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23.で、弟

どこまでも優しい孔明兄ちゃん


 律儀に六本木ヒルズの駐車場のA-3に車を止めてしばらくすると、途中で自宅に愛車のSUVであるレクサスLXを取りに行った孔明がその鼻面に車を寄せた。鸞は姿勢を低くしてマカンから素早くレクサスの助手席に滑り込んだ。

「置いてきたか」

「うん、道具も何もかも。兄上のAK74も」

「あれは厳密には、ルイの配下のものだ」

 やはり、あの視線は対岸のお台場から注がれたスナイパーのもので、光が揺れたのは孔明と揉み合ったからだ。孔明はそのライフルを手に、海を跨いで急いで駆けつけたのだ。

「ああ……お台場から狙っていた奴がいたね」

「そいつのを拝借した。指紋は大丈夫か」

 鸞が両手を見せた。指先には指紋を隠す為の肌色のテープが貼られている。

「呼び出された時に、付けといた。ブティックにも指紋は残ってないハズ」

 孔明も、ずっと嵌めていた黒革のグローブを片手ずつ順に外した。

「でも……来てくれて、本当に有り難う」

「先輩から、おまえがまた無茶を企んでいると連絡を受けてな。おまえのその携帯、GPSをつけておいて正解だった」

「え、そうなの? 」

「猫に鈴をつけるようなものだ」

「何それぇ」

 ぷうっとむくれる鸞の頭を、孔明は左手でくしゃくしゃと乱暴に撫でた。

「このお転婆め。血相変えてレイモンドの所から出てきたからてっきり無体をされたかと思ったら、父上から亮子が拉致されたと電話を受けた。あの倉庫に父上が呼び出されていると知って、狙撃ポイントをあちこち探していたらあの台場のホテルの屋上にまんまといたんだ。まさかおまえが一人であの倉庫に飛び込んで来るとはな」

「兄上には、全部見られてたんだ…でも、あのタイミングで、よくコンテナまで素早く戻ってこれたね」

「ああ、りんかい線だよ」

「り、りんかい線? 」

「奴は手製のギターケースでAK74を運んでいたからな、渡りに船だったよ。台場からなら天王洲まで一駅だし、駅からは丁度ゲート付近までバスが出てた。六本木のレイモンドの家からお台場までは先輩に乗せてもらって足がなかったしな。後でよくよく礼を言っておけよ。お前の為に、色々地ならしもしてくださったようだ」

「うわ、課長も一緒だったの……明日怒られるだろうなぁ」

「あの人は、本気でお前を心配してくださっている。あまりお転婆をして迷惑をかけるな」

「はい……」

 むしゃくしゃするままにレイモンドの手にまんまと乗せられ、ご丁寧にこんな夜の香りをまとった女装までして腰を振って乗り込んだものの、妹を危険に晒し、結局レイモンドに借りを作り、兄に陰ながら助けられ、上司に見守られ、結局はこうして泣いている。もうどうしようもなく阿呆ではないか。

「僕、バカみたい……」

 しゅんとして小声で呟く鸞の頭に、孔明が軽く拳骨を落とした。

「腹、減ってないか」

 こんな時でも、兄は弟の空腹の心配をするのだ……鸞は堪らずにしゃくりあげて泣いてしまった。

「おい、そんなに泣くほど腹が減っているのか、どこか入るか」

「もう、そういうところなんだよう……」

 わんわんと泣き出す鸞に手の施しようもなく、孔明は苦笑したまま運転を続けた。

兄ちゃん、猛烈に嫉妬⁈

激しく肌をぶつけ合って愛を確かめる2人……

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