第23話 気分は上々
次の日、東名はゆっくりと睡眠をとった後で、厳道への報告書を纏めるために事務所へ向かった。
東名が今までこなしてきた仕事の中でも、最速で解決してしまった今回の仕事は、配偶者であるリツコの支払いが無かった事を考慮しても、料金の見積もりを作るのにとても苦労していた。
なにせ厳道が事務所を出て僅か数秒で解決したからだ、パソコンの前で過去の事例や他社の料金と比較してみて、別段おかしくないような内容の見積書を作成し、日付だけ五日後にして下書き保存した。
「俺も秒速で稼ぐようになっちゃったか」
そんな事を呟いて、一人で笑っていられるほど余裕をかましていた、夕刻に先輩から電話を貰うまでは・・・。
一儲け出来たため、ランチメニューでは無い物を注文してみたり、事務所の雑貨を買ってきたりして事務所に戻り、一仕事終えたつもりで昼寝に興じていると電話が鳴った。
「はい、坂上SSSです」
昼寝を邪魔された電話だったが、まだまだ上機嫌で電話に出た、
「もしもしトーメーか、俺だ虹橋」
「ああ、先輩でしたか、電話待ってましたよどうでしたか」
「ん・・・、ああそれなんだが・・・」
虹橋の歯切れの悪い言葉に東名は少し訝しがり、
「あの社長が首を縦に振りませんでしたか」
「いや、そうじゃないんだ」
「そうじゃないって、どういうことですか」
「うちの事務所が依頼を受けたのが、お前と会った前の日なんだよ」
東名は虹橋が何を言っているか分からなくて、ぽかんとしてしまった、
「おい聞いてるか、俺が盗聴器を付けて尾行し始めたその日のうちにお前の事務所に相談に行ったって事なんだよ、いくら何でもおかしくないか」
虹橋の説明でようやく事の異常さに気付いた東名は、
「という事は、尾行に気付かれていたのは先輩じゃない・・・って事ですか」
「ああん、俺の尾行が気付かれる訳ないだろう」
虹橋は胸を張って答えたが東名は返答に困った、そんな事よりも東名は頭の中で、すでにいろいろと考えを巡らせていた、
「お前のとこへの依頼が、尾行されてるのをどうにかして欲しいって話しなら、それは恐らく俺じゃないってことだ、おれはてっきり引き継ぎの仕事だと思っていたんだがな」
「他に尾行している人が居る・・・」
「それは俺の仕事じゃないしわからないな、なんにせよ社長に話しは通しておいたから、依頼はいったん保留にしておいてくれるらしい、俺も今は別件で動いているしな、それから一度事務所へ顔を出せってよ、それじゃあな」
一方的に捲くし立てて虹橋は電話を切ってしまった、さっきまでの上機嫌はどこかへ吹っ飛んでしまい、東名の頭上から厄介ごとが次から次へと降り注いできてしまった。




