第44話 エピローグその3
暫くして運ばれてきた気まぐれ料理は、一目見ただけではどこの国の料理か解り辛く、気まぐれと言うにふさわしい見た目だった、さらに口に運んでみても複雑な味わいにおいしい以外の感想が出て来ず、何とか言葉を捻り出そうにも語彙力の無さを痛感するだけだった、
「おいしい、おいしいけど・・・なんだかわからない」
支離滅裂な感想だったが、東名は理解してくれたらしく頷いてくれた。
「前食べたのとよく似ているが、その時とはちょっと違うみたいだな」
しかし東名の言葉で、なぜ気まぐれ料理を譲ってくれたのか理解できた。
気まぐれはデザートにも適用されており、焼き杏仁豆腐を口に含んだ時には額にしわを寄せて首を捻る事しか出来なかった、それをにやにやと見ていた東名が、
「俺の時は焼きパンナコッタだったから、それよりはマシだったな」
焼いて美味しくなるものと、そうで無い物が有る事が解った、シェフ気まぐれすぎだ。
楽しい食事を終えて事務所に戻り、すぐさま明日からの仕事の資料のまとめに取り掛かった。
朝は出社せずに尾行調査をして、それからゆっくりと出社をすれば良いため、少しだけ早く起きれば済むし、帰りは直帰してしまえば良いため、日中の時間調整だけが問題だった、
「会員カードなんか作るんじゃないぞ、どうせすぐに調査は終わるからな」
気配を察したのか東名が声を掛けてきた、はいはいと空返事だけしてカギの掛かっている棚から資料を探していると、そこで母と父の依頼書を見つけた、
「これって・・・、破棄してないとまずいんじゃないですか、個人情報とかいろいろ書いてあるし」
すでに昼寝の態勢になっている東名に問いかけた、東名はちらりとこっちを見てすぐに元の態勢に戻り、
「大丈夫だ、お前はもううちの社員なんだから、その家族の情報なんだから何の問題もない」
「私を社員だと認めてくれてるんですね」
東名は返事をせずに黙っている、さすがにまだ寝入ってはいないだろうから狸寝入りのはずだ、視線を戻して私は手に持っている資料をぱらぱらとめくり目を通し始めた。
最初にここに訪れた時の事、2回目の訪問、その間に私がやった数々の失態、思い出したくない事も事細かに記載されていて見ていて赤面してしまった。
そして父の依頼書、そして2回目の訪問、その間に・・・私は見ていられずに資料を閉じようとしたが、ひとつ気にかかっていたことが有った。
私の自宅にパソコンを盗みに来た人たちと、その後に大量の逮捕者が出た医薬会社、あの日公園で東名と別れた後にいったい何が有ったのか、ページを捲るとそこにすべてが書かれていた。




