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生徒会、ないしょの欠員3  作者: キュー山はちお
4章 つばさ わすれない
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4章の7 7人だから補充は必要ない(前編)

「えー、どうしよう」

「きょう元に戻らなかったら、わたしがこのままマヤの家に帰って、マヤはわたしの家に行かせるわ」

「そこまでしてもらうの、心苦しいんだけど」

 クロハ書記次長(マヤ)は、忙しく立ち働いている。

「別人格でも、見た感じ、まともそうでよかったけど」

 クロハ書記次長(マヤ)は、探し物が見つからないようで、戸惑っていた。

「うーん。スシくん、歴代会長のリスト、どこやったっけ」

「オレが会長になる機会に電子データ化して、原本は職員室の金庫にあるはず」

「じゃあ、データ直したら、金庫のも直さないとだね」

「キラだけど、そんな手間かけてもらうの、悪いわね」

「じゃあ、やめていい?」

「えー、やだよう。スシくんの次がマヤ副会長(クロハ)で、その次があたしで、またスシくん。わたしが、スシくんに挟《はさ》まれたい。包まれたい」

「なんか、言い方がヤダ」

「スシだけど。任期が一瞬でも、歴代リストに入れなきゃならないとすると、『半日生徒会長』のときのキロさんとクモルさんは、どうするか・・・①」

「マヤ副会長(クロハ)だけど、本校の生徒でない人間は対象外」


 御神体があって、ただでさえ狭い生徒会室に、女子が4人、どやどやと入って来た。


「クロハ書記次長(マヤ)だけど、ちょっとちょっと、あんたたち、呼んでないよ? なに勝手に来てるの」

 入って来たのは、きょう壮行試合をやった女子バレーボール部長のレサ、野球部マネージャーのサヤ、演劇部長のホキ、新聞部長&超常現象研究部長のナハ。

「スシです。どうしました、みなさん。レサさんなんか、部活忙しいでしょう?」

「レサです。だから、手短にお願いしようと思って」

「?」

 実は、入って来た4人は4人とも、「ないしょ2」以降忘れられていた「泥縄第二高校カミセブン」の一員だった。残りのメンバーは、生徒会執行部関係のマヤ、クロハ、キラ、オロネ。「セブン」なのに8人いるが、気にしないことになっている。

「単刀直入に言います。泥二《どろに》カミセブンは定員オーバーでしたが、オロネさんとキラさんが学校を離れることで、欠員ができました。つきましては、うちの留学生エースを、メンバーに加えてほしいのです・・・②」

「キヤです。オロネさんとキラさんの補充なのですから、執行部から出すべきです。自分で言うのもなんですが、わたしなんか適役ですよ?・・・③」

「キラです。わたしはすぐ戻ってくるし、それで7人になるから、いま補充する必要ないでしょ?・・・④ それに何? キヤさん、22歳のくせに、ずうずうしいでしょ。あなたが本校に在学していたとき、カミセブンだったのは知ってるけど」

「クロハ書記次長(マヤ)だけど、きょうは忙しいから、いつでもいいことは後回し! どうしても今すぐ留学生エースをカミセブンにしたいなら、レサちゃんが抜けて、その後釜《あとがま》ならいい・・・⑤」

「レサですが、立場に連綿《れんめん》としていると思われたくないですけど、ハイそうですかと飲めない条件なのも確か・・・⑥」

「スシです。お話はわかりました。わかりましたが、オレはカミセブンではないので、カミセブンの内部で相談して決めてください・・・⑦」

「ホキだけど、当事者に丸投げって、どうなのかな。ここはひとつ、生徒会長裁定としたら? ・・・⑧」

 キヤがレサに「きょうは議題が立て込んでいるので、次々に処理しないと間に合いません。会長裁定の結果はあとでお伝えしますから、部活にお戻りください・・・⑨」と言い聞かせ、背中をグイグイ押して、生徒会室から出した。

「スシくん! いい結果を聞かせてもらえることを願ってます!・・・⑩ ちょっと、押さないで!」

 立っているスペースが限られていたので、ホキとナハとサヤは、勝手に御神体に腰かけた。マヤ副会長(クロハ)は、神妙な顔をした。

「クロハ書記次長(マヤ)です。それでは生徒会執行部プラス、カミセブン(ホキ・ナハ・サヤ)の、拡大執行部会議を開きます。進行はわたくしが、議事録は非正規役員のキヤが務めます。議題が多いので、スムーズな進行にご協力ください。なお、ファイブファウルは次の試合に出られますが、レッドカードは次戦も出場停止です。そのため壮行試合で退場したマヤ副会長(クロハ)は、どこかに行って、この場にいないことをお伝えします・・・⑪」

「スシだけど、そこまで真面目にしなくても」

「では拡大執行部会議、議題⑫からスタート」

「⑫から?」

「キヤです。次期生徒会長選挙が2月にありますよね。あまり再選出馬に気が進まない様子のスシさんに前向きになってもらいたくて、わたしが『執行部人気投票結果』を用意しました・・・⑫」

「スシですが、それって議題なんですか? でも振り返ってみると、前期に執行部の部活応援要請調査、つまり役員の人気アンケートをやったら、オロネさん、カニくん、クロハさん、マヤさんの順になって、マヤさんが平静を装いつつも、実は相当凹(へこ)んでて、なんとかしなきゃと思ったのだった・・・⑬」

