第40話 変心
暫くの間、何も言わずにもぞもぞとしていたと思われる碧だったが、片手での着替えに思いの外手間取ったため、意を決して外に出ようと提案してきた、裸のままだけど良いのかと問う東名に、碧は再び沈黙してしまったが、東名は碧にぐいぐいと玄関の方へ引っ張られたので覚悟を決めたようだ。
「探偵さんの靴は・・・どこ」
そう問いかける碧に、東名は靴箱から自分の靴を取り出し、
「案外バレないものなんだよ」
と少し得意気に小声で話したが碧からは返事が無かった、バタバタとリツコが家探しを終えて2階から降りてきたところで二人は玄関からの脱出に成功した。
外に出たら碧は駅とは反対の方向へ歩いて行き、閑散とした公園の中で立ち止まると、
「これ、持ってて」
そう言って東名に持っていた着替えを渡すと繋いでいた右手を離した、東名は再び色が戻ってきた事が確認できた。
かさかさと衣擦れの音だけが聞こえ、抱えている碧の衣服が一枚、また一枚と消えていく、女性物の衣服を抱えた男が一人公園に佇んでいる姿は、客観的に見るまでもなく不審者確定のため、東名は冷静を装ってはいたが内心ではドキドキしている。
「はい、お着換え終了」
くるりと回転しながら碧が姿を現した、ようやく女性物の衣服を抱えた不審者から女子高生を連れた不審者へ降格した東名だった。
「それで、お前は不審者の顔を見たんだろ」
そう問いかける東名に、碧は顔を覗き込む事で返事をすると、
「・・・お前な、俺に助けを求めておいてそれか」
「へへへ、ごめんごめんなんか知らないけど探偵さんの顔を見てたら、さ」
「恐らくだが、厳道さんのパソコンを持って行ったっぽいな」
「え、パソコン?そんなに良いやつじゃないはずだよあれ」
碧は首を傾げながら不思議がっている、東名は仕方が無く説明をし始めた、
「本当はいけない事なんだが、厳道さんは家に仕事を持ち帰ってやっていた事は無いか」
「うーん、長い時間パソコンを使っていた事も有るけど、それが何をしていたかまではわからない」
「お前が画面を見て理解できない事なんだったら、それは恐らく仕事をしてたんだろうな、動画を見たり調べものだったりなら流石にわかるだろ」
「ちょっと馬鹿にしてるでしょ」
「流石にわかるか」
「わかるわよ」
碧は頬を膨らませて抗議してきたが、東名はそれを軽くいなしながら話しを続けた、
「会社からどこまで持ち出して仕事をしてたかわからないが、少しでもデータなり履歴なりでも残っていたら欲しかったんだろうよ、引き抜きに失敗したライバル会社としては・・・ね」




