第三九話 女体の不思議
アイゼが手配させた馬車に乗り込み、在ドラントニホン国大使館のある王都へ向かった。
「なぁヤクト〜。衛兵に任せて馬車に乗れって」
「僕を待ってたんだ。好きに生きろって言ったのに」
ゴーラガートの港で乗り捨てた馬は衛兵の言うことを聞かず、その場から動かなかったと言う。
衛兵隊は仕方なく桟橋近くに簡易的な馬屋を設え、そこで僕の馬を世話していた。
元々、西南五島に馬は居ないので帝国から輸入しているらしいが、長い航海に堪えて生き残る馬は一握り。だから、めちゃくちゃ高価らしい。
「お前の馬じゃないだろ」
「アイゼ。コイツくれ」
「はぁ……はい、どうぞ」
僕が命じれば衛兵も乗せて走る。ただし、手綱の指示には従わず爆走するので騎乗している者は生きた心地がしない。
「名前を付けてやったらどうだ?」
「名前? 馬だろ」
車窓から上半身を出して乳を揺らすアイゼが変なことを言ってきた。
小船に乗るためファンタスマゴリアの量は控えめにしていたが、車中に置いて重心を保っているのか腰まで外に出しても平気な様子だ。
「馬って……たしかに馬だけども」
「馬は馬だ。それより出過ぎだ。膝まで出てるじゃないか」
結局そのまま乗り移ってきた。
ファンタスマゴリアはほとんど馬車に置いてきているので重くはないが、車中から男爵と衛兵たちの悲鳴が聞こえる。
「――あっ!? こ、こらぁ〜……私は後ろに座るから」
「五月蝿い。馬が走りづらいから首に伏せろ」
「――ふ、伏せ!? そ、そんな犬コロみたいに……あぁ……というかこの体勢は……あぁ……牝犬ってことか」
「ついでだ。押してやる」
「あぁあああ〜。腰にキクぅうう〜ん」
馬車に並走していた弱い衛兵たちが「姫様に何をする!?」とか言って襲ってきたので適当に落馬させてやった。
アイゼの嬌声が上がり腰がビクつくたびに「姫様ぁ! おのれ貴様!」とか言って突っかかってくるので落馬させ続けていると、顔を青くして馬車を操る御者しか居なくなった。
「やっぱり男は女を取り合うのか」
「ハァハァ……」
「でも僕から取るのは無理だ」
「――わふっ!? お前は誰にも渡さないって……あぁ……独占され欲が満たされる」
そんな事をやっているうちに馬車は王都の門前に到着し、馬上で蕩けていたアイゼは懸命に身を起こして背すじを伸ばした。
馬が歩くたびに何故か肩を震わせているが、押し加減を間違えただろうかと心配になって乳を揉んだ。
「コラっ……ヤクトここではダメだ……!」
「大丈夫か? 乳垂れてないか?」
「垂れてない……! 垂れてないから放してお願い……!」
アイゼは少ないファンタスマゴリアを胸の前で薄く広く展開して門番の視線を遮っている。
「殿下、よくお戻りで。そのファンタスマゴリアはいかがされました?」
「う、うん。その……えっと……どこから矢弾が飛んでくるかわからない……から?」
「ははっ、ご冗談を。ここは王都ですぞ? 落盤処理の功績は知れ渡っておりますので、どうぞ騎乗したまま凱旋してください」
やはり乳が危険な状態で見られたくないのだろうか。
肉が崩れたら大変なので乳周りのツボを押しながら全体的にマッサージしてやると、僕の手を掴んで押さえようとする。
「い、いや、それには及ばない。馬は法令どおり手で引くから」
「いえいえ。鑑定の儀が近いので鉱夫は出払っています。道は空いてますし馬車もお連れのようだ。どうぞどうぞ」
門番の配慮を断り切れずに馬車を先導して門を潜ると、たしかに通りは空いているが商店の店先には買い物客がおり、行き交う人の数もそれなりだ。
前面に展開したファンタスマゴリアが人々の視線を遮ると共に、日光を反射して注目を集めることにも一役買っている。
アイゼは肌を粟立たせ、じっとりと汗を掻きながら聖痕を走らせてファンタスマゴリアを左右にも広げたが、肩から上は衆目に晒されていて恥ずかしそうだ。
「ヤクト……! ホントに……! ホントにダメだ……!」
「――何!? そんなにダメなのか?」
アイゼの乳が見るも無惨に崩れる様を想像し、さらに気合いを入れてマッサージ。この感触がダメになるなどあってはならない。
大きな乳の未亡人から胸の靭帯が重要だと聞いていたので、それらを守りつつ的確にツボ押しを続けているが、まだダメらしい。
「ダ、ダメ……ダメダメ……! ダメだっ……あぁ……ダメになるぅ〜!」
「――ダメだ! ダメになるな!」
小さな乳の未亡人から先っちょがいい感じだと聞いていたので、女に特有のツボなのかと思いグリグリ押した。
「あっ!? あぁああああああ――ッ!」
「どうなんだアイゼ!?」
「もうダメだったぁあああ〜! いいぃいいい――ッ!」
「――何ぃ!? どうダメだったんだ!?」
今度は腰がビクついたかと思えば、馬の動きに合わせて前後に動き始めた。微妙に歩調と合っていないからだろうか、馬は嫌がっている様子だ。
「イイ! イイのぉ〜! イイぃい〜ん!」
「……いいのか? 何なんだお前?」
もういいらしいので乳から手を放した。
目の前で海老反りになってビクビク痙攣し、耳元でヒィヒィ五月蝿い。
とても良さそうには見えないが、僕の方もムラムラが治らずどうしていいのかわからなくなる。
アイゼを見ていた人間たちは路肩の隅っこにピタリと寄って道を開け、全員が口を開けて固まっていた。
「で? どこに行けばいいんだ?」
「あぁ…………終わった」
女の謎は深まるばかりだ。




