第34話 二人はぐるぐる
二人が席に着いたのを確認して東名もソファに腰かけると、テーブルの上の飲みかけのアイスコーヒーに気付き、大急ぎでそれを片付けた後で新しいアイスコーヒーをテーブルに並べた。
「今日はどういったご用件で・・・」
リツコの視線を気にしながら東名が厳道に尋ねる、一応リツコとは初対面のつもりではいるが、この状況だとちょっと無理があるだろうと思った。
「それなんですが東名さん、実は・・・」
「いったいどういう事か説明をして貰います」
厳道の話しを遮りリツコが話しに割り込んできた、東名は少し驚きながらもリツコの表情からある程度の察しはつけていたのでリツコの言葉に耳を傾けた、厳道はばつが悪い顔をしたがリツコにみられない様に顔をそむけた、
「どういうことかとは、どういうことですか」
リツコを制しながら問い質した東名だったが、言葉選びを間違えてしまい火に油を注ぐ事になってしまう、
「最初から私を騙して、私の依頼をほったらかして夫と共謀してたんでしょう」
掴みかかりそうな勢いで捲くし立てるリツコを、厳道が宥めながらソファに座らせ、困り果てた表情で東名に助けを求めてた、東名もリツコに落ち着くように両手で促した後で、
「まず、私と厳道様がぐるだとか共謀した事実は御座いません、ただこれに関しては信用していただけるだけの証拠も無いのですが」
「そんな事言われて、そのまま信用出来るわけが無いでしょう」
厳道に抑えられながらリツコが叫ぶ、東名にとってもそれは想定内の事だったので驚く事もなく続けた、
「それは当然です、ですが調査の依頼に訪れたリツコ様から、連絡先も聞いていない厳道様にこういう依頼を受けました、と、そんな事を路上でいきなり声をかけられた厳道様が、それは困るから依頼を断るように仕向けてくれ、と、そう言われる訳ですか」
それを聞いて厳道はリツコの方を向き何度も頷いた、リツコもいまいち釈然としないまでも少しづつ頭の中で整理が付き始めているようだ、
「写真を何度も撮れると言っていたのは、あれはどういう事なの」
「それは事実です、厳道様がお取引先の女性とお食事をされる予定だという情報を入手したのですが、突発的なトラブルで写真を撮れませんでした」
思いがけない飛び火に厳道が驚いた表情で東名に向き直る、思いがけずに証拠を手に入れたリツコは目を見開いて厳道を見ている、
「二人で食事をされただけでは、離婚事由としては難しいと思いますよ」
期待に目を輝かせていたリツコは東名の言葉に目を曇らせ、厳道は深く首を項垂れた。
「写真が撮れてさえいれば、リツコ様にも説明することが出来たのですが」
そう言って東名は、資料棚の方へ視線を動かした。




