1章2節
―お知らせ―
8月5日(水)から「外伝・朱炎のアカネ 〜氷星〜」を連載開始します。
1幕登場人物(通算17ep目)にてフォティニアの情報追加しました。(2026年7月)
「コルは王立学院で何してるの?」
「ボクは魔法工学をしてるよ。例えば、これみたいに魔法具の勉強とかね」
そう言いながら、コリウスは自分の腕に着いている腕輪を掲げた。
「両親が魔法具屋をしててね、ボクもいつかそこを継ぎたいんだ。だから、成人して働けるようになってから3年間かけてお金稼いで、今年やっと入学できたんだ。今まで親に頼ってきた分、今度はボクが返さないとね」
「コルは親孝行者だね」
「そ、そうかな……アカネ、これ見て」
コリウスは緋音の言葉に少し照れながらも、魔法の鞄からいくつかの色とりどりな魔石を取り出した。
「これは学院でボクが作ってる魔道具だよ。これらの魔石にはひとつずつ属性が付与されててね、特定の道具に付けると火や水、風が出たりするんだよ」
コリウスは魔道具について、楽しそうに話す。
それにつられて緋音も笑顔になる。
「そうだ、アカネ。これ何だと思う?」
コリウスが赤色の小さな魔石を取り出して、緋音に見せる。
「魔道具……?」
「実はこれは……ただの魔石でした! 属性を付与しようにも純度が低いし、魔法陣を刻もうとも小さくてボクにはできないからね」
何の効果もないただの魔石だが、陽光を受けてキラリと輝きを放っている。
「これ、アカネにあげるよ」
「えっ、良いの!?」
「もちろんだよ。友情の証だね」
「それじゃあ、私からも……これなんてどう?」
緋音は魔法の鞄から紫色の魔石を取り出した。
これはベルキアと一緒に行ったダンジョンで、緋音が倒した魔物から出てきた魔石だ。
すでにオレットにより、丸く加工されている。
「すごく綺麗な魔石だね。どこのダンジョンのなの?」
「これはストリのダンジョンで私が倒した魔物からだよ」
「ストリか……今度ボクも行ってみようかな」
「……こんなこと聞くの変かもしれないけど、コルって戦えるの?」
「あっ、そうか。まだ言ってなかったね。ボクの職業は剣士。主に短剣を使っているよ。ボクたちが使う魔石は、ボクたちでダンジョンに取りに行ってるから、こう見えても戦えるんだよ」
それからコリウスは、緋音に1本の短剣を見せた。
「これがボクの愛剣だよ」
コリウスは短剣と魔石を魔法の鞄にしまった。
緋音もコリウスに貰った魔石をしまおうとするが途中でやめて、スカートのベルトに、ポーチの隣に着けた。
魔石に小さな穴が空いていたので、魔法の鞄の中に入っていた紐でくくりつけた。
◇◇◇◇
それからも2人は森の中をゆっくり歩く。
「アカネってもしかして、王国出身じゃなかったりする?」
「えっと、なんでそう思ったの?」
「その黒い髪とか瞳って、東の方の国に多いからさ……間違ってたらごめんね」
「あー……うん、そうだよ。東の方から来たんだ」
まさか異世界から来た、なんて言えるわけもないので、緋音はコリウスの話に合わせた。
「アカネのことも聞いて良い? ここに来るまでは何してたのかとか、どうしてここに来たのかとか」
雲が太陽を隠して、辺りは少し薄暗くなっていた。
コリウスに聞かれ、緋音はずっと昔のことのように感じられる、かつての生活を思い出す。
緋音は静かに語りだした。
「私もそこにいたときは、学校に行ってたんだ。……狭い教室に何十人も入って授業を受ける。家に帰れば宿題をしてご飯を食べて、寝て起きてまた学校に行く。ずっとそれの繰り返し」
楽しみといえば、家でラノベを読んで、アニメを見て、グッズを買いあさること。
「そんな何の変わり映えもない生活が嫌になって、家を飛び出した。それで行く当てもなく歩いていたら、この国にいた。……ごめんね、こんな話しちゃって」
緋音は努めて明るく笑った。
「ねぇ、アカネ。嫌なことは全部吐き出して良いんだよ」
「ありがとう、コル。でも大丈夫だよ。あの頃のことはもう割り切ってるし、今が楽しいから!」
「それなら良いけど……」
「あっちに大きな木があるよ。行ってみよう、コル!」
雲の陰から出てきた太陽が、2人を優しく照らしていた。
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次回更新は8月8日(土)です。
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