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3章3節

 緋音は冒険者ギルドの建物に入り、受付嬢の所へ行く。


「依頼終わりました!」

「依頼内容はアルミラージを5匹討伐、でしたよね」

「討伐数が8匹で、他の魔物も倒したんですけど大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 受付嬢は買い取りカウンターを指しながら言う。


「あちらで討伐した魔物を鑑定してもらってください」


 緋音は買い取りカウンターに行き、魔物を魔法の鞄(マジック・バッグ)から取り出した。

 ケルベロスを出した時、カウンターの男と周りにいた冒険者たちがざわついた。


「し、支部長呼んできます!」


 受付嬢が慌ててカウンターの奥にある階段を登って行った。

 しばらくして、受付嬢は銀髪の女性を連れて下りてきた。


「お前がアカネか。ついて来い」


 その女性の有無を言わせぬ雰囲気に、緋音は黙ってついて行く。

 階段を登り、重厚な扉の部屋へと入った。

 緋音は促され、ソファに座った。


「突然すまない。私は支部長のフォティニア・キニだ」


 彼女の柳色の瞳が緋音を正面から見据える。


「あの魔物は、ケルベロスは本当にお前が1人で倒したのか?」

「はい、私が倒しました」

「あれはBランク魔物だ。Fランクが、まして単独で戦い、倒そうとはしない」


 そういえば、と続ける。


「昨日はDランクのボアを一撃で倒したようだな」

「あれってDランクだったんですか!?」

「知らずに倒したのか。まさか、ケルベロスのランクも知らなかったのか?」

「はい。なんか強い魔物だなって思っていました」


 フォティニアはため息をつきながら、背もたれに寄りかかる。


「フィラ」


 そう言うと、受付嬢――フィラが水晶を持って部屋へと入って来た。


「アカネ・トウワタをCランクへと昇格する」


 フォティニアがそう宣言すると、フィラは水晶を机の上に置いた。


「冒険者カードを出してください」

「はい……って、昇格!?」

「あぁ。お前はCランク、もしかするとそれ以上の実力があるからな。そんな奴をFランクになどしておけん」


 分かったなら冒険者カードを出せ、とフォティニアが言う。

 緋音はカードを出し、水晶にかざした。

 水晶は淡く、だが今までより強く光った。


「これでお前はCランク冒険者だ、アカネ」


 フィラが部屋から出た後。


「それで、ケルベロスはどうやって倒したんだ」

「えっと、首をめがけて火球(ファイア・ボール)を飛ばして倒しました」

「ほぉ、火球で……。何発で倒したんだ。威力や大きさは?」

「威力はだんだん上げながら、全部で……何発だったっけ? とりあえず、いっぱいぶつけました。最後はケルベロスと同じくらいの大きさの火球を上から落としました」


 緋音は先ほどの戦闘を思い出しながら答えた。


「あれと同じ大きさの火球か……さながら小さな太陽だな」


「魔物のランクはきちんと調べておけ」

「はい……」

「何はともあれ無茶だけはするな。カトレア様のご加護があらんことを願っている」


 緋音は部屋を出ると図書室へ向かおうとする。だが。


「図書室ってどこですか?」

「いったん階段を下りてから、別の階段で登ってくれ」


 緋音たちの登ってきた階段は、1階とこの部屋――支部長室のある3(・)階(・)を繋いでいるのだという。

 だから、ここから直接2階には行けない。また、この階段はカウンターの奥にあるためギルド職員以外は使えず、3階に行けないようになっている。


 緋音は階段を下り、また登って図書室へと入る。


「魔物についての本は……あった」


 開くと、ランク別にイラスト付きで魔物の解説が書いていた。


「Fランクがスライムとアルミラージと……」



 ◇◇◇◇



 数時間かけて、緋音は魔物について書かれた本を数冊読んだ。

 ふと窓の外を見ると、空が薄暗くなっていた。


「そろそろ宿に戻ろ」


 階段を下り、ギルドを出ようとした所で声をかけられた。


「あんた、アカネだろ!」


 声のした方を見ると、知らない冒険者たちがいた。


「何で知ってんだって顔だな」


 だが、よく見ると知ってる人たちだった。


「昨日、私が冒険者登録した時に騒いでいた人たちだ」

「なんだ、見てたのか」

「何か用ですか?」

「Cランクに昇格したんだってな」


 たった数時間前のことなのに知られていた。


「冒険者の情報の速さ舐めんなよ」

「お前の好きなもん食べて飲みな! 昇格祝いだ!」


 緋音は彼らの言葉に甘えることにした。


「いやぁ〜まるで、氷星(ひせい)のリベア様の再来みたいだな!」

「ストリから伝説が生まれるぞ!」


 そうしているうちに、周りにいた冒険者やギルドに戻ってきた冒険者たちが集まってきた。

 その中にはベルキアの姿もあった。


 大騒ぎの昇格祝いは、ギルドが閉まる時間になり、職員に追い出されるまで続いた。

 酒に強い人たちが、酔った冒険者たちを担いでギルドを出ていく。

 酒を飲んでいない緋音は自分の足で宿へと戻った。

お読みいただきありがとうございます。

次回更新は5月16日(土)です。

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