第43話 エピローグその2
東名が一通り書類に目を通し終え、コーヒーを飲み干して時計を確認すると、ちょうどランチが始まる頃合いだった、
「そろそろ飯にするか、どの店に行きたい」
「いつもの店で」
東名は答えが解っていたがあえて聞いて来たように見えた、東名がコップに残った氷と薄くなったコーヒーを流しに捨てると目配せをして来たので後を付いて行った。
外はとても蒸し暑くすぐに汗ばんできた、時々ビルの隙間を通り抜ける風と、建物が作り出す日陰で涼みながら長い坂を下って行く。
「お前は日傘を持ち歩かないんだな」
額の汗をハンカチで拭いながら東名が訪ねてきた、
「なんか、面倒臭いっていうか」
そう言いかけたところで東名の顔が少し曇った、
「こう、夏は暑い、冬は寒い、っていうのって好きではないんだけど、別に嫌いってわけじゃなくて、なんていうかちょっと上手く言えないな」
「なんだそりゃ」
東名は呆れた顔をしてそのまますたすたと歩きだした、
「まあ、言いたいことも少しはわかる・・・か」
歩きながら東名がぶつぶつと呟いている声が聞こえ、多少は想いが伝わったことに笑顔になった。
日曜でもランチをやっている店に着くと、すでに店内は賑わいを見せていて空席もわずかだったが何とか座る事が出来た。
店員の持ってきたメニューは何度も見返したために一瞥に留めて、店内に表示されている当日メニューを見るて、「シェフの気まぐれランチ(限定10食)」に目が止まった、
「わぁ、話しには聞いてたけど初めて見た、気まぐれが有る」
「ああそうだな、今日は運が良いな」
「私は注文決まったわ、気まぐれランチにする」
満面の笑顔の私を他所に東名は冷静に店内を見渡し、
「すぐに頼まないと無くなるかもしれないな」
東名がすぐに店員を呼び、ランチを注文をすると残りは一つだった、仕方がないといった顔をして東名は別の物を頼んだ様だった、
「私が食べても良かった?」
「俺は何度も食べてるからな」
「気まぐれなのに?」
私の問いに東名は黙ってしまった。




