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生徒会、ないしょの欠員3  作者: キュー山はちお
1章 のぞみ かなえたまえ
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1章の6 正解さえすれば負けることはない

 スシ会長(マヤ)が、プレゼンする二人を見つめた。

(これではっきりしました。オロネちゃんはどさくさに紛《まぎ》れて、スシくんにお礼のキスをする気なんですね)

 続いてクモル芸能人(スシ)に「いいですか、オロネちゃんに促《うなが》されても、絶対に正解しないで」という、かなり強めの念を送った。クモル芸能人(スシ)の表情が変わったので、伝わった様子だった。

 オロネには「スシの化身がバレて学校にいられなくなったら、一緒に遠い島に行こう」とか、「誰もスシの彼女にならなかったら、あたしが責任持って彼女になる」とか、本気か気まぐれかわからないことを言った前歴がある。カニという者があるとはいえ、何か大義名分があれば、スシに平気でキスしてしまうかもしれない。

(スシ会長(マヤ)は慌《あわ》てません。こういうこともあろうかと、さっき泥縄第三の正副会長を見送るのにかこつけて、スシくんと化身交換してあります。わたしが絶対に正解して、オロネちゃんのキスを受けて立ちます。オロネちゃんがスシくんにキスしたつもりでも、中の人はこのマヤなのです)

 スシ会長(マヤ)は「絶対に正解する」とか、けっこう不確実なものを含んでいる割に、妙に自信満々だった。ふと、自分はスシの声でしゃべれないのを思い出し、オロネに答えを聞かれたときに備えて、生徒会室内の秘密化身室からスケブと太い筆記用具を持ってきた。テレビのクイズ番組のフリップの代わりにするつもりだ。

「オロネです。さて、次の回答者を指名しますね。あたしの移籍のお骨折りに感謝を込めて、スシ会長。また、あたしのホームステイに自室を提供くださったことに感謝を込めて、クモル芸能人にお願いします」

 スシ会長(マヤ)とクモル芸能人(スシ)が席を立った。

 スシ会長(マヤ)はダークなほほえみをたたえていた。

(クモル芸能人(スシ)の答えがどうであろうと、わたしが正解さえすれば、ここでの負けはない。仮に同じ答えであっても、同点決勝クイズには進めますから。ここは絶対に当てますよ。もう長続きマンガの見当はついています。『ふたり』がいいなら『ONE』もいいはず。だから答えは『1』で決まりでしょう! 『タイトルと裏腹に、女子キャラがビキニばかり着ているマンガ』は、115巻到達!)

 スシ会長(マヤ)は、顔に半ば勝利宣言が出てしまっていた。

「じゃあクモ・・・」

 オロネがクモル芸能人(スシ)を指名しようとしたのを、スシ会長(マヤ)がムリヤリ遮《さえぎ》り、「オレが答えます! オレ! オレ!」と書いたスケブを押し付けんばかりにして、猛アピールした。

(それにしても、スケブに字を書くと、つばが出そうになって、くろうしますね)

 猛アピールは続き、オロネはついに根負けした。

「じゃあ、スシ会長どうぞ」

「『1』です!」=スケブの文字=

「おめでとう! 正解です」

「やったあ!」=スケブ=

「じゃあ、キスします。ところでマヤちゃんの姿が見えないけど、もしこれを見ていたら、スシ会長は怒られるんじゃない?」

「ふふん、かまうもんか!」=スケブ=


 それを聞いて、オロネは妖《あや》しいほほえみをたたえた。

「そうなの。安心した」

(?)


 オロネはスシ会長(マヤ)に、そっと近づいた。

 ちゅっ

(?)

「ふふっ」

(え? 一瞬すぎない? 拍子抜けというか、オロネちゃんのスシくんへの気持ちって、こんな? よかったといえばよかったけど・・・)

「オロネです。さて、クモル芸能人にも聞いてみましょう!」

「クモル芸能人(スシ)です。スシ会長(マヤ)の正解で、おしまいでしょ? あたしが答えてどうなるものでもないけど。じゃあ残りの『3』で」

「おめでとう! 正解です!」

 スシ会長(マヤ)は、ぎょっとした。

「どういうこと? 1位は『1』でしょ?」=スケブ=

「『1』と『3』は同点1位です!」

「うっ!」=スケブ=

「そう、依頼があればどんなターゲットでも仕留める『13』のマンガは、世界記録の222巻!」

(やーらーれーたー! 言われてみればその通り。反論の余地なし・・・)

「約束通り祝福をあげます! 同時に、泥縄第二の勝利の女神引継ぎの意味も込めたいと思います」

「クモル芸能人(スシ)ですけど、泥縄第二の女神なら、泥縄第一の卒業生のクモルさんに引き継いでもしょうがないのでは?」(そうだよ、中の人は男だから。女神だったら女子に引き継ぐべきだ)

「ごちゃごちゃうるさいぞスシ」


 オロネは、クモル芸能人(スシ)を強く抱きしめた。


 ん-。

 ん-。

 ん-。

 ん-。


 キスが2・5分にも及んだので、クモヤとスハとクロハとキラとスシ会長(マヤ)とで、二人を引き離した。カニは椅子に座ったまま平然としていた。

「ふう。ううーん」

 大きな思いを遂《と》げて倒れそうになったオロネを、クモル芸能人(スシ)がとっさに支えた。

「ひそひそ、スシ会長(マヤ)ですけど、こらっ! クモル芸能人(スシ)! オロネちゃんとわたしのときと違って、濃厚すぎですよ!」

「ひそひそ、スシ会長(マヤ)。あなたが『マヤが見ていても、かまうもんか』なんて書くから、オロネさんのスイッチが入ったんですよ」


 一日生徒会長(半日生徒会長)イベントはお開きとなった。送り出す側と迎え入れる側が顔をそろえていることから、キラの発案でカニ・オロネの歓送迎会が開かれることになった。

