24.悶え
孔明、嫉妬と怒りに震えて鸞の服を引き千切り……
孔明と鸞が乗ったSUVは、夜半過ぎに狸穴町の西洋館に戻った。
ル・ブタンのヒールをカツカツと響かせて鸞が玄関のロビーに入ると、先に入っていた孔明が振り向くなり、三白眼を見開いて言葉を失った。暗がりでしか姿を見ていなかったのもあるが、落ち合ってから六本木でマカンを乗り捨てるまではハンティングベストを着ていたから、ここまで露出度が高いとは気付かなかったのである。
「兄上?」
「……おまえ、そんな姿だったのか」
腕にも足にも、銃弾が擦れて擦過傷ができているが、部屋の灯の下で改めて見るその立ち姿は妖艶な美女そのものであった。ノースリーブのオールインワンのパンツドレスは、上半身の前身頃はアメリカンスリーブのように見えるが、背中は深いカシュクールで肌が露わになっている。サテン地は腰のラインをはっきりと出し、ひざ下のフレアになっている部分にはスリットが入っていて、白い脛がチラリと晒される。かつての洋画に出てきた主役の女優のようなその美貌には黒いアイラインだけで十分であり、口紅が剥げていても、付け爪が幾つか取れていても、戦いの後の疲れを残す目元がまた気怠そうで、かえって頽廃美を醸し出している。
「レイモンドの趣味か 」
ターコイズブルーのドレスといい、奴は必要以上に弟を妖艶に仕立てたがる、いや、鸞の中の美の要素をこれでもかと引き出す方法をよく心得ている、と孔明は片眉を上げた。それ程腹立たしいことはない。
「そうじゃない? 僕、こんなの選ばないもん」
「当たり前だっ!……早く脱げ、そんなもの」
え……と鸞が両腕で自分を抱くようにして孔明を見返した。こんな時に、抱くの? とでも聞かれたような気がして、孔明は猛烈に怒りが沸くのを抑えられなかった。
「その姿を自分で見てみろ、レイモンドに抱いてくれと誘いをかけているようなものだ」
「そんな……あ」
孔明は鸞の手を掴んで引き寄せるなり、階段の装飾の凝らされた支柱を両手で掴ませた。向けられた背中が悩ましげに蠢く。カシュクールのデザインになっている生地を苛立つがままに剥がすと、すぐにその華奢で滑らかな背中から腰までが露わになった。しかも、扇情的な下着までつけており、これをレイモンドの目に触れさせたのかと思うと泣きたいほどの怒りを覚え、孔明はそれも引き千切った。じっとりと濡れる鸞の物が、抱かれるのを待つかのように勃っていた。
「こんな慎みの無い姿で……これでも奴に触れられていないと、本気で言うつもりか」
「ごめんなさい、ごめん……なさい」
「まさか唇も、簡単に許したのではあるまいな。そんな顔で奴を誘って……マフィアのボスだぞ! お前如き温室育ちが転がせるタマだとでも思ったか! クソッ」
後ろから抱きしめられ、鸞は背中に唇を這わせたまま怒りをぶつける兄の言葉を黙って受け止めていた。
このまま乱暴にされても構わない……後ろ手に孔明の下腹部を撫でると、怒りを滾らせたものが屹立していた。ジッパーを下げ、それを宥めるようにそっと触れると、孔明の手がそれを止めた。逆にその手が、浅ましく孔明を求める鸞自身に触れた。ピクリと、鸞が背中を痙攣させる。
「何度言ったらわかる、おまえはそんなに私を狂わせたいのか」
「……ごめんなさい、ごめんなさい兄上……でも、こんな風になるのは兄上だけなの、本当なの。あいつに触れられても、何ともなかった。何も感じなかった……お仕置きしていいから……嫌いにならないで」
鸞のそこに孔明が指を差し込むと、もうとっくに柔らかく解れていた。徐々に指を増やすと、鸞が甘い声を出して腰をくねらせた。
「んっ!……あ……ああん」
ゆっくりと、孔明が鸞の中に沈めた。まだ相当にきついが、手を回して鸞自身を弄ると、次第に中の襞が貪欲に解れて吸い付くような柔らかさに変化していった。細い首を反らせて、鸞が涙を弾けさせながら哭いた。
「お、お願い……も、もっと……い、いぁ、あ……」
無言で、孔明は鸞を責めた。細く締まった腰が小刻みに揺れる。こんなに淫靡な背中をレイモンドにも垣間見せたのかと思うだけで、猛りが止まらない。怒りが益々強くなっていく。
「……ん、んあ、はあっ……あっ」
鸞に、いや、鸞の奥底に眠る淫猥な美に始めから気付いていたレイモンドに対しての怒り、だ。あの男は、この弟の本性をちゃんと見抜いている。無意識に艶を滲ませ、可愛さと表裏一体に男を蕩けさせる猛烈な婀娜っぽさを、あの男は始めから楽しんでいるのだ。
「あん、ふぁっ、あに、あにうえっ……だめぇっ! 」
ロビー中に響く哭き声を発して痙攣し、鸞はずるりと崩れ落ちた。足元に脱ぎ捨てた服に、鸞が放ったものが滴り落ち、しとどに濡らした。そして鸞の白い丘の谷間からも、どろりと白濁したものが滴り落ちた。
肩で荒い息をしながら、孔明がその服を丸めて拾い上げ、ぐったりと膝をつく鸞の前と後ろを拭って、悪口と共に床に叩き付けた。
「くそっ……」
到底普段の孔明が口にすることのない言葉が、今日だけでもう何度目か口を吐いていた。まだ、兄の怒りは収まってはいない筈だ……恐る恐る鸞が肩越しに孔明を振り向くと、苦悶の表情のままに手を差し伸べ、抱き起こしてくれた。
でもやっぱり孔明兄ちゃんは優しくて……




