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悪役令嬢ですが、王宮厨房から王太子妃になりました  作者: 星乃茶々


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104/160

第104話 悪役令嬢、妹の成長と新しい空気に気づきます

数日後。


私は王宮の応接室へ向かっていた。


今日は、久しぶりにセシリアが王宮へ来る日だ。


「セシリア様は、数日こちらへ滞在されます」


エマが静かに説明する。


「王妃様主催のお茶会と、社交見学も兼ねているそうです」


「そうなのね」


つまり――


本格的な“社交界デビュー前”の勉強だ。


(セシリアも、少しずつ大人になっているのね)


そう思った時だった。


「お姉様!」


ぱっと扉が開く。


私は思わず目を見開いた。


「セシリア……?」


淡い水色のドレス。


柔らかく結い上げた髪。


以前より少し大人びた雰囲気。


そして何より――


立ち居振る舞いが綺麗だった。


「お久しぶりです、お姉様」


優雅に一礼する。


私は一瞬、言葉を失った。


(……すごく成長してる)


前みたいに飛びついてこない。


ちゃんと淑女だ。


「まあ」


王妃様が嬉しそうに目を細める。


「素敵なレディになったわねぇ」


「ありがとうございます」


セシリアは少し照れながら微笑んだ。


その時。


「……え」


小さな声が落ちる。


ルシアンだった。


私はそちらを見る。


固まっている。


「ルシアン様?」


「……いや」


視線を逸らした。


耳が少し赤い。


(……あれ?)


セシリアも気づいたらしい。


「ルシアン殿下、お久しぶりです」


ふわりと笑う。


その瞬間。


「っ……」


ルシアンが完全に固まった。


「え、ちょっと待って」


「何でしょう?」


「雰囲気変わってない?」


「そ、そうでしょうか?」


セシリアが少し照れる。


ルシアンは妙に落ち着かない様子で頭をかいた。


「いや……その……」


珍しく歯切れが悪い。


アルフレッドがぼそりと呟く。


「分かりやすいな」


「兄上うるさい」


即答だった。


王妃様が扇子で口元を隠している。


絶対楽しんでいる。


---


その日の午後。


王妃様主催のお茶会が開かれた。


セシリアも、少し緊張しながら参加している。


だが――


「本当に素敵なお菓子ですわ」


「まあ、ありがとうございます」


以前より会話が自然だった。


相手の話をきちんと聞き、


柔らかく返している。


(……頑張ったのね)


私は思わず嬉しくなる。


その時。


「義姉上」


小声でルシアンが近づいてきた。


「誰が義姉上ですか」


「いやでも、見た?」


「何をですか」


ルシアンがそっとセシリアを見る。


「すごくレディっぽい」


「元から可愛いわよ」


「そうじゃなくて!」


声が少し大きくなる。


私はじっとルシアンを見る。


「……ルシアン様?」


「何でもない!」


分かりやすすぎる。


---


夜。


お茶会も終わり、皆でゆっくりお茶を飲んでいた。


セシリアは少し疲れたようだが、それでも楽しそうだった。


「でも、安心しました」


セシリアがぽつりと言う。


「何が?」


「お姉様が、とても幸せそうだったので」


「っ……!」


不意打ちだった。


「そ、そうかしら」


「はい」


セシリアは嬉しそうに笑う。


「殿下と並んでいるお姉様、本当に素敵ですわ」


顔が熱い。


やめてほしい。


すると。


「当然だ」


アルフレッドが真顔で言った。


「殿下!?」


ルシアンが吹き出す。


「兄上、そこ即答する!?」


王妃様はもう完全に楽しんでいた。


私は額を押さえる。


平和である。


でも――


悪くない。


---


数日後。


セシリアが帰る日。


「お姉様、ありがとうございました」


「またいつでも来てね」


「はい!」


馬車へ乗り込む直前。


セシリアがふと思い出したように振り返った。


「あ、そうだわ」


「?」


「ルシアン殿下にも、お礼のお手紙を書きますね」


「え」


固まったのはルシアンだった。


セシリアは気づかないまま、にこりと笑う。


「お茶会で色々助けていただきましたし」


「そ、そう……」


耳が赤い。


分かりやすすぎる。


馬車がゆっくり動き出す。


セシリアは窓から大きく手を振っていた。


それを見送りながら。


「……騒がしくなるな」


アルフレッドがぼそりと言う。


「楽しそうですね」


「知らん」


そう言いながら、少しだけ口元が緩んでいた。


ルシアンはまだ馬車を見ている。


私は思わず小さく笑った。


こうして悪役令嬢は――


大切な人たちとの新しい関係を、少しずつ見守っていくのだった。

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