第21話 コンビ
「ここじゃあなんですから、事務所に来てください」
東名は男を事務所へ誘う、男はバツが悪い顔をしながら頭を掻いている、
「どうしました先輩、冷たい飲み物でも出しますよ」
煮え切らない男に向かって東名はもう一度声をかけた、男は頭を掻いていた手が汗でびっしょり濡れている事に気付き、首を2,3度振った後で、
「わかった、お邪魔させてもらうよ」
「はい、どうぞどうぞ」
東名は両手を振り男を急かした、それでも男はゆっくりと階段を上がり、
「まさかお前の事務所とは思わなかったよ、なんだよ坂上SSSってのは、トーメイ探偵事務所じゃダメだったのか」
「先輩、あんまりトウメイ、トウメイ言わないでくださいよ、勘違いしちゃう人もいますから」
そう言って東名はきょろきょろと周りを見渡し、ビルの外を歩く人を見ている、
「それに、トーメイは先輩が呼んでるだけで、トウナですからね」
「ああ、それにしても久しぶりだな、お前が事務所を辞めて・・・5年か」
「そうですね、それからすぐに自分で探偵事務所を開いて・・・」
そう言いながら東名は事務所の扉を開けて、
「ここが私の事務所です、どうぞ入ってください」
男はゆっくりと中に入り全体を見渡した、東名は男が中に入ったのを見届けてゆっくりと扉を閉めた。
「アイスコーヒーで良いですか」
東名は、事務所の奥に置いてある冷蔵庫からコーヒーを取り出しながら尋ねた、
「お前がコーヒーをいれるのか、電話番とか受け付けとかで人を雇ってないのかよ」
「いやあ人手は欲しいんですけど、人を雇えるほど儲かっていないので厳しいですねぇ」
「ああ、まあな、どこも不景気でいかんよなぁ」
男は目の前に置かれたコーヒーを一口飲みしみじみと言った、
「ただ雇われている時よりは自由な時間が出来たので、そこだけは良かったですかね」
「お前の自由な時間って寝てるだけだろ、そりゃあお前最高の贅沢じゃねぇか、俺なんて寝る時間削って働いてるってのによ」
「いやあ先輩にはすべてお見通しですか」
「わかるよ、何年一緒にやってたと思ってんだ」
東名と男は昔話に花を咲かせ、それは2時間にも及んだ。




