放課後デートってこんなもの?
一度でいいからやってみたいな放課後デート。
一応俺と菜保は付き合っている。
部活動ができなくなった時や暇な時は、恋人同士らしく一緒に喫茶店でだらだら話をしたり、ゲーセンでプリクラを撮ることが多い。
菜保は女らしい表情やしぐさを見せることはないし、一緒にいる俺も呆れることのほうが圧倒的に多いのだが、なんだろうか。
小学校の夏休みの宿題で出された朝顔の観察日記。
手渡された観察レポートに、どんな些細な変化も真面目に書きとめていた俺にとって、今までに出会ったことの無いタイプの人間と一緒にいるのはいろんな発見があって楽しい。
そんなことを言ったら菜保は朝顔と同じレベルかと聞かれそうなのだが、そこは違うと言っておこう。一応、俺と菜保は付き合っている。恋人同士だ。
…………その恋人同士の今日のデートが。
「うーっ……っあぁぁぁ、きく、そこ、イイよ」
待て、勘違いするな。
「こうっ……か? オイそれから誤解されるような声出すんじゃねぇよ」
「だってすごく腰痛かったんだもん。肩もすごくこってるんだもん。そして駿介すごく上手なんだもん」
「おまっ、女子高生なんだぞ若いんだぞ。なのに腰痛いとか言ってんじゃねーぞ」
「女子高生だってオッサンになりたいんですーっ。女の子に夢見ちゃダメなのよ、絶望するわよ」
「さりげなく太ももかくな」
職員会議で部活動が無い今、グラウンドにある野球部のベンチは誰も人がいなかった。
今日の授業が全部終わると、菜保はいそいそと俺のところへ来て言ったのだ。「マッサージしてくんない? 最近腰と肩がこっちゃってさぁ」
爽やかな春の午後三時、若葉がきらきらと光る。グラウンドには人っ子一人すらいなくて、時々舞い降りてきた鳥が囀る。
和やかな日。公園デートでもしたら最高だろうなと思っている俺の、目の前にだらんと横たわる菜保。
こいつはセーラー服を着るべきじゃない。というかこんな奴にセーラー服は着てほしくない。なぜなら俺はセーラー服萌えだからさ。
「最近夜パソコンばっかしだからなー、やっぱりあの椅子がダメなんだわ。お尻も痛くなってきたし」
「あの真ん中に穴あいてるクッション置いたらどーだ? 痔にもならないですむみたいだぞ」
「むぅ、あたしは痔なんかじゃありませーん。膀胱炎です」
あぁもうなんてカオスなアンダートーク。
「あのね、膀胱炎ってすごく痛いの。抗生物質飲んでるんだけどそろそろ治りそう」
「フツー彼氏、ってか男に膀胱炎カミングアウトするか?」
「うん。あたしトイレから出て、最初にお兄ちゃんにカミングアウトしたよ。わぁどうしようお兄ちゃん、あたし一歩大人に近づいたよ。って」
「…………それを聞いて兄貴は?」
「赤飯炊かなきゃな、って言ってた」
「それ絶対勘違いしてるから!」
まぁ早く膀胱炎が治ってくれればいいな。最近菜保が女友達とトイレから帰ってくるたびに、オオカミのように低い声で呻いていたのはそのせいだろうし。
「あっ、首もお願い。とくにココ! このへん!」
「はいはい…………ったく、うちの親父でもこんなことさせねーよ」
「え、駿介の家ではこんなことしないの?」
「あぁ。どっかこったら、マッサージの店的なモノに行ったりしてるみたいで。そっちのほうがプロがやってくれるから気持ちいいんだとさ」
「エステ?」
「んなわけあるか」
ツッこみをいれながらもきちんと揉む俺、偉い。
それにしても本当にこっている。パンの生地を揉むような感じじゃなくて陶芸用の土を揉むような、とにかく硬い。
菜保、勉強してるのか。学校ではだらけている分、きちんと家で努力する奴だからな。この前学校休んでノート見せてもらった時、びっしり細かいところまでポイントが書きこまれていてびっくりした。
「とにかく菜保、あんまり無理すんなよ。俺も疲れてきたし、今日はここまでだけど、またやってやるからいつでも言えよ。……腕の筋トレにもなるしな」
大切な彼女だ。俺は彼氏だ。優しい言葉のひとつやふたつかけてやるさ。
「んじゃあさ、次、足つぼやって」
「…………は?」
「もう身体じゅうガタガタなの。あぁ、せんべい持ってる? 足つぼされながらせんべいかじったりやってみたかったんだよねー」
「ちょっと待て、俺疲れてるんだが? 聞いてなかったのか?」
待ってくれ。
いくら女の身体でもガチガチにこっている。揉んでいる俺としてはそろそろ腕がつりそうなのだが。
「腕の筋トレになるでしょ? ね? お願い」
語尾にハートをつけて頼まれる。そしてごろんと仰向けになって足をつきだした。今隣に焼酎を並べたらコイツは完全に酔っぱらいのオッサンと化すだろう。
「ちょっと痛いくらいが気持ちいいから、よろしくね」
「なぁ菜保、さっきから気になってたんだが」
パンツ見えてるんだけど?
萌えるパンツの代表として白地に水色のボーダーがありますけど、あのボーダーをタテ縞にしたら、あっという間にオッサンになると思いません?




