第44話 エピローグその4
一通り目を通し終えて資料を閉じた、制作日が間違いでないのならテレビで放送する以前にこの男はすべて解っていた事になるのだが、この時の私は何も理解できていなかった。
それでも、知りたかった事はわかったので少し笑顔になりながら満足気に資料を棚に戻した。
その雰囲気を悟られたのか、椅子から起き上がった東名がこちらを見て、
「そんなに面白かったか、その資料には創作や脚色は入って無い筈なんだが・・・」
それを聞いて驚いた私は顔を顰めて、
「創作で資料を作ったら、何の意味も無いと思いますが」
私の反論の正論に、東名は大きくため息を吐くと、
「現実程つまらない物は無いだろう、それこそそこに書かれていた事はお前にとって楽しい事とは思えないが」
「それは・・・、まあでもそうでもないかな、もう済んだ事だし」
「それなら良いんだが、それよりも明日の準備は終わったのか?」
「今からやります」
「ああ、そうなのかそれは後にしてくれ」
東名が何を言っているか解らなかったが、すぐに呼び鈴が鳴り何を言いたいかが解った。
私は東名に促されてドアを開け、そこに立っている人物にこんにちはと声を掛けた、
「あの、いきなりお邪魔しても依頼は受け付けて貰えるのでしょうか」
おどおどとした顔つきの女性はそう言った、振り返ると、すぐ近くにまで来ていた東名が見た事の無い笑顔で女性を迎え入れると、
「なんの問題もございません、私どもはそのためにこうして居るのですから」
わたしども、という事はその中に私も入っているって事だ、うれしくなった私は満面の笑みを浮かべて、
「はい、どうぞ中に入ってお掛けになって下さい」
女性が座ると東名は名刺を差し出し、いつものように読み方で話しの主導権を握って行く。
こうしてみると、確かにフリガナを振らないのも有りだなと思ってしまう。
手慣れた手つきで東名は依頼書を作成していき、アイスコーヒーを飲み終えるころには女性の顔からは不安気な表情は消え、晴れやかな顔つきで帰って行った。
東名は机の上に広げられていた資料を纏め、ファイルに入れながら得意げな表情で私を見ると、
「な、フリガナなんて無い方が良いだろう」
と鼻息荒く言って来た、少しは良いなと思っていたのだが、そんな東名を見ていると少し腹立たしく感じてしまうのは仕方の無い事だろう、
「ええそうですね、でもいっその事トウメイ探偵と屋号を変えても良いんじゃないかしら」
少し品を作りながら答えた、それを聞いた東名は呆れ顔で私に軽く拳骨をすると。
「自分から正体ばらす馬鹿がどこにいるんだ」
そう言われた私は痛くもない頭をさすりながら、確かにそれは無いなと思った。
東名とトウメイな私の探偵事務所、これからどうなるのかな。
「そんなの誰にもわからないぞ」
東名の反論の正論に私は頷いた。




