第25話 危ない奴ら
今日の尾行の結果を纏める為に事務所の最寄り駅で降りた東名は、朝に感じた身軽さとは打って変わって嫌な予感がひしひしと伝わって来た、せっかく良い気分で事務所へ向かい、やりたくない書類を纏めようとしていたのに、と出鼻を挫かれた東名は先に腹ごしらえをするためにいつもの店に入った。
いつものように混雑している店に入り注文を済ませ、お冷を飲みながらスマホを触っていると目の前の席に人が座った。
混雑しているから相席をするにしても、店員からの一言が無かったので訝しがっていると、目の前の人物に声をかけられた、
「探偵さん、あなたつけられているわよ」
久しぶりに聞くその声は東名の嫌な予感そのものだった、
「知ってるよ、犯人はお前だ」
東名の言葉を聞いて驚いた顔を見せた碧はすぐに真剣な表情になり、
「私じゃないの、本当につけられてるんだから」
「・・・それも知ってるよ、俺を誰だと思っているんだ」
「探偵・・・?」
「なんで疑問形になってるんだ、あとあんまり外で言うなって言っただろ、それになんでまたお前がこんなとこに居るんだよ」
東名がそう言い放った瞬間に目の前に注文した料理が運ばれてきた、気まずくなり俯いている東名とは対照的ににこやかな笑顔の店員に碧が自分の注文を伝えている。
店員が奥へ下がったのを確認してから東名が碧に向き直り、
「なんでお前が居るんだよ、あと自分で頼んだものは自分で払えよ」
「えーそれぐらい良いじゃん、ここの料理おいしかったからまた食べたくなったの」
碧はくねくねとかわいい仕草をしようとしているのは東名に伝わってきたが、どこからどう見ても不思議な踊りにしか見えない、気力をごっそりと削られた東名は、
「まあいい、俺が出しておいてやるから食事がすんだらまっすぐに帰るんだぞ」
「やったね、デザートも頼んでいいかな」
あいかわらず不思議な踊りにしか見えない碧に呆れた東名は、
「ここは料理は旨いけどデザートは微妙なんだよ、そんなもん食べなくていいよ」
と言うと同時に碧の料理が置かれた、引きつった笑顔の店員に東名がデザートを注文すると固まった笑顔のまま店員は奥へ帰って行った、それを見届けてから大きくため息を吐いた東名とは対照的に、満面の笑顔で碧が料理を頬張っている、東名は残りの料理を急いでかきこんだ後で、
「俺を尾行してる奴らは、俺とは違って危ない奴らだから、こうして一緒に居るだけでお前も危ないんだぞ」
「ええーどんな風に危ないの、まさか事務所に連れ込んで泊まらせちゃったり」
「茶化さずに真剣に聞いてくれ、本当に危ないんだ」
いつになく真剣な顔の東名に碧も真顔で料理を頬張っている、その顔の前で東名は人差し指を突き出して引き金を引く真似をする、
「それ、マジ?」
「ああ、マジ」
碧は口の中の物をゴクリと飲み込んだ。




