねさせる。


「な、なぜ分かりますの!?」


「顔に出ています」


真っ赤だった。


しかも。


手には、昨日ルシアンから貰ったガラス細工。


大事そうに握っている。


分かりやすすぎる。


---


「……楽しかった?」


私が小さく聞く。


すると。


セシリアが少し俯いて――


それから、ふわっと笑った。


「……すごく」


その笑顔が、昨日までより少しだけ大人びて見えた。


私は思わず目を細める。


「良かったわね」


「はい……!」


嬉しそうだった。


本当に。


---


「ルシアン様って、不思議なんです」


ぽつり、とセシリアが呟く。


「不思議?」


「はい」


少し考えるように視線を揺らす。


「一緒にいると、ずっと笑ってしまって」


「緊張するのに、楽しくて」


「気づいたら、あっという間に時間が過ぎていました」


恋する女の子の顔だった。


私は小さく笑う。


「それは大変ね」


「お姉様!」


セシリアが真っ赤になる。


可愛い。


---


その時だった。


「義姉上ー!」


勢いよく扉が開いた。


来た。


「誰が義姉上ですか」


反射的に返す。


だが。


今日のルシアンも分かりやすすぎた。


機嫌が良い。


ものすごく良い。


しかも。


「……鼻歌?」


私が思わず呟く。


ルシアンが固まった。


「えっ」


「歌っていましたよ」


「うそ!?」


完全に無意識だったらしい。


---


セシリアが思わず吹き出す。


ルシアンがそちらを見る。


そして。


止まった。


「……あ」


昨日の続きみたいに、空気が止まる。


セシリアも少しだけ頬を染めた。


見つめ合う。


分かりやすすぎる。


---


「……昨日、楽しかったね」


先に口を開いたのはルシアンだった。


少し照れたように笑う。


すると。


セシリアも、そっと笑った。


「はい」


柔らかい声だった。


その瞬間。


ルシアンの耳がまた赤くなる。


本当に分かりやすい。


---


その時。


「何をしている」


低い声。


振り向く。


アルフレッドだった。


完全に見ていた。


「兄上!?」


「騒がしい」


だが。


少しだけ口元が緩んでいる。


絶対面白がっている。


---


アルフレッドは弟を見る。


そして。


「浮かれているな」


「うっ」


図星だった。


ルシアンが言葉に詰まる。


すると。


「兄上だって、新婚旅行から帰ってきた時ずっと機嫌良かったじゃん!」


反撃した。


私は思わず吹き出しそうになる。


アルフレッドの動きが一瞬止まった。


「……ルシアン」


「何!?」


「余計なことを言うな」


完全に図星だった。


---


セシリアが小さく笑う。


その笑顔を見て。


ルシアンまでつられて笑っていた。


気づけば。


二人とも自然に並んでいる。


昨日より、少し近い距離で。


私はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。


(……良かった)


その時。


「楽しそうだな」


低い声。


隣を見る。


アルフレッドがこちらを見ていた。


私は少しだけ笑う。


「はい」


「少し前の私たちみたいです」


その瞬間。


アルフレッドが少しだけ目を細めた。


「……お前は最初から分かりやすかった」


「っ……!」


不意打ちだった。


私は一気に顔が熱くなる。


「急にそういうことを言わないでください!」


「事実だ」


即答。


本当にずるい。


---


その横では。


「次、いつ会う?」


「えっ」


「また出かけたいなって」


ルシアンが少し照れながら笑っていた。


セシリアも、少しだけ頬を赤くしながら――


でも。


ちゃんと笑って頷いた。


「……はい」


その空気が、あまりにも初々しくて。


私は思わず笑ってしまう。


こうして悪役令嬢は――


少しずつ育っていく、新しい恋を温かく見守っていくのだった。

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