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悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


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130/160

第130話 悪役令嬢、祝福の中で王太子の花嫁になります

大聖堂の中は、静寂に包まれていた。


高い天井。


差し込む光。


色鮮やかなステンドグラス。


その中央で。


私はアルフレッドの隣に立っている。


胸が、うるさいほど鳴っていた。


(……本当に、結婚するんですね)


少し前まで、“悪役令嬢”と呼ばれていた私が。


今は。


この国の王太子の隣にいる。


「アメリア」


低い声。


隣を見る。


アルフレッドが静かにこちらを見ていた。


「顔が強張っている」


「だ、誰のせいですか……」


「私だな」


即答だった。


少しだけ、緊張がほぐれる。


すると。


神官の声が、大聖堂へ響いた。


---


「アルフレッド・ルミエール殿下」


「あなたは、アメリア・フォン・ローゼリアを妻とし、生涯愛し、支え続けることを誓いますか」


静寂。


アルフレッドは真っ直ぐ前を向いたまま、静かに答える。


「誓う」


低く。


揺るぎない声だった。


胸が熱くなる。


---


「アメリア・フォン・ローゼリア」


「あなたは、アルフレッド・ルミエール殿下を夫とし、生涯愛し、共に歩むことを誓いますか」


私は小さく息を吸う。


そして。


「誓います」


はっきりと答えた。


不思議だった。


もう、怖くない。


この人の隣を、自分で選んだから。


---


「では――誓いの口づけを」


空気が、少しだけ揺れる。


私はそっと顔を上げた。


アルフレッドが静かに近づく。


その手が、そっと私の頬へ触れた。


優しく。


壊れ物みたいに。


そして。


静かな口づけが落ちる。


「……っ」


一瞬。


世界が止まった気がした。


次の瞬間。


大聖堂中へ、盛大な拍手が響き渡る。


「おめでとうございます!」


「王太子殿下!」


「アメリア様!」


歓声が広がる。


私は顔が熱くなるのを感じながら、思わずアルフレッドを見る。


すると。


彼はほんの少しだけ目を細めた。


「赤いな」


「……誰のせいですか」


「私だな」


また即答だった。


ずるい。


本当にずるい。


---


そして。


大聖堂の扉が開く。


次の瞬間。


ふわり、と花びらが舞った。


「わぁ……!」


白。


淡い桃色。


クリーム色。


無数の花びらが、祝福するように私たちへ降り注ぐ。


子どもたちまで、夢中で花を投げていた。


小さな手から放たれた花びらが、風に乗ってきらきら舞う。


胸の奥が、じんわり熱くなる。


---


その時だった。


大聖堂の階段の両側へ、孤児院の子どもたちが並ぶ。


男の子たちは少し大きめの正装姿。


慣れない襟元を何度も直しながら、それでも一生懸命胸を張っている。


女の子たちは、淡い色のワンピースに白いリボン。


小さな花飾りまでつけてもらっていた。


その手には、まだ花びらが残っている。


少し緊張した顔。


でも。


私と目が合った瞬間――


ぱあっと笑顔になった。


そして。


♪〜〜〜


優しい歌声が、大聖堂前へ響き始めた。


「アメリアお姉ちゃん!」


「おめでとう!」


小さな手が、一斉に振られる。


胸の奥が、じんわり熱くなる。


「歌、いっぱい練習したの!」


「今日は失敗しないもん!」


子どもたちは顔を見合わせると、もう一度歌い始めた。


優しくて。


温かくて。


祝福でいっぱいの歌。


風に乗って、大聖堂前へ広がっていく。


花びらが舞う。


子どもたちが笑う。


王都の人々まで、優しい顔で見守っている。


私は思わず口元を押さえた。


「……ずるいです」


涙が出そうになる。


---


その時だった。


ざわり、と空気が揺れた。


人混みの奥。


誰かが腕を大きく振り上げる。


白い何かが、こちらへ飛ぼうとして――


次の瞬間。


「確保しろ」


低い声。


一瞬だった。


黒い影が滑り込む。


カイルだった。


男の腕を捻り上げ、そのまま地面へ押さえ込む。


「ぐっ!?」


周囲の護衛騎士たちも即座に動いた。


ざわめき。


私は一瞬、どきりとした。


だが。


「……問題ありません」


カイルが静かに立ち上がる。


その足元には、割れた卵が石畳へ広がっていた。


私は胸を撫で下ろした。


そして、護衛騎士たちへ小さく頭を下げる。


今日という日を守ってくれたことへ、心から感謝した。


---


その時。


隣から低い声。


「泣いているな」


「泣いてません……!」


完全に泣いていた。


アルフレッドは小さく息を吐き――


そして。


そっと、私の涙を拭った。


「今日は祝ってもらえ」


低く、優しい声。


その言葉に。


胸の奥が、また熱くなる。


「……はい」


私は涙を堪えながら、小さく笑った。


---


遠くでは、鐘が鳴っている。


王都中の祝福。


子どもたちの歌声。


温かな花びら。


そして。


隣には、アルフレッドがいる。


私はそっと、彼の腕へ寄り添った。


すると。


彼は何も言わず、静かに私の手を握る。


その手は、どこまでも温かかった。


こうして悪役令嬢は――


たくさんの祝福に包まれながら、


王太子の花嫁となったのだった。

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