第33話 ある晴れた日曜日
他人の財布で高級料理を頂くという至福の夜を過ごした翌日、東名は事務所で今後の厳道の尾行の計画を練っていた。
今のまま厳道を尾行する男が現れなかったら手の打ちようが無いのだが、東名が厳道を尾行するのをやめたら再び男たちが尾行し始めるかもしれない、そう上手くいくのか頭の中で想像していると胸ポケットの電話が鳴り始めた、表示された送信者を見ると都合よく厳道(表示上はGとだけ表示されている)からだった。
「もしもし東名です、ちょうどお話しをしたかったんですよ」
「そうなんですか、私もお話しがありまして、ではそちらに伺ってもよろしいですか」
「はい、ではお待ちしています」
思いがけずに厳道と話す機会が訪れた為、東名は厳道が事務所へ来るまでの間に素早く資料を纏め始めた。
東名は資料を纏め上げ、いつものように窓際に立ち流れていく人波を眺めていた、待ち合わせの時間に事務所まで来るのなら、そろそろ通りかかるかななどと呑気に薄いアイスコーヒーを飲んでいると、なんで厳道が話しがあると言ってきたのだろうかと、ふと気になった東名だったが、その小さな違和感は今だ強さが衰えない日差しにかき消されていった。
東名は流れる人波に、厳道とありえない人影を見つけて、思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出しそうになってしまった、激しい動悸と共に忌まわしい記憶がよみがえってきた、東名は厳道の依頼を受けた時からずっと覚悟はしていたのだが自分の未熟さを痛感していると呼び鈴が鳴った、それは東名にとって死の宣告にも聞こえたが、厳道とアポの予定をたてている以上居留守も使う事は出来ず、力無い返事をして事務所の扉を開けた。
「お待ちしていました」
精一杯の笑顔で声をかけると、ハンカチで拭き出る汗を拭きながら恐縮している様子の厳道と、その後ろに腕を組んで立っているリツコの姿が有った。
「どうぞお入り下さい」
臨戦大勢のリツコと廊下でやりあう訳には行かず、引きつった笑顔で一家総出で来ている赤木家を事務所へ迎え入れた、




