2章1節
しばらく歩くと、森を抜けた。
歩きながら色々なことを教えてもらった。
「皆さん、幼馴染なんですか!?」
「そうだ。今向かっている街、ストリで活動してる」
「ほら、街が見えてきたぞ」
ケイが指さし、言った。
街は魔物が入らないように高い壁で囲まれていた。出入り口には門番が立っている。
街に入ると様々な建物があった。
その中のひとつが冒険者ギルドのストリ支部だ。
中に入ると正面にカウンターがあり、受付嬢が依頼受注をしている。その横には依頼書が貼られた掲示板がある。
ケイは受付嬢の所へ行き、依頼達成報告をするために袋を出し渡した。その中には大量の葉が入っていた。薬草採集系の依頼だったようだ。
4人が持っていたカードを置かれている水晶にかざすと淡く光った。これで依頼完了である。
「さて、アカネ。今までスルーしてたけどソレは何だ?」
ケイが緋音の持っているソレ――緋音が森の中で倒した魔物を木の棒にくくりつけたもの――を見ながら言った。
「私が倒した魔物です」
「それはどうするつもりなんだ」
「⋯…どうしましょう」
◇◇◇◇
緋音たちはギルド併設の食堂に移動した。
周りでは他の冒険者たちが酒を飲んでいる。
「見たところ商人でもなさそうだが、街には何の用があったんだ?」
「冒険者になりたいんです!」
「そうか。なら登録しに行くか」
「止めたりしないんですか」
「冒険者は確かに危ない、だが自由だ。なりたい奴を止めたりしない」
緋音はカウンターに行った。
「新規登録ですね。こちらに手をかざしてください」
緋音が受付嬢の示した水晶に手をかざすと淡く光った。
「登録完了です。こちらが冒険者カードになります」
カードには緋音の名前や職業とFという文字が書かれていた。
「カードに書かれているFという文字が現在の冒険者ランクです。依頼達成でランクが上がります」
「これが冒険者カード……!」
(あれ? 文字が普通に読める!? まぁ転生特典ってことで良いか)
ギルド内にいる先輩冒険者達が優しく新人冒険者を見ている。
昔の自分たちと同じ反応だったのが懐かしいのだろう。近くのテーブルで酒を飲んでいる男たちが騒いでいる。
「昔のお前と同じ反応してるぜ!」
「お前も同じだったろ!」
「新しい冒険者の誕生に乾杯!」
ギルドでは、依頼外の魔物や薬草の買い取りもしていると受付嬢に教えてもらった。
緋音は買い取りカウンターへ行き、魔物を買い取ってもらう。カウンターにいた男が慣れた手つきで銀貨7枚を渡した。
周りが何も言わない所を見ると相場と同じくらいなのだろう。
緋音は手の中にある銀貨を見る。
(本物の銀貨だ……!)
◇◇◇◇
「アカネ。装備を揃えるぞ」
「装備?」
ケイがそう言うが、緋音には何が必要か分からない。
そこで、ベルキアがよく使っている店を紹介してくれた。
その店はギルドから少し離れた所にあった。
看板を見上げながら緋音は言う。
「ラナン装備?」
「ここの装備品は丈夫で長持ちするんだ」
ベルキアの使っている装備はこの店で揃えているという。
ケイが扉を開く。店内には剣や弓矢、杖が置かれている。
「オレットさんいるか」
「あっ、ベルキアの皆さん!」
少女の声が返ってきた。
中から出てきたのは15歳くらいの、エプロンを付けた大人びた雰囲気の少女だった。
「あの女の子がオレットさん?」
「違う違う。あの子はマリーちゃん、オレットさんの娘」
緋音の疑問にエリカが笑って答えた。
「どうした、マリー」
「お父さん、お客さんだよ。ベルキアの皆さんが来たよ!」
「あぁ。今日はどんな用だ」
「冒険者になったばかりの新人に装備を揃えてほしいんだ」
「こんにちは。アカネです」
「自由に見とけ。なんかあったら裏来い」
緋音をちらりと見てそれだけ言うと、オレットは店の奥へと行った。
「ごめんなさいね。お父さんいつもあんな感じなんです」
「まぁ、オレットさんだからな。中見させてもらうな」
「はい。どうぞごゆっくり!」
「そういえば緋音の職業は何だ? さっきの魔物に焼け跡があったから魔法使いか?」
「あっはい、そうです。魔法使いです」
「ならエリカの領分だな」
「あたしも魔法使いなんだ」
エリカがそう言いながら緋音の手を引っ張り、杖の置かれている場所へと向かう。
「凄い! 杖だ! これこそファンタジー!!」
「ふぁん……? 何か気になるのあるか?」
杖を前に緋音のテンションは異常に高かった。
壁には色とりどりの石がはめ込まれた、大小様々な杖が掛かっている。
石が外から照らされた光を反射してキラキラと、緋音の瞳と同じように輝いている。
「どれにしようかなぁ〜」
「まずは色や大きさを決めたらどうですか?」
ロカがエリカとは反対側から話しかけてきた。
「わたしも回復師として杖を使っているので、杖について分かります」
「色と大きさか……。身長と同じくらいの大きさが良いです!」
「ロカと同じで大きめの杖だな」
エリカがそう言うと、ロカがポシェットから杖を出して緋音に見せる。
「――! 今どこから杖を出したんですか!?」
「? 魔法の鞄ですけど……?」
「凄い、やっぱりファンタジーだ……」
「そんなに珍しいか?」
あたしのはこれだ、とエリカが腰に付けたポーチを見せる。
魔法の鞄でひとしきり盛り上がった後。
「色はどうしますか?」
「杖本体と石の色な」
ロカの質問に緋音が何の色かを聞くより先にエリカが言った。
この短時間で緋音の扱い方が分かったようだ。
「石の色……。私の名前『あかね』だし火属性だから、赤色にしようかな」
「じゃ、石は赤色で決まりだな。本体はどうする?」
「杖の本体は木を使うので、茶色や黒色になります」
ロカの言う通り、壁に掛かっている杖の本体部分は茶色や黒色のものばかりだ。
「茶色か黒色……。髪色に合わせて黒色? でも茶色の方が赤色に合いそうだし……」
「アカネ、目を閉じて杖を想像してみな。どっちの色をしてる?」
エリカの言うように目を閉じて想像する。
「茶色……?」
「なら、アカネにとっての杖は茶色ってことだ」
「迷ったら自分の理想にすれば良いんです!」
「なるほど!」
緋音は2人のアドバイスを受け、本体の色を茶色にした。
「大きさも色も決まったことだし、オレットさんのとこ行くか」
緋音はエリカの後について、裏にいるオレットの所へと行く。
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次回更新は4月11日(土)です。
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