第122話 悪役令嬢、結婚式の日取りが決まります
数日後。
私は朝から落ち着かなかった。
理由は分かっている。
今日は――結婚式の日取りを決める日だからだ。
「……無理です」
小さく呟く。
「何がですか?」
エマが即座に返した。
「全部です」
「却下です」
最近、エマがアルフレッド化している気がする。
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応接室へ入る。
そこには既に、
国王陛下。
王妃様。
アルフレッド。
そしてルシアンまで揃っていた。
「来たわねぇ!」
王妃様が満面の笑みで手を振る。
嫌な予感しかしない。
私は静かに席へ座った。
すると。
「では、決めましょうか」
王妃様が嬉しそうに資料を広げる。
「半年後が良いと思うのだけれど」
「は、半年後!?」
思わず声が裏返った。
早い。
いや、王族基準では普通なのだろうか。
分からない。
すると。
「妥当だな」
アルフレッドが平然と頷いた。
「妥当なんですか!?」
「準備期間としては十分だ」
十分なのか。
全然分からない。
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「ドレスもありますしねぇ」
王妃様がうっとりしながら言う。
「招待客も、会場も、料理も、装花も!」
「料理……」
そこに反応してしまった。
すると。
「もちろん、アメリアさんにも確認してもらうわよ?」
王妃様が楽しそうに笑う。
「王太子妃ですもの」
胸がどきりと跳ねた。
まだ慣れない。
その呼び方に。
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その時だった。
「義姉上」
ルシアンがにやにやしながらこちらを見る。
「半年後には本当に義姉上かぁ」
「誰が義姉上ですか!」
反射的に返してしまう。
だが頭が追いつかない。
……いや、半年後に結婚するということは、本当にこの生意気な第二王子から「義姉上」と呼ばれる立場になってしまうのでは!?
私は思わず固まった。
「え、今さら気づいたの?」
ルシアンが吹き出す。
「う、うるさいです!」
「可愛い反応だねぇ」
「母上まで!」
王妃様は肩を震わせて笑っていた。
国王陛下まで苦笑している。
「賑やかで良いではないか」
完全に他人事である。
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すると。
「静かにしろ」
低い声。
アルフレッドだった。
「兄上は余裕そうだよね」
「当然だ」
即答だった。
悔しい。
どうしてこの人だけ平然としているのだろう。
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「ですが」
王妃様が楽しそうに言う。
「アルフレッド、あなた昨日から機嫌が良すぎるわよ?」
空気が止まった。
ルシアンが吹き出す。
「やっぱり!?」
「うるさい」
「絶対楽しみにしてるでしょ!」
「当然だ」
また即答だった。
私は顔を覆いたくなった。
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「アメリア」
低い声。
顔を上げる。
アルフレッドが静かにこちらを見ていた。
「何ですか……」
「不安か」
確認するような声。
私は少しだけ迷って――小さく頷いた。
「……少しだけ」
すると。
こつん。
軽く頭を叩かれた。
「考えすぎだ」
低い声。
「隣にいればいい」
その言葉だけで。
胸の奥が、じんわり熱くなる。
「……ずるいです」
「何がだ」
「そういうことを、平然と言うところです」
彼は少しだけ目を細めた。
「事実だ」
またそれだ。
本当にずるい。
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その時。
「決まりですねぇ!」
王妃様がぱん、と手を叩いた。
「半年後、王宮大聖堂にて結婚式を行います!」
「おお!」
ルシアンが拍手する。
国王陛下も静かに頷いた。
私はまだ現実感がない。
半年後。
結婚。
王太子妃。
頭の中が追いつかない。
すると。
隣から、そっと手が触れた。
アルフレッドだった。
「逃げるな」
「……逃げません」
小さく返す。
「私が選んだので」
彼は静かに頷いた。
その横顔は、どこか少しだけ優しかった。
こうして悪役令嬢は――
ついに“その日”へ向けて、本格的に歩き始めるのだった。