 先ほどのイベントを通じて、スシ会長(マヤ)の代わりにスシが声を出すのは、かなり大変なことがわかった。クモルが県外まで離れ、スケブのページも残り少なくなったので、クモル芸能人(スシ)とスシ会長(マヤ)は、本人に戻った。

 みんな笑顔で歓送迎会会場のファミレスに移動した。


「スシだけど、カニくん、オロネさん。さよならは言わないよ。行先は泥縄第一だから、すぐまた会えるよね。また一緒に何かできるよね」

「マヤから第一の会長のスハさんにお願いです。前期執行部でオロネちゃんは、再婚した両親の子ども同士のきょうだいで姉の自分(書記次長)より、弟のカニくんの役職が上(書記長)だったことを、本当は気にしていました。泥縄第一で副会長と書記長の人選をするとき、そのあたりを汲《く》んであげてください」

「そんなこと言わなくていいよマヤちゃん。カッコ悪いし」

「スハですが、わかりました。規約で、会長にするわけにはいきませんが、善処します」

 クモルとキクハも合流して、会は相当盛り上がった。


 翌日、新聞に「国内最高リーグから一つ下に落ちた地元サッカーチームが、練習拠点を変更する」という報が出た。

 市内のチームだが、今までは隣《となり》の町の拠点まで行って練習していた。行政の支援もあって、とてもいい場所ではあったのだが、こういう時勢でもあって、チーム全体がそこまで移動する時間と費用の問題が顕在化《けんざいか》。市内にある自社の狭い練習コートに移動することになったのだ。

 朝、寝床にいるとき、スシは新聞部のナハの電話で起こされた。

「ふわああ。はい、もしもし。なんだナハさんか」

「なんだじゃないでしょ。スシくん、チャンス到来よ! というか、これを逃したらもうおしまい、くらいのやつ」

「へ?」

「地元サッカーチームの練習拠点だったところが空《あ》くのよ」

「なんか、キラさんから、前にそれらしい話を聞いたような」

「泥縄第二の移転先は、ここしかないわ!」

「ええ? なんで?」

「この練習拠点は、もともと中学校だったの。しかも耐震校舎! 教室の数も、泥縄第二の全クラスが入って、お釣りがくるくらい。サッカーチームの拠点だったときには、施設使用料や固定資産税はみんな町持ちだったって。もし、そのまま維持してもらえれば、泥縄の学校経営側に大きなアピールになるわ! 諦《あきら》めるのはまだ早いよ」

「へえ、そりゃいいね。でも、市内を離れると、生徒のみんなの通学に支障が出ないかなあ? オレが実際そこの町から学校に通ってるけど、公共交通機関が少なくてバイク通学だよ」

「スシくん、あなたがバイク通学なのは、『ないしょ1』の冒頭で、さっそうとバイクで現れるドラマ的・ビジュアル的な都合からだと聞いてるけど」

「そうだったかな」

「みんながバスで通うようになれば、本数も増えるでしょ」

「ナハさんは、そういう展望ができるところが大人だよな。自転車通学の生徒はどうなるかな」

「つべこべ言わずに、きょうみんなを連れて、町役場にあいさつに行ってきなさい! ほかのところに取られる前に!」


 放課後、スシはバイクの後ろにマヤを乗せ、ほかのみんなが乗ったキクハの車を先導して、練習拠点だった旧中学校校舎へと急いだ。役場に連絡すると、ちょうど町長が午後に現地にいるというので、そこでいろいろと話をさせてもらうことになったのだ。

「ウイ。ムッシュスシ」

 隣町の町長は、繰り上げ当選したばかりの、キラの欧州出身の継父だ。

「泥縄第二高校の校長代行、キクハと申します」

「いつも娘のキラがお世話になっています。さっそくですが、みなさん、いいところに目をつけられた。もう来年度の町の予算案がいいとこ決まっていて、練習拠点への金銭的支援が宙に浮くところだったのです。そこへ高校がスポッと入ってくれれば、願ったりかなったり。町には高校がなく、中学を出た生徒はみな隣の市に通学を余儀なくされています。学校誘致は、議会にも提案しやすいこと請《う》け合いです。ただし、私立の学校経営側から分離して町立、あるいは近隣町村との教育組合立にしてと言われても、ちょっと無理です。あくまで私立高校を行政が側面支援するというだけ」

 みんなが喜ぶ中、キラだけは浮かない顔だった。

(スシは、キラさんから何かを聞いた気がする。何だっけ? はっきりとは言ってくれなかったけど、この話が進むと、キラさんは手放しで喜べないんじゃなかったか?)

「本来なら、町と学校経営理事会とで話をするのが筋ですが、ワタシも在校生の親だけに、いま学校内がどういう状況かわかっているつもりです。学校経営側の態度が軟化するのを待っていたら間に合わないので、12月議会に教職員・生徒会・保護者会の連名で、町の議員を通じて、場所使用検討を協議するための請願《せいがん》を出してください。だいたい通ります。それで、この拠点を狙っているほかの団体を足止めします。ただ一点、クリアしないといけない問題があるのですが」

「スシですけど、なんでしょう?」

「キラ」


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