3章1節
ベルキアに紹介された宿に入ると、受付に1人の女性がいた。
彼女に冒険者カードを見せ、銀貨1枚を払うと2階の部屋へと案内された。
部屋にはベッドと机があるだけで狭かったが、掃除が行き届いており綺麗だった。
窓からは満天の星空が見える。
緋音は窓を開け、空を見上げる。
「月が、2つ!?」
空には赤色と青色の月が浮かび、静かに光を放っている。
緋音は月を包むように、両手を伸ばす。
「私、この世界でやっていけるのかな……」
大きな青い月を追いかける、小さな赤い月。
それは追いつくことのない、だが、必ず同じ軌跡を辿る2つの月。
「疲れたのかな。私らしくないこと言っちゃった」
窓を閉めた緋音はベッドに寝転がった。
しばらくすると、穏やかな寝息が聞こえてきた。
◇◇◇◇
翌朝。
緋音は窓から差し込む朝日で目を覚ました。
身だしなみを整えると、1階へと下りた。
食堂の開いている席に座り、朝食を食べる。
焼き立てのふわふわのパン。
濃いめの味付けの野菜たっぷりのスープ。
分厚いベーコンと目玉焼き。
朝食を食べ終わった緋音は宿を出た。
その時に昼食としてサンドウィッチを持たせてくれた。
「さてと、まずはギルドに行くか」
ギルドに着いた緋音は依頼書を見る。
「スライム……ゴブリン……オーク……」
依頼書には魔物の名前とイラストとランクが書かれている。だが。
「ベトスの森って、どこ……!」
魔物はイラストから分かるが、生息場所は分からなかった。
「やっぱり、先に図書室に行こっ!」
緋音は受付の奥にある階段を登って2階へと上がった。図書室は2階に上がってすぐの部屋だった。
扉を開けて中に入ると、大きな地図が見えた。
「ここって『プラント王国』って言うんだ……。ストリは……あった!」
地図の中心には『王都パティオ』があり、その東に『ストリ』がある。『ベトスの森』はストリのさらに東に広がる森だった。
緋音は本棚から一冊の本を取り出した。
表紙には『氷星のリベア』と書かれている。
表紙をめくると、金髪碧眼の女性が描かれていた。
緋音はその隣にある文章を読む。
『氷星』の異名を持つ冒険者リベア。
15歳で冒険者となった彼女は、史上最年少でSランクへと至った。
引退後は王立学院の教師となった。
彼女の異名は、圧倒的な魔力量による氷球の多重展開、という戦い方に由来する。
「リベアさん凄い……! えっ、100年前の人なの!?」
本を戻し、隣の本を取り出す。
「昨日言ってた『女神カトレア様』って創造神のことだったんだ」
表紙には『創造神カトレア様』と書かれており、めくると白金色の髪と瞳の美しい女性が描かれていた。
女神カトレアは世界中で信仰されているという。
「どこかで見たような……あっ! あの時の女神か! 女神って白金色って決まりでもあるの?」
緋音は冒険者ギルドについて書かれた本を見つけた。
中にはランクや依頼、パーティについてが書かれていた。
その後もいくつかの本を読んだ緋音は、1階へと下りた。
◇◇◇◇
緋音は依頼書を見る。
「これが良いかも!」
依頼内容は、ベトスの森に生息するFランク魔物アルミラージを5匹討伐することをだった。
依頼書を掲示板から剥がして、受付嬢の所へと持って行く。
「この依頼を受けたいです」
「では、この水晶にギルドカードをかざしてください」
緋音が水晶にカードをかざすと、水晶が淡く光った。
「これで依頼受注完了です。貴女に女神カトレア様のご加護があらんことを」
緋音はギルドの外へ出る。
「冒険者になって初めての依頼! 頑張るぞー!」
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次回更新は5月2日(土)です。
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