第133話 悪役令嬢、王太子と湖畔の街で夫婦になります
翌朝。
湖畔の離宮は、柔らかな朝日に包まれていた。
窓の外では、水面がきらきらと輝いている。
私はぼんやりと、その光を眺めていた。
「……綺麗」
小さく呟く。
その時。
「おはようございます」
静かな声。
振り向く。
エマだった。
「朝食の準備が整っております」
その瞬間。
昨夜のことを思い出す。
同じベッド。
寄り添って眠ったこと。
「……っ」
一気に顔が熱くなる。
エマは一瞬だけ私を見て――
ほんの少しだけ目を細めた。
「……よく眠れましたか?」
「そ、その質問必要ですか!?」
「必要かと」
必要ない。
絶対に。
その後ろでは、カイルが静かに目を逸らしていた。
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朝食後。
私たちは湖畔の街へ来ていた。
石畳の道。
花で飾られた店先。
焼き立てパンの香り。
穏やかな湖風。
「わぁ……」
思わず目を輝かせる。
「気に入ったか」
アルフレッドが静かに問う。
「はい!」
自然と笑顔になる。
王都とは違う。
穏やかで、温かい街だった。
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小さな雑貨店。
窓辺に並ぶ陶器。
淡いクリーム色のカップ。
青い花模様。
「ご夫婦用ですよ」
店主の言葉に、一気に顔が熱くなる。
アルフレッドは当然のように二つ手に取った。
「これにするか」
「え?」
「嫌か?」
「嫌ではありませんが……!」
即決で購入が決まる。
さらに。
「名前も入れられますよ」
「入れてもらおう」
「早すぎませんか!?」
「記念だ」
こうしてカップには二人の名前が刻まれた。
『Alfred』
『Amelia』
私はそっと指先で触れる。
(……夫婦なんですね)
胸がじんわりと熱くなる。
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その後も街を歩く。
焼き菓子屋。
紅茶店。
花屋。
気づけば、手にはたくさんの包みがあった。
王妃様へ紅茶。
国王陛下へ燻製。
ルシアンへ焼き菓子。
セシリアへリボン。
エマへハーブティー。
カイルへ保存食。
「増えましたね」
「お前が選ぶとそうなる」
アルフレッドの言葉に、私は小さく笑う。
「だって、似合いそうで」
「知っている」
短い返事。
その横顔が、少しだけ柔らかかった。
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夕暮れ。
湖畔のレストラン。
香草で焼いた湖魚。
焼き立てのパン。
温かなスープ。
そして――
木の実のタルト。
「美味しそうです……!」
思わず声が弾む。
アルフレッドが小さく笑う。
「今日は特に楽しそうだな」
「だって楽しいです」
自然と笑顔になる。
「いっぱい買い物もしましたし」
机の横にはお土産が並んでいた。
「少し買いすぎたかもしれません」
「問題ない」
ワインを一口飲みながら、アルフレッドは言う。
「お前が楽しそうだったからな」
胸がじんわりと熱くなる。
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食事を終え、店を出る。
湖から吹く風が、髪を揺らした。
私は小さく息を吐く。
「今日は、本当に楽しかったです」
「そうだな」
短い返事。
でも、それで十分だった。
アルフレッドが当然のように手を取る。
私は少しだけ迷って――
もう振り払わなかった。
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離宮へ戻ると、夜の静けさが広がっていた。
「……落ち着きますね」
私は窓辺に立つ。
湖は月明かりに揺れていた。
アルフレッドが隣に来る。
「そうだな」
私はそっと、昼に買ったカップを取り出す。
「もう使ってしまいました」
「記念だ」
紅茶を注ぐ。
湯気がふわりと広がる。
「今日は楽しかったです」
「そうだな」
短い会話。
でも、それで十分だった。
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アルフレッドが静かに言う。
「アメリア、今日は楽しそうで良かった」
アメリアは少しだけ笑って。
「はい、夢のようです」
少しだけ間を置いて。
アルフレッドは静かに目を細める。
「そうか」
それだけ言って、視線を外す。
でも、その表情はほんの少し柔らかかった。
そのまま。
彼は当然のように私を抱き寄せた。
夜の湖が静かに揺れている。
温かい。
落ち着く。
不思議なくらい。
「おやすみ、アメリア」
「……おやすみなさい」
窓の外では、夜風が静かに湖を揺らしていた。
こうして悪役令嬢は――
王太子と共に、“夫婦としての日常”を少しずつ重ねていくのだった。