「おいスシ、あたしが軽く思われちゃうだろ。やめろよ・・・⑭」

「うん」

 現在クロハ書記次長に化身しているマヤ(別人格)だが、完全にマヤとして話していた。スシは気づいていて、流した。

「キヤです。いきます。第1位スシさん5071票 第2位スシさん3072票 第3位スシさん1802票 第4位スシさん721票 第5位スシさん514票・・・⑮」

「スシですが、生徒は全校でも5000人もいないでしょ? 何この票数。それに、オレが1位から5位独占だけど、これって『五等分のスシくん』なの? ・・・⑯」

「いやですよ。スシさんに前向きになってもらえたら、それでいいんですから。投票結果ごとこっちで用意したんですよ・・・⑰」

「マンガのキャラクター人気投票の、連載開始からの最短記録(当方調べ)は、連載3回目。このときは募集した形跡がなかったけど。『ないしょ3』だけに、『3』に引っ張られて人気投票やっちゃったとか? ・・・⑱」

「そうです。スシさん、前向きになってもらえました?」

「なったかも」

「うふっ。だからスシさん、好きです・・・⑲」

「へへっ」

 クロハ書記次長(マヤ)とキラが、スシの首根っこを捕まえて、キヤから遠ざけた。

「クロハ書記次長(マヤ)だが、あの女に気を許すな!・・・⑳」

「キラだけど、キヤさんは昔からの知り合いで、あんまり悪《あ》しざまに言いたくないけど、裏の顔もある人だから・・・㉑」


「スシだけど、そういえば前期の運動部アンケートでは、『ないしょ1』のメインヒロインが人気投票で4位。偶然でしょうか」

「クロハ書記次長(マヤ)だけど、実は圧倒的力量差があったから、目立たないようにしてたのさ。なーんて」

「人気投票2位は男子のカニくんなので、マヤさんは女子に限ると3位。オレは『執行部で3番目の女の子と友だち以上になった』・・・㉒」

「ナハだけど。さすがにそこは『3番目に可愛い』と言うのを避けたね。でも自分で『友だち以上』って、チョーシこいてるね・・・㉓」

「クロハ書記次長(マヤ)です。拡大執行部会議をいったん止めて、フリートークに切り替えます・・・㉔」

「ホキですけど、今までのもフリートークみたいなものでは?」

「ナハです。8%を1%にしようという人がいますが、新聞紙はヤギさんにとって食べ物だから、新聞も1%にしてほしいんです」

「ホキです。ムチャのような、斬新《ざんしん》な視点のような。8%を1%というのは、まさしく一《いち》か八《ばち》かのやり方。でも成功確率が半分もないのは、目に見えている。大和《やまと》時代の為政者が3年間課税を休んだ善政にあやかろうというのだろうけど、このときは、中央政府が貯えを崩してしのぎ切り、民《たみ》に迷惑は掛けなかったのよ。長期金利は、ほぼゼロに近かった2020年8月28日と比べて、今は50倍くらいになっている。債券発行を、当時と同じ感覚で安易にしてはいけないのよ」

 クロハ書記次長(マヤ)の瞳孔が再び開き、ふるる、と震えた。

(スシだけど、おっと、マヤさんの別人格が、さらに交代だ!)

「え、えーと、クロハ書記次長(マヤ)です。これまで第一次産業などの小規模業者は、8%分の納税を免除(益税《えきぜい》)されることで、なんとかやってきたのが、益税が1%分に減ると、立ち行かなくなって廃業が続出するという見通しです。8%を1%にすると2年間で収入が10兆円減るという試算もあります。とくに地方の打撃が大きい。為政者は赤字債に頼らないと強弁していますが、裏付けはないようです。ことし償還しなくてはならない10年債は162兆円分くらいありますが、一部を借換債《かりかえさい》で賄《まかな》おうにも、債券への信認が低下してマーケットがそっぽを向き、中央銀行は担保不足から買い入れ抑制を続けるほかなく、1%にした側も全量を償還《しょうかん》する予算があるわけでなく、八方ふさがりで償還困難の事態も想定されています」

「キラです。決定は大規模地震の翌日でした。決していいとは言えないタイミングです。阪神淡路大震災、東日本大震災のときのように、むしろ増税が検討される局面になったわけですから。間接税の税率を下げても、不意打ちで直接税の税率を上げて補ったり、必要以上の復興債を発行して『赤字債ではない』と言ったり、先の選挙で官庁筋から漏れ出たように『食料品以外を12%』とするつもりなら、それは欺瞞《ぎまん》です」

「スシです。『税外収入』にも言及していましたが、歴史を振り返ると、経済的に追い込まれたときに行われてきた税外収入確保策は、金属などの資材供出《しざいきょうしゅつ》や、銀行口座封鎖など、国民財産の収奪ばかり。今回もそれを狙っているとしたら、ひどい話です」

「ナハです。実は、食品が1%になるだけでは済まなそうです。食品と食品以外のセット商品は、現状で①価格1万円以下②食品の額が占める割合が3分の2以上 の条件を満たせば食品と同じ税率が適用されるので、3330円くらいまでの『食品以外の品』は、税率を低くできる。店舗のレジ改修のことを考えると、8%から1%になっても、このルールはそのままの可能性が高い。企業防衛に走るところは多いだろうから、税収減は10兆円では済まないというわけ。今回の決定過程においては、身内からも反発があり、役職を辞任した人もいたし、別のときには、本会議を退席して採決を棄権した人もいた。本当の善政とは何かを考え、義憤《ぎふん》に駆られた結果でしょう。頭が下がる思いです。幕藩政治体制で放蕩《ほうとう》主君を諫《いさ》めるために直言《じきげん》した家臣《かしん》の姿が重なる。そういう家臣はたいてい、逆に詰め腹を切らされました。翻《ひるがえ》って現代、役職辞任、採決棄権で抵抗した人の今後を、守らなくてはいけないと考えます」

 ※2026年8月25日、定期購読の新聞は8%、駅の売店やコンビニでの販売・インターネットで配信される電子版は10%の消費税率とする方針が示された。

「クロハ書記次長(マヤ)です。拡大執行部会議を再開します」


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